ー特別編ー北口スモークタワー
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つぎの一週間が流れた。一月も後半になって、寒さはいよいよ本格化。暑いのは好きだが、寒さが致命的に苦手なおれには一年で一番嫌いな季節だ。初日だけ張り込みを手伝ったが、あとは完全にS・ウルフに任せてしまった。おれには茶屋の仕事がある。
おれはアマゾンで、DMオオコシの本を注文してみた。尾行中の相手が書いた本を読むなんて初めて。やつの著作はひと言でいえば、大麻解禁賛成本。大麻はハッピーなソフトドラッグで、タバコよりも健康被害が少ない。一部の国や地域では合法で、堂々と街角で売られている。禁断症状もほとんどなく、現代に生きる人間のストレスを解消してくれる、母なる自然からの贈り物だ。うっかり読んでいると、おれも賛同しそうになった。だから、本って危険だよな。
教授とおれ、タカシと宮塚、それと禅の五人で会合をもったのは、池袋西口のカラオケ店のVIPルームだった。テーブルの中央には禅が持参したノートパソコンが置いてある。
目の粗い白黒映像がモニタに呼び出された。あのアパートの玄関だった。郵便受けがならんでいる。オオコシの横からのシルエット。ナンバー錠をまわす手元が映った。
宮塚が言う。
「あの玄関はせまくて、人が張りこむのは無理だったので、禅に小型カメラをセットしてもらいました。やつは郵便受けの中に部屋の鍵を隠しているようです。」
ナンバー錠は一番下の数字だけ動かしているようだ。郵便受けの扉を開けると鍵を取り、オオコシは二階に上がる階段にむかった。
「部屋番号は204号室。俺たちが尾行しているあいだ、あの部屋に三回顔を出しています。いずれも滞在時間は短く十五分から二十分ほど。なんのための部屋なのかは、まだはっきり分かりません」
となりの部屋で誰かが、ゴーイング・アンダー・グラウンドを歌っていた。おれはいった。
「ドラッグの隠し部屋かな」
自宅に隠し持っていたら、がさ入れのときに言い逃れができない。部屋の鍵を郵便受けに隠しておけば、まず隠し部屋の存在を知られることは無いだろう。教授が口を開いた。
「そうとも考えられる。だが、それなら一週間に三度も足を運ぶだろうか。オオコシからは甘い臭いがした。間違いなく大麻の常習者だろう。ならば、もうひとつの可能性が考えられる」
ほんものの大学教授のような話しかた。といっても、おれは大学にはいったことないけどる
「そいつはなんなんだ。」
じれったくなって質問した。先生に話しかける口調じゃないけど、おれは他の日本語を知らない。教授はおれを見てうなずいた。
「ホームグロウ」
タカシがいった。
「わからない」
おれは教授の代わりに答えてやった。オオコシの本にも書いてあったし、そのための道具はスモークタワーで目撃している。
「大麻の自家栽培だよ。倍人から買うのは毎回パクられる危険がある。自分で育てれば、その危険は減らせるし、好きな葉っぱの種を選べる」
タカシを包む空気が冷え込んだ。面白がっているのだろう。
「なるほど、宮塚、今オオコシはどうしている?」
「店に出ています」
「そうか、ならこれからやつの菜園を見学に行こう」
悪くない考えだった。おれたちはすぐにVIPルームを出た。メルセデスは通りに止めてある。
二十分後江古田のアパートに到着した。大二平和荘という看板が柱の横についていた。きっとどこかに第一もあるのだろう。おれはやつの郵便受けにさがるナンバー錠を確認した。上から3・8・6。三列目の6を覚えておいて、1から順番に試していく。タカシも教授も平気な顔をしていた。宮塚は玄関の外で、ひとが来ないか見張っている。4で鍵が開いた。ナンバー錠をはずして、郵便受けのなかを探った。チラシの下に埋もれた青い封筒が見つかった。なかから鍵が出てきた。
