ー特別編ー西池袋ノマドトラップ
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適当なところでメルセデスを降ろしてもらった。うちの店に戻ったとたんにどやされる。
「朝からなに油売ってるのかしら」
おれにとっては悪魔より恐ろしい久秀だ。頭をかきながらいった。
「いや、コワーキング・スペースが連続で襲撃されて……」
久秀は一瞬の迷いもなく返してくる。
「そんなところは襲われて当然よ。日本人なら日本語で店を出しなさい」
まあ、確かにそうだよな。おれとしてもコワーキング・スペースというたびに、すこし恥ずかしい気分になる。だってそうだろ、コワーキングスペースそのままなんて、まともじゃない。共同オフィスとかじゃダメなのか。
「まあ、いいから店番代わりなさい。久秀だってここばかりに構っていられないんだから」
久秀が奥へ引っ込んでしまうと、ノートパソコンで少しだけ検索した。レオンに会うまえに堂上常樹について調べておきたかったのだ。客のいない茶屋の広いテーブルは、図書館よりずっと集中して勉強できる。受験生にはおすすめだ。
最初のページで、やつは分厚いセルロイドの黒縁メガネをかけて、ハンバーガーにかじりついていた。チェックの半ズボンのスーツに、蝶ネクタイ。グルメレポートが得意な太めのコメディアンみたい。場所は海辺のウッドデッキだ。
ブログにはなにを食べたか、写真がアップされている。あとはやつの活動報告。といっても、やつが年に七冊から八冊はだしている例の薄っぺらなビジネス書の広告が中心だ。さらにしたにおりていくと、黄金に輝くテンプレートが見つかった。
【ビットゴールド】
すべての人に富と成功を約束するデジタル紙幣だという。契約した飲食店や映画館、人気のアミューズメント施設何かで使えるある種の商品券のようなものらしい。数日後にはそのビットゴールドのサクセスミーティングというのが、東京芸術劇場の中のホールで開催されるという。商品券でどうやってすべての人を豊かにするのか、おれにはぜんぜん意味不明だった。
おれたちの世界には意味不明のもうけ話が多いよな。
とくに情報とその影しかないネットの世界には。おれは内容も分からないまま、ビットゴールドという言葉だけ頭に刻んだ。
「朝からなに油売ってるのかしら」
おれにとっては悪魔より恐ろしい久秀だ。頭をかきながらいった。
「いや、コワーキング・スペースが連続で襲撃されて……」
久秀は一瞬の迷いもなく返してくる。
「そんなところは襲われて当然よ。日本人なら日本語で店を出しなさい」
まあ、確かにそうだよな。おれとしてもコワーキング・スペースというたびに、すこし恥ずかしい気分になる。だってそうだろ、コワーキングスペースそのままなんて、まともじゃない。共同オフィスとかじゃダメなのか。
「まあ、いいから店番代わりなさい。久秀だってここばかりに構っていられないんだから」
久秀が奥へ引っ込んでしまうと、ノートパソコンで少しだけ検索した。レオンに会うまえに堂上常樹について調べておきたかったのだ。客のいない茶屋の広いテーブルは、図書館よりずっと集中して勉強できる。受験生にはおすすめだ。
最初のページで、やつは分厚いセルロイドの黒縁メガネをかけて、ハンバーガーにかじりついていた。チェックの半ズボンのスーツに、蝶ネクタイ。グルメレポートが得意な太めのコメディアンみたい。場所は海辺のウッドデッキだ。
ブログにはなにを食べたか、写真がアップされている。あとはやつの活動報告。といっても、やつが年に七冊から八冊はだしている例の薄っぺらなビジネス書の広告が中心だ。さらにしたにおりていくと、黄金に輝くテンプレートが見つかった。
【ビットゴールド】
すべての人に富と成功を約束するデジタル紙幣だという。契約した飲食店や映画館、人気のアミューズメント施設何かで使えるある種の商品券のようなものらしい。数日後にはそのビットゴールドのサクセスミーティングというのが、東京芸術劇場の中のホールで開催されるという。商品券でどうやってすべての人を豊かにするのか、おれにはぜんぜん意味不明だった。
おれたちの世界には意味不明のもうけ話が多いよな。
とくに情報とその影しかないネットの世界には。おれは内容も分からないまま、ビットゴールドという言葉だけ頭に刻んだ。