ー特別編ー西池袋ノマドトラップ
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「こちらです。どうぞ」
黒いカーテンを開いて、横にあるサブの搬入口に案内した。こちらには中型のパネルトラックがつけられていた。冷気が足元に流れてくる。冷蔵トラックだ。そのとき、おれは背中に熱を感じた。裕康が叫んだ。
「トモヤス、やばいぞ!」
もう手遅れだった。なにかがわっと背中を押して、流れるようにおれたち四人をトラックの荷台に押し込んでいく。S・ウルフの突撃隊、紅含む精鋭の八人だ。そのままの勢いで高梨兄弟を押さえこんだ。ひとりにつき三人がかり。うしろで扉が閉まった。悪魔が暴れたのは数十秒だ。結束バンドで足首と手首を締められ、ツインデビルは金属の床に転がった。
まあ、そのときはレオンとおれも床に倒れていた。結束バンドはゆるく締めてあっただけだけどな。トラックはゆっくり走りだす。黒い目だし帽をかぶった男たちは八人。崇ひとり堂々と顔を晒している。
「虎狗琥っ!」
高梨弟が叫んでいた。
「俺達に手を出して無事で済むと思うなよ。お前らの家族、ダチ、連れ、誰もかもただじゃ済まさん」
崇は高梨兄弟の顔の近くにしゃがみ込んだ。真っ白なスニーカーをはいている。ちらりと見えた靴底で新品だと分かった。汚れひとつない。王の表情は長いつきあいのおれでさえ震えるほどの絶対零度。迷いも感情もかけらもない。
「いいか、高梨、一度だけ言う。よくきけ」
「うるせえ」
粗暴な弟が暴れた。S・ウルフのひとりが友康のふくらはぎを体重をかけて踏んだ。
「静かにしろ。いいか、よくきけ」
悪魔がそろってうなずいた。崇の声は凍えそうな冷凍トラックの床よりも冷たい。
「お前ら兄弟は、俺たちの縄張りで調子に乗りすぎた。だから、S・ウルフのルールに従い罰を与える。二度と俺たちの縄張りに戻るな。抱腹をしようとも考えるな。もし、お前らのどちらかがうちのメンバーに手を出したら、どこに逃げようと探しだす。」
崇がポケットから抜いたのは、瞬間接着剤の黄色いチューブだった。その先で高梨兄弟の額を軽くつついた。
「報復を一度するたびに、お前たち兄弟の手首か足首の先をもらう。どこにするかは、選ばせてやる。」
冷凍地獄の底から響く王の容赦ない声だった。じっと悪魔の兄弟をみおろしている。おれに見せたことのない崇の目だ。
「俺は一度口にしたことは必ず守る。ここにいるうちのメンバー八人に約束する。一度でもメンバーに報復するなら、手か足の先をもらう。二度目もまたもらう。」
圧倒的な冷たさだった。レオンはツインデビルのときよりひどく震えている。
「お前たちは自分が誰より悪賢く、凶暴だとうぬぼれていたな。だが、ふたりだけだ。S・ウルフは数百人のメンバーがいる組織だ。ぼろ雑巾のようになりたければ、かかってこい。その時はすりつぶしてやる。」
崇は瞬間接着剤のふたをとった。高梨兄弟が震えあがった。
「手をはずせ」
知能犯の兄が叫んだ。
「やめてくれ。お前らには絶対手を出さない!」
「三軒の襲撃でお前らは有罪だ。手を出せ。」
目だし帽をしたS・ウルフが左右の手にひとりずつつき、高梨兄弟の手のひらを床に開かせた。崇はたっぷりと瞬間接着剤を垂らしていく。大嫌いな夏休みの工作でも作るように淡々と。
「どこがいい?」
微笑みながら質問した。高梨弟が懇願する。
「したはやめてくれ」
「いいだろう。その手で耳を押さえ、目を閉じろ。」
おれは床に倒れたまま、その光景を見ていた。悪魔の兄弟は両耳を押さえた。手は二度と離れない。崇は閉じられた目の上から、残りの接着剤を垂らした。王の声が少しだけ大きくなった。
「このままお前たちを山に捨てる。別々にだ。勝手に帰ってこい。ただ二度とS・ウルフの縄張りには近づくな。わかったか。」
接着剤で固まった目から、高梨兄弟が涙を流していた。弟のほうがあばれると、誰かがわき腹をブーツで蹴った。悪魔が静かになる。