「あったぞ」
タカシがいった。
「遅い。日がくれるかと思った」
冗談を言いかえすのが面倒なので、おれは鍵を持って靴を脱いだ。
おれはアマゾンで、DMオオコシの本を注文してみた。尾行中の相手が書いた本を読むなんて初めて。やつの著作はひと言でいえば、大麻解禁賛成本。大麻はハッピーなソフトドラッグで、タバコよりも健康被害が少ない。一部の国や地域では合法で、堂々と街角で売られている。禁断症状もほとんどなく、現代に生きる人間のストレスを解消してくれる、母なる自然からの贈り物だ。うっかり読んでいると、おれも賛同しそうになった。だから、本って危険だよな。
教授とおれ、タカシと宮塚、それと禅の五人で会合をもったのは、池袋西口のカラオケ店のVIPルームだった。テーブルの中央には禅が持参したノートパソコンが置いてある。
目の粗い白黒映像がモニタに呼び出された。あのアパートの玄関だった。郵便受けがならんでいる。オオコシの横からのシルエット。ナンバー錠をまわす手元が映った。
宮塚が言う。
「あの玄関はせまくて、人が張りこむのは無理だったので、禅に小型カメラをセットしてもらいました。やつは郵便受けの中に部屋の鍵を隠しているようです。」
ナンバー錠は一番下の数字だけ動かしているようだ。郵便受けの扉を開けると鍵を取り、オオコシは二階に上がる階段にむかった。
「部屋番号は204号室。俺たちが尾行しているあいだ、あの部屋に三回顔を出しています。いずれも滞在時間は短く十五分から二十分ほど。なんのための部屋なのかは、まだはっきり分かりません」
となりの部屋で誰かが、ゴーイング・アンダー・グラウンドを歌っていた。おれはいった。
「ドラッグの隠し部屋かな」
自宅に隠し持っていたら、がさ入れのときに言い逃れができない。部屋の鍵を郵便受けに隠しておけば、まず隠し部屋の存在を知られることは無いだろう。教授が口を開いた。
「そうとも考えられる。だが、それなら一週間に三度も足を運ぶだろうか。オオコシからは甘い臭いがした。間違いなく大麻の常習者だろう。ならば、もうひとつの可能性が考えられる」
ほんものの大学教授のような話しかた。といっても、おれは大学にはいったことないけどる
「そいつはなんなんだ。」
じれったくなって質問した。先生に話しかける口調じゃないけど、おれは他の日本語を知らない。教授はおれを見てうなずいた。
「ホームグロウ」
タカシがいった。
「わからない」
おれは教授の代わりに答えてやった。オオコシの本にも書いてあったし、そのための道具はスモークタワーで目撃している。
「大麻の自家栽培だよ。倍人から買うのは毎回パクられる危険がある。自分で育てれば、その危険は減らせるし、好きな葉っぱの種を選べる」
タカシを包む空気が冷え込んだ。面白がっているのだろう。
「なるほど、宮塚、今オオコシはどうしている?」
「店に出ています」
「そうか、ならこれからやつの菜園を見学に行こう」
悪くない考えだった。おれたちはすぐにVIPルームを出た。メルセデスは通りに止めてある。
二十分後江古田のアパートに到着した。大二平和荘という看板が柱の横についていた。きっとどこかに第一もあるのだろう。おれはやつの郵便受けにさがるナンバー錠を確認した。上から3・8・6。三列目の6を覚えておいて、1から順番に試していく。タカシも教授も平気な顔をしていた。宮塚は玄関の外で、ひとが来ないか見張っている。4で鍵が開いた。ナンバー錠をはずして、郵便受けのなかを探った。チラシの下に埋もれた青い封筒が見つかった。なかから鍵が出てきた。
「あったぞ」
タカシがいった。
「遅い。日がくれるかと思った」
冗談を言いかえすのが面倒なので、おれは鍵を持って靴を脱いだ。