ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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歩道橋の踊り場に流星が立っている。遠くにビックカメラが見えるから、撮影場所は東口の明治通りの先の方か。頭にはヘルメット。田舎の中学生のジャージみたいなダサい格好。身体のあちこちには数字がでかでかと書かれた布がガムテープで張ってある。流星は右腕を突きあげて叫んだ。
『なにがでるかな、なにがでるかな。人間サイコロ投げちゃうぞー』
やつはいきなり頭からダイブした。階段を転げ落ちていく。ぼこぼこと身体のあちこちをぶつけながら、道路まで落ちると右肩から歩道にクラッシュ。そのままの格好で静止する。カメラが寄っていく。アップになった左側の腰には4の数字。
『4を選んだ君は、今日はラッキーデイだ!あー痛くて、気持ちいい。サンキュー!』
おれはあきれていった。
「この階段落ちは何か意味があるのか。二十一世紀のアクションアートとかさ」
流星は自信満々に言う。
「いや、ぜんぜんない。意味はないけど面白いってのが、ガキの好みなんだ。階段落ちは玉ねぎとならんで、俺の人気シリーズだ。三周年にはあそこでやるつもりだ。」
蛍光イエローの腕が伸びて、背後にある芸術劇場を示した。恐るおそるおれは質問する。
「あのエスカレーターか?」
「ああ、もちろん。それも一番長い奴な」
西口公園に隣接する東京芸術劇場は定員二千人の大ホールを始め、大中小四つのホールがある複合施設だ。ガラスの大屋根の下には一気に普通のビルなら三階分の高さまで登れるくらいの長さ三十メートルを超えるエスカレーターがある。
「あのエスカレーターで階段落ちか。あんたって本気で身体を張ってるんだな。」
「当たり前だろ。その辺りの大企業の社長二人分くらいは、ユーチューブで稼いでるんだからな。骨の一本や二本安いもんだ。」
ため息が出る。仕事の種類は全く異なるが、おれがそのくらいの覚悟でコラムを書いてたら、もっと読者を掴めたかもしれない。にやりと笑って流星がいった。
「怪我したら逆にラッキーだろ。骨がつながるところやリハビリをアップロードできるんだぞ。おいしいに決まってる。まあ、右手だけは守るようにするよ。スマホをいじれなくなるからな。」
今回はあと三日と期間も短い。流星は金なら十分持っていそうだ。しかも、おれが知らない世界で身体を張って生き抜いている。
「分かった。三周年記念のエスカレーター落ちまで、おれとS・ウルフがアンタを守るよ。金の話は向こうとしてくれ。おれはいつも基本無料のボランティアだからな。」
「あんたって今時珍しいタイプだな。」
頭のいかれたユーチューバーはコラムのネタなら二回分にはなるだろう。二カ月は締め切りの心配をしなくて済む。おれにとってもメリットがないわけじゃない。
『なにがでるかな、なにがでるかな。人間サイコロ投げちゃうぞー』
やつはいきなり頭からダイブした。階段を転げ落ちていく。ぼこぼこと身体のあちこちをぶつけながら、道路まで落ちると右肩から歩道にクラッシュ。そのままの格好で静止する。カメラが寄っていく。アップになった左側の腰には4の数字。
『4を選んだ君は、今日はラッキーデイだ!あー痛くて、気持ちいい。サンキュー!』
おれはあきれていった。
「この階段落ちは何か意味があるのか。二十一世紀のアクションアートとかさ」
流星は自信満々に言う。
「いや、ぜんぜんない。意味はないけど面白いってのが、ガキの好みなんだ。階段落ちは玉ねぎとならんで、俺の人気シリーズだ。三周年にはあそこでやるつもりだ。」
蛍光イエローの腕が伸びて、背後にある芸術劇場を示した。恐るおそるおれは質問する。
「あのエスカレーターか?」
「ああ、もちろん。それも一番長い奴な」
西口公園に隣接する東京芸術劇場は定員二千人の大ホールを始め、大中小四つのホールがある複合施設だ。ガラスの大屋根の下には一気に普通のビルなら三階分の高さまで登れるくらいの長さ三十メートルを超えるエスカレーターがある。
「あのエスカレーターで階段落ちか。あんたって本気で身体を張ってるんだな。」
「当たり前だろ。その辺りの大企業の社長二人分くらいは、ユーチューブで稼いでるんだからな。骨の一本や二本安いもんだ。」
ため息が出る。仕事の種類は全く異なるが、おれがそのくらいの覚悟でコラムを書いてたら、もっと読者を掴めたかもしれない。にやりと笑って流星がいった。
「怪我したら逆にラッキーだろ。骨がつながるところやリハビリをアップロードできるんだぞ。おいしいに決まってる。まあ、右手だけは守るようにするよ。スマホをいじれなくなるからな。」
今回はあと三日と期間も短い。流星は金なら十分持っていそうだ。しかも、おれが知らない世界で身体を張って生き抜いている。
「分かった。三周年記念のエスカレーター落ちまで、おれとS・ウルフがアンタを守るよ。金の話は向こうとしてくれ。おれはいつも基本無料のボランティアだからな。」
「あんたって今時珍しいタイプだな。」
頭のいかれたユーチューバーはコラムのネタなら二回分にはなるだろう。二カ月は締め切りの心配をしなくて済む。おれにとってもメリットがないわけじゃない。