おれの手首の結束バンドは王みずから外してくれた。
黒いカーテンを開いて、横にあるサブの搬入口に案内した。こちらには中型のパネルトラックがつけられていた。冷気が足元に流れてくる。冷蔵トラックだ。そのとき、おれは背中に熱を感じた。裕康が叫んだ。
「トモヤス、やばいぞ!」
もう手遅れだった。なにかがわっと背中を押して、流れるようにおれたち四人をトラックの荷台に押し込んでいく。S・ウルフの突撃隊、紅含む精鋭の八人だ。そのままの勢いで高梨兄弟を押さえこんだ。ひとりにつき三人がかり。うしろで扉が閉まった。悪魔が暴れたのは数十秒だ。結束バンドで足首と手首を締められ、ツインデビルは金属の床に転がった。
まあ、そのときはレオンとおれも床に倒れていた。結束バンドはゆるく締めてあっただけだけどな。トラックはゆっくり走りだす。黒い目だし帽をかぶった男たちは八人。崇ひとり堂々と顔を晒している。
「虎狗琥っ!」
高梨弟が叫んでいた。
「俺達に手を出して無事で済むと思うなよ。お前らの家族、ダチ、連れ、誰もかもただじゃ済まさん」
崇は高梨兄弟の顔の近くにしゃがみ込んだ。真っ白なスニーカーをはいている。ちらりと見えた靴底で新品だと分かった。汚れひとつない。王の表情は長いつきあいのおれでさえ震えるほどの絶対零度。迷いも感情もかけらもない。
「いいか、高梨、一度だけ言う。よくきけ」
「うるせえ」
粗暴な弟が暴れた。S・ウルフのひとりが友康のふくらはぎを体重をかけて踏んだ。
「静かにしろ。いいか、よくきけ」
悪魔がそろってうなずいた。崇の声は凍えそうな冷凍トラックの床よりも冷たい。
「お前ら兄弟は、俺たちの縄張りで調子に乗りすぎた。だから、S・ウルフのルールに従い罰を与える。二度と俺たちの縄張りに戻るな。抱腹をしようとも考えるな。もし、お前らのどちらかがうちのメンバーに手を出したら、どこに逃げようと探しだす。」
崇がポケットから抜いたのは、瞬間接着剤の黄色いチューブだった。その先で高梨兄弟の額を軽くつついた。
「報復を一度するたびに、お前たち兄弟の手首か足首の先をもらう。どこにするかは、選ばせてやる。」
冷凍地獄の底から響く王の容赦ない声だった。じっと悪魔の兄弟をみおろしている。おれに見せたことのない崇の目だ。
「俺は一度口にしたことは必ず守る。ここにいるうちのメンバー八人に約束する。一度でもメンバーに報復するなら、手か足の先をもらう。二度目もまたもらう。」
圧倒的な冷たさだった。レオンはツインデビルのときよりひどく震えている。
「お前たちは自分が誰より悪賢く、凶暴だとうぬぼれていたな。だが、ふたりだけだ。S・ウルフは数百人のメンバーがいる組織だ。ぼろ雑巾のようになりたければ、かかってこい。その時はすりつぶしてやる。」
崇は瞬間接着剤のふたをとった。高梨兄弟が震えあがった。
「手をはずせ」
知能犯の兄が叫んだ。
「やめてくれ。お前らには絶対手を出さない!」
「三軒の襲撃でお前らは有罪だ。手を出せ。」
目だし帽をしたS・ウルフが左右の手にひとりずつつき、高梨兄弟の手のひらを床に開かせた。崇はたっぷりと瞬間接着剤を垂らしていく。大嫌いな夏休みの工作でも作るように淡々と。
「どこがいい?」
微笑みながら質問した。高梨弟が懇願する。
「したはやめてくれ」
「いいだろう。その手で耳を押さえ、目を閉じろ。」
おれは床に倒れたまま、その光景を見ていた。悪魔の兄弟は両耳を押さえた。手は二度と離れない。崇は閉じられた目の上から、残りの接着剤を垂らした。王の声が少しだけ大きくなった。
「このままお前たちを山に捨てる。別々にだ。勝手に帰ってこい。ただ二度とS・ウルフの縄張りには近づくな。わかったか。」
接着剤で固まった目から、高梨兄弟が涙を流していた。弟のほうがあばれると、誰かがわき腹をブーツで蹴った。悪魔が静かになる。
おれの手首の結束バンドは王みずから外してくれた。