「そう…洒落気と金持ち…を気取り…たい…バカなガキの…仕業。が…一番あり得…そうな事…だと…思います…」

木枯らしが吹いたようなボソボソ声が俺と澪の話しに割り込んできた。

いつもの鬼○郎ヘアをした烏哭禅がパンケーキにバニラとチョコのアイスをのせた物にたっぷりメイプルシロップをかけている。

「そっちで何かわからなかったのか？」

俺はコーヒーカップを指先にのせてクルクルと回す。
「たいした…事は…わかりません…。」

禅はシロップとアイスに浸ったパンケーキを一口食べると口の端がつり上がった。

甘さに満足しているのかはわからないが俺は胸焼けしそうだ。

「ただ…」

禅の声が更に小さくなる。

「あの…NPOの…裏サイトを調べると…三千epで…ウリをやってる…女も…居ます。…円で…売るより安くても…epの方が…カッコいい…らしいです。」

俺は呆れてコーヒーカップを落としかけた。

「同じ援助交際でも円よりepのがいけてるなんて、とんでもない勘違いもいいとこだな。」

なにかが世の中にあらわれるとき、そいつは必ず新しい歪みを生む。

ダイナマイトだってそうだろ？戦争の道具にするために生まれ物じゃない。

「まