ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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「みんな、どうしてるんだ?」
横井は投げやりに言う。
「どうしようもないでしょう。サイトのプラットフォームを握っているのは、向こうなんだから。出入り禁止にされたら、明日から生きていけないんです。回数を稼ぐために、みんな過激なことをするようになったりしてますよ。」
「戸田橋デストロイヤーZもそんな感じなのか。」
今度はゴング斎藤がいった。
「あいつら有名ユーチューバーたたきは最低ですよ。どの世界にも売れてるものへのアンチが居るんで、結構再生回数も稼いでいるし。まあ過激派ユーチューバーって感じかな」
そのとき半透明のガラス戸を開けて、流星が戻ってきた。腹を押さえていう。
「さっきのベンチで冷えたかな。あるいは玉ねぎが効いたのかもしれない。腹壊しちゃった。」
ゴング斎藤がいった。
「流星さん、玉ねぎタイムの後は結構な確率で腹にきますよね。」
「しょうがねぇよ。それで百万回再生が稼げるなら、毎日下痢でもいいわ。」
豪快に笑った。ユーチューバーの事務所というより、男子専用の学生寮みたいだ。再びおれのスマホが軍パンのポケットで振動を始めた。バルコニーに出る。
『やられた』
崇の声は別に残念そうでもない。いつもの通り凍った水たまりみたい。
「なにを?」
『こちらが到着する直前に尾行に逃げられた。ぎりぎりだったんだがな。二名しかいなかった。メトロの有楽町線でまかれた。』
最悪のタイミングだった。バルコニーでバズーカ砲のような望遠レンズを振る流星に気付かれたのだろうか。
「そうか明日から仕切り直しだな。」
『ああ、お前もそこを離れていいぞ。一応、車とウルフは残しておくが、もうひもはついてない。多分安全だろう。』
何か引っかかる。崇はいつも確信のあることしか口にしない。水たまりの氷を誰かが割ってしまったのだろうか。声の温度感もおかしかった。
「なにかあった?」
『メトロの乗り換え通路だ。追いすがったS・ウルフがやつらにやられた。硬質ゴム製のハンマーで頭を殴られたそうだ。救急に連れていっている。』
おれ達が二十二階のスタジオでネットの最前線についておしゃべりしているあいだに、地下でそんな事件が起きていたのだ。
「意識は有るのか?」
『ああ、大丈夫。血は出ていない。高さ三センチのコブができただけだそうだ。一応頭部だから、CTを撮るらしい。』
とりあえずよかった。おれは安堵して単語をひとつ漏らした。
「……ハンマーか」
崇の声が液体窒素のように冷え込んだ。王は激怒している。
『ああ、ハンマーだ。つい最近、俺はハンマーを持ったゴリラを見た気がする。ユーチューブでな。やつらにはジャングルの本当のルールってやつを叩きこまなければいけない。』
戸田橋デストロイヤーZ。あの四人組はどんな獣に手を出しているのかわかっているのだろうか。ゴリラの腕力がいかに強くとも、頭の切れるキングに統率されたアフリカゾウの集団に勝てるはずもない。おれはそのとき確かに過激派ユーチューバーを気の毒に思った。だが、奴らだってそう易々と捕獲されるはずがなかったのだ。
野生のゴリラはヒョウの顎を引き裂く腕力をもっているが、ひどく賢く慎重。
横井は投げやりに言う。
「どうしようもないでしょう。サイトのプラットフォームを握っているのは、向こうなんだから。出入り禁止にされたら、明日から生きていけないんです。回数を稼ぐために、みんな過激なことをするようになったりしてますよ。」
「戸田橋デストロイヤーZもそんな感じなのか。」
今度はゴング斎藤がいった。
「あいつら有名ユーチューバーたたきは最低ですよ。どの世界にも売れてるものへのアンチが居るんで、結構再生回数も稼いでいるし。まあ過激派ユーチューバーって感じかな」
そのとき半透明のガラス戸を開けて、流星が戻ってきた。腹を押さえていう。
「さっきのベンチで冷えたかな。あるいは玉ねぎが効いたのかもしれない。腹壊しちゃった。」
ゴング斎藤がいった。
「流星さん、玉ねぎタイムの後は結構な確率で腹にきますよね。」
「しょうがねぇよ。それで百万回再生が稼げるなら、毎日下痢でもいいわ。」
豪快に笑った。ユーチューバーの事務所というより、男子専用の学生寮みたいだ。再びおれのスマホが軍パンのポケットで振動を始めた。バルコニーに出る。
『やられた』
崇の声は別に残念そうでもない。いつもの通り凍った水たまりみたい。
「なにを?」
『こちらが到着する直前に尾行に逃げられた。ぎりぎりだったんだがな。二名しかいなかった。メトロの有楽町線でまかれた。』
最悪のタイミングだった。バルコニーでバズーカ砲のような望遠レンズを振る流星に気付かれたのだろうか。
「そうか明日から仕切り直しだな。」
『ああ、お前もそこを離れていいぞ。一応、車とウルフは残しておくが、もうひもはついてない。多分安全だろう。』
何か引っかかる。崇はいつも確信のあることしか口にしない。水たまりの氷を誰かが割ってしまったのだろうか。声の温度感もおかしかった。
「なにかあった?」
『メトロの乗り換え通路だ。追いすがったS・ウルフがやつらにやられた。硬質ゴム製のハンマーで頭を殴られたそうだ。救急に連れていっている。』
おれ達が二十二階のスタジオでネットの最前線についておしゃべりしているあいだに、地下でそんな事件が起きていたのだ。
「意識は有るのか?」
『ああ、大丈夫。血は出ていない。高さ三センチのコブができただけだそうだ。一応頭部だから、CTを撮るらしい。』
とりあえずよかった。おれは安堵して単語をひとつ漏らした。
「……ハンマーか」
崇の声が液体窒素のように冷え込んだ。王は激怒している。
『ああ、ハンマーだ。つい最近、俺はハンマーを持ったゴリラを見た気がする。ユーチューブでな。やつらにはジャングルの本当のルールってやつを叩きこまなければいけない。』
戸田橋デストロイヤーZ。あの四人組はどんな獣に手を出しているのかわかっているのだろうか。ゴリラの腕力がいかに強くとも、頭の切れるキングに統率されたアフリカゾウの集団に勝てるはずもない。おれはそのとき確かに過激派ユーチューバーを気の毒に思った。だが、奴らだってそう易々と捕獲されるはずがなかったのだ。
野生のゴリラはヒョウの顎を引き裂く腕力をもっているが、ひどく賢く慎重。