ー特別編ー池袋@亀有エクスプレス
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猛スピードで駆け寄る両津を見て、綾小路は最初驚いていた。だが、相手がひとりであることに、すぐ気づいたようだ。後方に向かって声をかけた。
「お前ら、頼むぞ」
ナンパ師仲間なんだろうか。薄っぺらな書類カバンを投げ捨てて、三人が前に出る。両津の動きは竜巻のようだった。まず一番背の高い金髪ジャケットの片袖と襟元を掴んだ。走り込んだ勢いを止めずに、払い腰で巻き込む。男はぬいぐるみのように軽々と投げられた。腰から補修跡が残るアスファルトに叩きつけられる。腰骨にひびが入るほどの勢いだった。残るボディガード二人のうち、が鯛の良い方の胸元に両津は潜り込んだ。そのまま体を沈みこませると、短く息を吐いて腰を跳ね上げた。絵にかいたような切れ味のいい背負い投げ。そのまま頭から地面に落とせば、即死である。柔道って怖いよな。だが、奴はしっかりとひきつけを緩めなかった。受け身のとれない二番種は背中からアスファルトに落ちて悶絶した。二人を片付けるのに要した時間は合わせて、七秒ほどだったと思う。それを見ていた三人目は、放りだしカバンを拾わずに、夜の駐車場から走り出ていった。まあ、正解だよな。人間が野生の類人猿にかなうはずがないのだ。綾小路が叫んだ。
「待ってくれ!」
逃げようとした綾小路の手首を、両津が掴んだ。鬼のようなグリップなのだろう。奴はそれだけで戦意を喪失したようだった。
「お前はこっちに来い」
「うぅっ…」
ビルの谷間の駐車場の隅に、闇が深く溜まっていた。両津は綾小路を夜の底で正座させた。エルメスのコートはホコリまみれだ。両津は言う。
「お前は何もんだ」
ふてくされたように男は言った。
「綾小路貴俊だよ」
両津の右手が素晴らしいスピードで走った。腕が動くのと、男の頬で破裂音がなるのはほぼ同時だ。おれはがくりと肩を落とした男のポケットから、携帯電話を抜いた。プロフィールを開く。
「中川貴俊だってよ」
「中川か。わしはよっぽどその名前に縁があるんだろうな。それでお前は何の仕事をしとるんだ。」
「IT……」
今度は両津はげんこつを作った。男は慌てて、いいなおす。
「小さな不動産会社で営業をやってます。残業は毎日だし、ワンマン社長で依怙贔屓はするし、月収は安いし、やってらんねーよ」
両津は腕を組んで、男の前で仁王立ちしている。
「男なんてみんなやってらんねぇもんだ。だが、やってらんねぇ中で何をするかで、人間の値打ちは決まる。お前は嘘を吐いて、静江さんを騙した。恋だ愛だならまだいいだろう。だが、静江さんから金を引っ張っただろう。二十万円。」
おれは両津を見た。初めて聞く話だ。
「お前ら、頼むぞ」
ナンパ師仲間なんだろうか。薄っぺらな書類カバンを投げ捨てて、三人が前に出る。両津の動きは竜巻のようだった。まず一番背の高い金髪ジャケットの片袖と襟元を掴んだ。走り込んだ勢いを止めずに、払い腰で巻き込む。男はぬいぐるみのように軽々と投げられた。腰から補修跡が残るアスファルトに叩きつけられる。腰骨にひびが入るほどの勢いだった。残るボディガード二人のうち、が鯛の良い方の胸元に両津は潜り込んだ。そのまま体を沈みこませると、短く息を吐いて腰を跳ね上げた。絵にかいたような切れ味のいい背負い投げ。そのまま頭から地面に落とせば、即死である。柔道って怖いよな。だが、奴はしっかりとひきつけを緩めなかった。受け身のとれない二番種は背中からアスファルトに落ちて悶絶した。二人を片付けるのに要した時間は合わせて、七秒ほどだったと思う。それを見ていた三人目は、放りだしカバンを拾わずに、夜の駐車場から走り出ていった。まあ、正解だよな。人間が野生の類人猿にかなうはずがないのだ。綾小路が叫んだ。
「待ってくれ!」
逃げようとした綾小路の手首を、両津が掴んだ。鬼のようなグリップなのだろう。奴はそれだけで戦意を喪失したようだった。
「お前はこっちに来い」
「うぅっ…」
ビルの谷間の駐車場の隅に、闇が深く溜まっていた。両津は綾小路を夜の底で正座させた。エルメスのコートはホコリまみれだ。両津は言う。
「お前は何もんだ」
ふてくされたように男は言った。
「綾小路貴俊だよ」
両津の右手が素晴らしいスピードで走った。腕が動くのと、男の頬で破裂音がなるのはほぼ同時だ。おれはがくりと肩を落とした男のポケットから、携帯電話を抜いた。プロフィールを開く。
「中川貴俊だってよ」
「中川か。わしはよっぽどその名前に縁があるんだろうな。それでお前は何の仕事をしとるんだ。」
「IT……」
今度は両津はげんこつを作った。男は慌てて、いいなおす。
「小さな不動産会社で営業をやってます。残業は毎日だし、ワンマン社長で依怙贔屓はするし、月収は安いし、やってらんねーよ」
両津は腕を組んで、男の前で仁王立ちしている。
「男なんてみんなやってらんねぇもんだ。だが、やってらんねぇ中で何をするかで、人間の値打ちは決まる。お前は嘘を吐いて、静江さんを騙した。恋だ愛だならまだいいだろう。だが、静江さんから金を引っ張っただろう。二十万円。」
おれは両津を見た。初めて聞く話だ。