ー特別編ー西池袋ノマドトラップ
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『警察に被害届も出しているが、店のオーナーはS・ウルフに相談に来た。その場にいたガキが犯人を目撃している。』
「おかしな話だ。」
それなら素直に警察に証言しに行けばいい。おれがそういうと、崇は低く笑った。
『目撃者は絶対に警察にはいかない。やつが見たのは、黒いタンクトップで、右腕だけにびっしりと鋼鉄のチェーンを刺青した男。』
おれはため息をついた。それでは絶対に警察にはいけないだろう。奴のやることはめちゃくちゃだ。目撃者の口を封じるくらいなんでもない。
「高梨(たかなし)の弟の方か」
『そうだ、ツインデビルだ』
高梨兄弟の悪名は小学校のころから始まっている。子供同士の喧嘩で、相手を何か所も骨折させたのだ。練馬の中学時代には、昔ながらの「男一匹ガキ大将」スタイルで、近くの中学校をつぎつぎと制覇していった。ただ喧嘩が強いやつなら、他にも居た。だが、高梨兄弟は負けると相手の家に夜でも乗りこんでいく。時間も場所も獲物も選ばずに、勝つまであきらめない。心を折るまで、徹底的に戦うのだ。
兄の裕康(ひろやす)が頭脳と作戦担当で、弟の友康が強襲と暴力担当。友康は一時暴力団にスカウトされたが、危険すぎて放りだされた。十代の半分を少年院ですごしたのだから、無理もない。規格外の悪魔では組織暴力団でさえ飼いならせない。
「あんな危ないやつ、どうするつもりだ。」
ツインデビルに手を出すなら、いつも背後を気にして、夜も安心して眠れないだろう。崇は高原を吹く風のような冷たい声でいう。
『そろそろ俺たちの庭を掃除しなけりゃいけないと思っていた。』
「高梨兄弟と戦争するのか。崇、正気か?」
王さまはまたも余裕だった。
『被害を最小に抑える方法を、お前が考えろ、悠。お前のことをコワーキング・スペースのオーナーも話していた。腕の立つ優秀なコラムニストなんだろ。悪魔を仕留める罠を作りだせ。奴らがこの街に帰ってこれないようにな。』
おれは暴力が大の苦手。だが、ツインデビルをハメる罠なら、仕掛けがいがある。やつの真っ黒な右手に食いこんで離れない鋭い鉄の罠。
「わかった、やつを骨まで食ってやるよ。」
通話を切った。おれはボロディンの交響詩のテーマをハミングしながら、店番に戻った。ツインデビルをハメる罠。そいつを考えだすには、もう少しコワーキング・スペースを探らねばならないだろう。そのとき、なぜか、おれのあたまのなかににやにやとネットの間抜けたちを笑うレオンの顔が浮かんだ。
あの男は「ザ・ストリーム」でいったいなにを恐れていたのだろう。
「おかしな話だ。」
それなら素直に警察に証言しに行けばいい。おれがそういうと、崇は低く笑った。
『目撃者は絶対に警察にはいかない。やつが見たのは、黒いタンクトップで、右腕だけにびっしりと鋼鉄のチェーンを刺青した男。』
おれはため息をついた。それでは絶対に警察にはいけないだろう。奴のやることはめちゃくちゃだ。目撃者の口を封じるくらいなんでもない。
「高梨(たかなし)の弟の方か」
『そうだ、ツインデビルだ』
高梨兄弟の悪名は小学校のころから始まっている。子供同士の喧嘩で、相手を何か所も骨折させたのだ。練馬の中学時代には、昔ながらの「男一匹ガキ大将」スタイルで、近くの中学校をつぎつぎと制覇していった。ただ喧嘩が強いやつなら、他にも居た。だが、高梨兄弟は負けると相手の家に夜でも乗りこんでいく。時間も場所も獲物も選ばずに、勝つまであきらめない。心を折るまで、徹底的に戦うのだ。
兄の裕康(ひろやす)が頭脳と作戦担当で、弟の友康が強襲と暴力担当。友康は一時暴力団にスカウトされたが、危険すぎて放りだされた。十代の半分を少年院ですごしたのだから、無理もない。規格外の悪魔では組織暴力団でさえ飼いならせない。
「あんな危ないやつ、どうするつもりだ。」
ツインデビルに手を出すなら、いつも背後を気にして、夜も安心して眠れないだろう。崇は高原を吹く風のような冷たい声でいう。
『そろそろ俺たちの庭を掃除しなけりゃいけないと思っていた。』
「高梨兄弟と戦争するのか。崇、正気か?」
王さまはまたも余裕だった。
『被害を最小に抑える方法を、お前が考えろ、悠。お前のことをコワーキング・スペースのオーナーも話していた。腕の立つ優秀なコラムニストなんだろ。悪魔を仕留める罠を作りだせ。奴らがこの街に帰ってこれないようにな。』
おれは暴力が大の苦手。だが、ツインデビルをハメる罠なら、仕掛けがいがある。やつの真っ黒な右手に食いこんで離れない鋭い鉄の罠。
「わかった、やつを骨まで食ってやるよ。」
通話を切った。おれはボロディンの交響詩のテーマをハミングしながら、店番に戻った。ツインデビルをハメる罠。そいつを考えだすには、もう少しコワーキング・スペースを探らねばならないだろう。そのとき、なぜか、おれのあたまのなかににやにやとネットの間抜けたちを笑うレオンの顔が浮かんだ。
あの男は「ザ・ストリーム」でいったいなにを恐れていたのだろう。