ー特別編ー池袋@亀有エクスプレス
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「詐欺だか窃盗だか知らんが、お前、警察に行くか。知り合いの刑事に逮捕させて、手柄をくれてやる。池袋署なら、すぐ近くだ。おまえ、金を騙しとったのは、静江さんだけじゃないだろ。」
北口からなら、署まで歩いて五分とかからない。男はがたがたと震え出した。
「勘弁してください。お金は返しますから。」
「いかんな、お前の言葉には誠実さがない。」
人類の先祖には、誠実さなんて言葉は似あわないだろう。けれど、コイツが案外そうでもないんだ。だから言っただろ、男は顔でもスタイルでもないって。綾小路改め中川はアスファルトに額を擦りつけた。
「お願いします。金は返しますから、警察だけは勘弁してください。」
その時だった。おれの手の中の中川の携帯で、オルゴールのメロディが流れだした。局は「翼をください」だった。メールを読んだ。
【パパ、今日の塾はいつもより早く九時半に終わります。迎えに来るの忘れないでね。模試の評価はAランクでした。ご褒美にママに内緒でコンビニの肉まん食べようね。さっきからお腹ペコペコなんだ。☆ASAMI】
おれは携帯を両津に向けてやった。液晶の明かりを受けて、奴の顔が暗がりにぼんやりと浮かび上がる。夜道では会いたくない顔だ。
「弱ったな、中川、娘はいくつなんだ。」
おどおどと上目づかいで、やつは両津を見上げる。
「九歳です」
「……そうか」
腕を組んで考え込んだ。それから思いっ切り右足でアスファルトを踏みつける。バシンッとビル壁に靴音が反響した。中川は座ったまま十センチほど飛び上がった。後ろを見ると、先ほどの男たちが背を丸めて、駐車場から出ていくところだった。
「しかたない、アサミちゃんに免じて、今回は見逃してやる。悠、そいつの財布を抜け。」
おれは奴の上着の内ポケットから、すり切れた黒革の財布を取りだした。免許書、クレジットカード、キャッシュカード、名刺、どこかのレンタルビデオ屋とテレクラの会員証。おれは名刺とクレジットカードを残して財布に戻した。両津に見せてやる。
「こんなもんでいいかな」
やつはうなずいていった。
「明日中に銀行で金をおろして、静江さんに返しておけ。それまでそいつは預かっておく。」
それから自分のコートを見た。何かをじっと考えている。両津はにやりと笑っていった。
「そいつを脱げ」
自分もイトーヨーカドーで買ったというトレンチコートを脱いだ。
北口からなら、署まで歩いて五分とかからない。男はがたがたと震え出した。
「勘弁してください。お金は返しますから。」
「いかんな、お前の言葉には誠実さがない。」
人類の先祖には、誠実さなんて言葉は似あわないだろう。けれど、コイツが案外そうでもないんだ。だから言っただろ、男は顔でもスタイルでもないって。綾小路改め中川はアスファルトに額を擦りつけた。
「お願いします。金は返しますから、警察だけは勘弁してください。」
その時だった。おれの手の中の中川の携帯で、オルゴールのメロディが流れだした。局は「翼をください」だった。メールを読んだ。
【パパ、今日の塾はいつもより早く九時半に終わります。迎えに来るの忘れないでね。模試の評価はAランクでした。ご褒美にママに内緒でコンビニの肉まん食べようね。さっきからお腹ペコペコなんだ。☆ASAMI】
おれは携帯を両津に向けてやった。液晶の明かりを受けて、奴の顔が暗がりにぼんやりと浮かび上がる。夜道では会いたくない顔だ。
「弱ったな、中川、娘はいくつなんだ。」
おどおどと上目づかいで、やつは両津を見上げる。
「九歳です」
「……そうか」
腕を組んで考え込んだ。それから思いっ切り右足でアスファルトを踏みつける。バシンッとビル壁に靴音が反響した。中川は座ったまま十センチほど飛び上がった。後ろを見ると、先ほどの男たちが背を丸めて、駐車場から出ていくところだった。
「しかたない、アサミちゃんに免じて、今回は見逃してやる。悠、そいつの財布を抜け。」
おれは奴の上着の内ポケットから、すり切れた黒革の財布を取りだした。免許書、クレジットカード、キャッシュカード、名刺、どこかのレンタルビデオ屋とテレクラの会員証。おれは名刺とクレジットカードを残して財布に戻した。両津に見せてやる。
「こんなもんでいいかな」
やつはうなずいていった。
「明日中に銀行で金をおろして、静江さんに返しておけ。それまでそいつは預かっておく。」
それから自分のコートを見た。何かをじっと考えている。両津はにやりと笑っていった。
「そいつを脱げ」
自分もイトーヨーカドーで買ったというトレンチコートを脱いだ。