ー特別編ー北口スモークタワー
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おれたちはホームの池袋に戻ってロマンス通りの純喫茶にいった。
ガキとタカシとおれ。ふてくされた男装のローティーンを連れたおれたちを見て、S・ウルフのメンバーが驚いた顔で挨拶してくる。まぁ、めったにない組み合わせだよな。おれは日本のほとんどの男とは違いロリコンではない。
もう一度言う、ロリコンではない。
紫ガラスのドアを押し開けて、店にはいった。ソファはだいぶすり減った紫ビロード。
「好きなものを注文していいぞ。そこのすかしたお兄ちゃんのおごりだ」
先手をとって、ガキにいってやる。タカシの声はシベリア寒気団のように冷たいが、どこか丸みをおびて優しかった。いったいなにがあったのだろうか。このガキはなにもんだ?
「昔からのしりあいなのか」
タカシはちらりと腕時計を見た。また見たことのない時計をしている。パネライのラジオミールだ。ベルトは黒のクロコダイル。
「初対面から、七十五分になるな。ミオンを確保したのは、うちのメンバーだ。たまたま俺が近くにいたから、話を聞くことができた。そのあとはまっすぐおまえの店だ。」
確保?放課後遊んでいる子供にはつかわない言葉だった。
「ミオン、いったいなにやったんだ?」
男の子みたいな女の子は無言でうつむいたまま。代わりにタカシが笑っていった。
「放火。」
「……あー?」
「放火だ。それも池袋駅から徒歩三分の北口でな」
日本の初等教育は完璧に失敗した。放火の現行犯で捕まったガキはまったく反省の色を見せない。
「おれは児童相談所じゃない。こっちより池袋署の少年課のほうがいいんじゃないか」
あの署なら、おれの十年来の腐れ天敵の刑事、柏がいる。相変わらず悪どいことをしているらしい。タカシは凍りつくように笑った。
「それでいいのかな。ミオン、おまえが段ボールに火をつけた場所をいえ。」
女の子は顔をあげた。目が憎しみで黒々と光っている。
「北口スモークタワー」
そういうことか。おれは腰を落ち着けて、話を聞く態勢になった。
スモークタワーはJR池袋駅から、路線沿いに大塚方向に向かって三分ばかりのところに建っている。築三十年を超える細い雑居ビルだ。スモークタワーの由来は、そこで煙に関するものすべてが手にはいるから。いってみれば脱法ドラッグの総合百貨店だ。
「こいつはスモークタワーの裏で、積んであった段ボールに火をつけていた。S・ウルフがすぐに火を消して、タワーは無事だ。消防は呼んでいない。」
タカシがそういうと、ミオンが吐き捨てる。
「あんなビル、全部燃えればよかったんだ。あんたたちが邪魔したって、わたしはまた火をつけにいくからね」
そうとうな事情がありそうだった。ミオンのまえにならんでいるのは、バナナチョコパフェとパンケーキとホットココア。おれはチョコに拒否反応があるので、こんなチョコ尽くしな注文は生まれてから一度もしたことがない。おれはパンケーキのうえに飾ってあるイチゴのスライスを見つめながらいった。
「なにがあった?おれたちはおまえの敵じゃない。話を聞かせてくれ。」
ミオンがじっとおれをにらんだ。目に力をこめてこらえているけれど、涙がスローモーションでふくれあがって、転げ落ちていく。
ガキとタカシとおれ。ふてくされた男装のローティーンを連れたおれたちを見て、S・ウルフのメンバーが驚いた顔で挨拶してくる。まぁ、めったにない組み合わせだよな。おれは日本のほとんどの男とは違いロリコンではない。
もう一度言う、ロリコンではない。
紫ガラスのドアを押し開けて、店にはいった。ソファはだいぶすり減った紫ビロード。
「好きなものを注文していいぞ。そこのすかしたお兄ちゃんのおごりだ」
先手をとって、ガキにいってやる。タカシの声はシベリア寒気団のように冷たいが、どこか丸みをおびて優しかった。いったいなにがあったのだろうか。このガキはなにもんだ?
「昔からのしりあいなのか」
タカシはちらりと腕時計を見た。また見たことのない時計をしている。パネライのラジオミールだ。ベルトは黒のクロコダイル。
「初対面から、七十五分になるな。ミオンを確保したのは、うちのメンバーだ。たまたま俺が近くにいたから、話を聞くことができた。そのあとはまっすぐおまえの店だ。」
確保?放課後遊んでいる子供にはつかわない言葉だった。
「ミオン、いったいなにやったんだ?」
男の子みたいな女の子は無言でうつむいたまま。代わりにタカシが笑っていった。
「放火。」
「……あー?」
「放火だ。それも池袋駅から徒歩三分の北口でな」
日本の初等教育は完璧に失敗した。放火の現行犯で捕まったガキはまったく反省の色を見せない。
「おれは児童相談所じゃない。こっちより池袋署の少年課のほうがいいんじゃないか」
あの署なら、おれの十年来の腐れ天敵の刑事、柏がいる。相変わらず悪どいことをしているらしい。タカシは凍りつくように笑った。
「それでいいのかな。ミオン、おまえが段ボールに火をつけた場所をいえ。」
女の子は顔をあげた。目が憎しみで黒々と光っている。
「北口スモークタワー」
そういうことか。おれは腰を落ち着けて、話を聞く態勢になった。
スモークタワーはJR池袋駅から、路線沿いに大塚方向に向かって三分ばかりのところに建っている。築三十年を超える細い雑居ビルだ。スモークタワーの由来は、そこで煙に関するものすべてが手にはいるから。いってみれば脱法ドラッグの総合百貨店だ。
「こいつはスモークタワーの裏で、積んであった段ボールに火をつけていた。S・ウルフがすぐに火を消して、タワーは無事だ。消防は呼んでいない。」
タカシがそういうと、ミオンが吐き捨てる。
「あんなビル、全部燃えればよかったんだ。あんたたちが邪魔したって、わたしはまた火をつけにいくからね」
そうとうな事情がありそうだった。ミオンのまえにならんでいるのは、バナナチョコパフェとパンケーキとホットココア。おれはチョコに拒否反応があるので、こんなチョコ尽くしな注文は生まれてから一度もしたことがない。おれはパンケーキのうえに飾ってあるイチゴのスライスを見つめながらいった。
「なにがあった?おれたちはおまえの敵じゃない。話を聞かせてくれ。」
ミオンがじっとおれをにらんだ。目に力をこめてこらえているけれど、涙がスローモーションでふくれあがって、転げ落ちていく。