ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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アドレスを交換すると、流星がベンチを立ちあがった。
「さて、どうする。悠は今日は忙しいのか」
「夕方までなら、大丈夫だ。」
それとなく円形広場を見渡す。見覚えのあるS・ウルフの顔が青空将棋の観客の中に見えた。崇は今もおれと流星に張り番をつけているのだ。
「ちょっと待ってくれ」
おれは流星から少し離れたベンチに向かった。スマホで池袋のキングを選択する。
『どうだった?』
耳にクールミントでも詰めたみたい。夏にコイツの声を聞きながら寝れたらと、女たちが言うのもよく分かる。
「仕事を請けた。金の話はそっちでするように言った。あと三日が山だ。崇の方は戸田橋デストロイヤーZというグループを調べておいてくれ。戸田橋あたりの廃品処分場をしらみつぶしにしてほしい。ガキは四人組で……」
おれはさっき見たばかりの映像を思い出す。
『四人組で?』
「そうだ。ひとりやけにちいさいやつがいた。身長が百六十もないくらい。映像はユーチューブにたくさん残ってる。ゴリラのマスクをかぶった集団だ。」
崇は無関心に言う。
『140☆のつぎは、ゴリラのマスクか。ネットというのは上品なもんだな』
その点についてはおれも完全に同意する。だが、本の世界だって同じだった。ひとの最低と最高が同時に存在する。だから広大で無限で可能性に満ちたメディアなのだ。
「今のまま流星に張り込みをつけておいてくれ。やつの部屋の住所、いくぞ」
おれは名刺の住所を読み上げた。いったいS・ウルフは三日間のボディガード料金をいくらに設定しているのだろうか。街の興信所よりも安いとは思えなかった。
『ユーチューバーって、実際のところ何をしているんだ?』
街の王でも新しいネットビジネスには興味津々のようだった。おれは目の前で見せられた玉ねぎ芸を思い出した。ハンマーで自動車を破壊するとかな。悪趣味な悪ふざけネタで稼ぐ百万回再生。
「お前はあまり下々の下世話な動向に気を回さない方がいいと思う。今度話してやるけど、聞くだけ無駄だったというんじゃないかな、きっと。」
『そうか、お前がそういうなら、実際そうなんだろう。なら別にいい。仕事を続けてくれ。』
声の響きが消えないうちに通話が切れた。おれは池袋西口公園の空を見上げた。さっきまで東武デパートの上にあった雲は、形を崩しながら東の方に流れていった。ネットにため込まれ、日々増殖していく何億時間分もの映像について想像してみる。おれたちは最先端のメディアの中で、首まで泥につかって生きている。
「さて、どうする。悠は今日は忙しいのか」
「夕方までなら、大丈夫だ。」
それとなく円形広場を見渡す。見覚えのあるS・ウルフの顔が青空将棋の観客の中に見えた。崇は今もおれと流星に張り番をつけているのだ。
「ちょっと待ってくれ」
おれは流星から少し離れたベンチに向かった。スマホで池袋のキングを選択する。
『どうだった?』
耳にクールミントでも詰めたみたい。夏にコイツの声を聞きながら寝れたらと、女たちが言うのもよく分かる。
「仕事を請けた。金の話はそっちでするように言った。あと三日が山だ。崇の方は戸田橋デストロイヤーZというグループを調べておいてくれ。戸田橋あたりの廃品処分場をしらみつぶしにしてほしい。ガキは四人組で……」
おれはさっき見たばかりの映像を思い出す。
『四人組で?』
「そうだ。ひとりやけにちいさいやつがいた。身長が百六十もないくらい。映像はユーチューブにたくさん残ってる。ゴリラのマスクをかぶった集団だ。」
崇は無関心に言う。
『140☆のつぎは、ゴリラのマスクか。ネットというのは上品なもんだな』
その点についてはおれも完全に同意する。だが、本の世界だって同じだった。ひとの最低と最高が同時に存在する。だから広大で無限で可能性に満ちたメディアなのだ。
「今のまま流星に張り込みをつけておいてくれ。やつの部屋の住所、いくぞ」
おれは名刺の住所を読み上げた。いったいS・ウルフは三日間のボディガード料金をいくらに設定しているのだろうか。街の興信所よりも安いとは思えなかった。
『ユーチューバーって、実際のところ何をしているんだ?』
街の王でも新しいネットビジネスには興味津々のようだった。おれは目の前で見せられた玉ねぎ芸を思い出した。ハンマーで自動車を破壊するとかな。悪趣味な悪ふざけネタで稼ぐ百万回再生。
「お前はあまり下々の下世話な動向に気を回さない方がいいと思う。今度話してやるけど、聞くだけ無駄だったというんじゃないかな、きっと。」
『そうか、お前がそういうなら、実際そうなんだろう。なら別にいい。仕事を続けてくれ。』
声の響きが消えないうちに通話が切れた。おれは池袋西口公園の空を見上げた。さっきまで東武デパートの上にあった雲は、形を崩しながら東の方に流れていった。ネットにため込まれ、日々増殖していく何億時間分もの映像について想像してみる。おれたちは最先端のメディアの中で、首まで泥につかって生きている。