ー特別編ー西池袋ノマドトラップ
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中ホールにあがるエスカレーターのうえで、おれとレオンは待っていた。やつは堂上常樹と同じ半ズボンのスーツ。おれは軍パンと和柄のシャツ。ビットゴールド主催のイベントは一時間後に入場開始だ。
レオンのコネでおれたちはスタッフパスを四枚入手していた。といっても警備体制も、アルバイトスタッフもいい加減なもの。まあ、ネズミ講の集会なんて、その程度。おれは例のファッション誌の取材記者という口実だ。
この真夏のクソ熱いさなか、高梨兄弟が無音でエスカレーターを登ってきた。兄の裕康はブラックスーツにブラックシャツ。弟の友康は袖なしの黒い革シャツとブラックジーンズ。右腕は濃紺のチェーンと稲妻タトゥーでおおわれているので、片方の腕だけ黒シャツを千切ったように見える。アシンメトリーが好きなのかもしれない。前髪までアンバランスだった。ジーンズのポケットには大型のカッターが入っているのだろうか。
レオンに気づくと、裕康がいった。
「やっと俺達のメッセージを受け取ってくれたか。そっちは誰だ?」
怖くてたまらないのだろうが、レオンの声は震えていなかった。
「ぼくのアシスタントでゴールドメンバーの悠だ。」
次は弟のほうだった。知性のかけらも感じさせない声ってあるよな。
「そんな下っ端、誰でもいいんだよ。早く堂上に会わせろ。もうけ話を聞かせてくれるんだろ。」
はあはあと涎を垂らす病気の大型犬のような男。おれは悪魔の兄弟に二枚のパスを渡した。
「こちらにどうぞ」
ホール入り口のセキュリティはおれ達の方にちらりと目をやっただけで、黙って通してくれた。パスは四枚。問題はない。ホールわきの通路を抜けて、楽屋の方に回る。おれは貨物用のエレベーターのボタンを押していった。
「堂上さんはしたのVIP用の楽屋におりますので、どうぞ」
傷だらけの扉が閉まると、大型エレベーターはゆっくりと沈み始めた。
「いいか、樋口、堂上の紹介とお前に任せた金は別だからな。お前は俺たち兄弟に六百万ずつ借りがある。そいつは忘れるなよ。」
悪魔の兄がそういった。むちゃくちゃだが、こいつの頭のなかでは正論なんだろう。こんな奴の考えることなど誰に理解できる?悪魔の弟も言う。
「ああ、いろいろとお前を探しまわって、いらないちょっかいを三回もだしたからな。精神的な慰謝料と仕事賃だ。」
コワーキングスペース三軒襲撃の労働の対価か。いい気なものだ。いくらでも調子に乗るといい。いかれた兄弟をハメる罠は間もなく閉じようとしている。エレベーターが開くと、劇場裏の搬入口だった。大劇場の方で芝居の公演でもあるのだろう。十トン積みのトラックが何台か尻をつけていた。友康は劇場の裏側が目新しいようだ。きょろきょろと周囲を見まわしている。
レオンのコネでおれたちはスタッフパスを四枚入手していた。といっても警備体制も、アルバイトスタッフもいい加減なもの。まあ、ネズミ講の集会なんて、その程度。おれは例のファッション誌の取材記者という口実だ。
この真夏のクソ熱いさなか、高梨兄弟が無音でエスカレーターを登ってきた。兄の裕康はブラックスーツにブラックシャツ。弟の友康は袖なしの黒い革シャツとブラックジーンズ。右腕は濃紺のチェーンと稲妻タトゥーでおおわれているので、片方の腕だけ黒シャツを千切ったように見える。アシンメトリーが好きなのかもしれない。前髪までアンバランスだった。ジーンズのポケットには大型のカッターが入っているのだろうか。
レオンに気づくと、裕康がいった。
「やっと俺達のメッセージを受け取ってくれたか。そっちは誰だ?」
怖くてたまらないのだろうが、レオンの声は震えていなかった。
「ぼくのアシスタントでゴールドメンバーの悠だ。」
次は弟のほうだった。知性のかけらも感じさせない声ってあるよな。
「そんな下っ端、誰でもいいんだよ。早く堂上に会わせろ。もうけ話を聞かせてくれるんだろ。」
はあはあと涎を垂らす病気の大型犬のような男。おれは悪魔の兄弟に二枚のパスを渡した。
「こちらにどうぞ」
ホール入り口のセキュリティはおれ達の方にちらりと目をやっただけで、黙って通してくれた。パスは四枚。問題はない。ホールわきの通路を抜けて、楽屋の方に回る。おれは貨物用のエレベーターのボタンを押していった。
「堂上さんはしたのVIP用の楽屋におりますので、どうぞ」
傷だらけの扉が閉まると、大型エレベーターはゆっくりと沈み始めた。
「いいか、樋口、堂上の紹介とお前に任せた金は別だからな。お前は俺たち兄弟に六百万ずつ借りがある。そいつは忘れるなよ。」
悪魔の兄がそういった。むちゃくちゃだが、こいつの頭のなかでは正論なんだろう。こんな奴の考えることなど誰に理解できる?悪魔の弟も言う。
「ああ、いろいろとお前を探しまわって、いらないちょっかいを三回もだしたからな。精神的な慰謝料と仕事賃だ。」
コワーキングスペース三軒襲撃の労働の対価か。いい気なものだ。いくらでも調子に乗るといい。いかれた兄弟をハメる罠は間もなく閉じようとしている。エレベーターが開くと、劇場裏の搬入口だった。大劇場の方で芝居の公演でもあるのだろう。十トン積みのトラックが何台か尻をつけていた。友康は劇場の裏側が目新しいようだ。きょろきょろと周囲を見まわしている。