「あのさ、仕事の内容ってどんなのかな?」

「仕事の柱は二つあって、ウェブの更新とアフィリエイト」

おれはネットはあまり好きじゃない。ウェブの更新は分かるがアフィなんかは分からない。バカみたいな質問を繰りだす。

「どっちも相当大変なの?」

レオンは嫌いな虫でも追い払うように手を振った。

「ぜんぜん。更新は頭もアイディアもいらないのがほとんどだし、アフィリエイトにはコツがあるんだ。どうしようかな、悠さんに話してもいいかな。こいつはけっこう企業秘密なんだけど」

おれはもったいぶった話し方をする奴が大嫌い。言わなくていいといいそうになったが、ぐっとこらえた。いいコラムには忍耐も必要。

「あのね、ネットを熱心に見てるのは、どんな人間だと思う?」

自分の人生が充実していれば誰もネットなんか見ない。

「ひまな人間かな」

「それだけじゃない。あともう一つ大事な形容詞がある。」

チッチッチッ、人差し指を振る。インチキ手品師みたい。

「ヒマで、馬鹿な人間だよ。日本で一番人気のネットのトピックは、芸能界のクズみたいな噂なんだ。ぼくはねらい目を二つに絞ってる。そいつらが一番熱心にネットを見てるから。」

ため息をつきそうになる。ネットは人類が創造した最良の集合知のネットワークだったはずだ。それが芸能界の噂でいっぱいか。

「芸能人の噂ブログとあとは何が稼ぎ頭なんだ。」

「ネット右翼を煽るブログだよ。どこどこのテレビ局が韓国に肩入れしているとか、ある商社が中国から資金援助を受けてるとか、適当に書き散らせばいい。根投与はいつもあちこちのサイトを覗いてネタを探しているから、必ず見てくれるんだ。こちらは数字を稼いで、大手のネット通販中からアフィリエイト収入をもらえる。いいビジネスだよね。」

レオンは鼻高々。最近の金儲けって、なぜこんな調子何だろう。

「反日のデマを見たネット右翼は、その後どうするんだ」

賢いアフィリエイターはにこにこと笑っている。

「あとのことなんか知らないよ。ネトウヨは純真だから、勝手にテレビ局や商社に抗議するんじゃないかな。こっちには関係ないけど。」

この質問をしてもいいのだろうか。おれは気軽な感じを装って聞いてみた。

「そうやって芸能界の噂とか反日デマを流して、アフィリエイトでいくらくらいの月収になるのかな」

そのときだけレオンは真剣な顔をした。腕を組んで言う。

「うーん、頑張ってアレコレ書き散らしても、月十万くらいかな」

結構な金額だ。だが、それだけで暮らしていけるほどの収入ではない。良かった。いい加減な噂を垂れ流すだけで、月に数百万にもなるようならネットはもうおしまいだ。そこまでアフィリエイトも荒れていないだろう。