ー特別編ー池袋@亀有エクスプレス
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奴がそれから話したのは、金持ちのぼんぼんと定食屋のお運びさんの夢のような恋物語。二人が出会ったのは、パソコンの趣味サイト(盆栽!)で、何度かのメールやり取りの後、オフラインでデートをしたという。おれはそこで口を滑らせた。
「三十代の男と女だもんな。それで、出来ちゃった?」
両津勘吉はさっと右手を腰に回した。
「くそっ、今日はピストルもっとらん。できちゃったなどと下品な言葉を静江ちゃんにつかうな」
いかれた警官だった。
「わかったよ。だけど、それでうまくいってるんなら、二人の未来に何の問題もないだろ。あんた、あんまり人の恋愛にちょっかい出さないほうがいいんじゃないの」
剛毛だらけの右手が震えていた。また銃を撃とうとしたのか、このオヤジ。
「何度か、静江ちゃんはデートをしたらしい。まあ、大人のデートだな。しかし、相手の男のことが分からんのだ。わかっているのは、ほんのわずかだ。携帯電話の番号とアドレス。上場間近のIT企業を経営しているらしいこと。そして、池袋近辺に住んでいること。あとは名前だ」
池袋に億万長者のIT社長なんているのだろうか。おれは聞いたことがない。
「その色男の名前は?」
ボルサリーノの下で、巡査長は憂鬱な顔をした。
「綾小路貴俊」
「マジで!」
最近はお笑い芸人だって、そんなベタな芸名はつけない。おれはパイプベンチで足を投げだした。なんだか、うんざりするような展開なのだ。
「パチ物の匂いがするな」
「わしもそう思う。だから、柏に池袋に詳しい奴はいないかと聞いたんだ。」
おれは池袋の秋の空を見上げた。秋の空はビルとビルの壁にはさまれて、谷底の様に澄んで深かった。
「最近一番多い依頼だな。」
「なにが」
「だからさ、自分が付き合っているこの人は誰なのでしょうってのが、興信所なんかでも一番多い依頼なのさ。みんな、ネットで出会って、相手が誰かも知らないうちに、恋したと思いこみ、エッチもしちまう。散々付き合ってから、突然気がつくんだよ。私の愛しい人は、ホントに誰って。間抜けな話だ。」
両津勘吉はトレンチコートの腕を組んだ。似合わないボルサリーノを深くかぶり直す。
「現代の恋人たちが侵されている病魔だな。」
なにいってんだかな、類人猿の癖に。奴は深々とため息をついて、本音を漏らした。
「くそっ、わしもいつかパソコンで誰かと出会うぞ」
愛すべき警官なんだろうが、おれの感想は複雑。なんだかなあ、このおやじ。
「三十代の男と女だもんな。それで、出来ちゃった?」
両津勘吉はさっと右手を腰に回した。
「くそっ、今日はピストルもっとらん。できちゃったなどと下品な言葉を静江ちゃんにつかうな」
いかれた警官だった。
「わかったよ。だけど、それでうまくいってるんなら、二人の未来に何の問題もないだろ。あんた、あんまり人の恋愛にちょっかい出さないほうがいいんじゃないの」
剛毛だらけの右手が震えていた。また銃を撃とうとしたのか、このオヤジ。
「何度か、静江ちゃんはデートをしたらしい。まあ、大人のデートだな。しかし、相手の男のことが分からんのだ。わかっているのは、ほんのわずかだ。携帯電話の番号とアドレス。上場間近のIT企業を経営しているらしいこと。そして、池袋近辺に住んでいること。あとは名前だ」
池袋に億万長者のIT社長なんているのだろうか。おれは聞いたことがない。
「その色男の名前は?」
ボルサリーノの下で、巡査長は憂鬱な顔をした。
「綾小路貴俊」
「マジで!」
最近はお笑い芸人だって、そんなベタな芸名はつけない。おれはパイプベンチで足を投げだした。なんだか、うんざりするような展開なのだ。
「パチ物の匂いがするな」
「わしもそう思う。だから、柏に池袋に詳しい奴はいないかと聞いたんだ。」
おれは池袋の秋の空を見上げた。秋の空はビルとビルの壁にはさまれて、谷底の様に澄んで深かった。
「最近一番多い依頼だな。」
「なにが」
「だからさ、自分が付き合っているこの人は誰なのでしょうってのが、興信所なんかでも一番多い依頼なのさ。みんな、ネットで出会って、相手が誰かも知らないうちに、恋したと思いこみ、エッチもしちまう。散々付き合ってから、突然気がつくんだよ。私の愛しい人は、ホントに誰って。間抜けな話だ。」
両津勘吉はトレンチコートの腕を組んだ。似合わないボルサリーノを深くかぶり直す。
「現代の恋人たちが侵されている病魔だな。」
なにいってんだかな、類人猿の癖に。奴は深々とため息をついて、本音を漏らした。
「くそっ、わしもいつかパソコンで誰かと出会うぞ」
愛すべき警官なんだろうが、おれの感想は複雑。なんだかなあ、このおやじ。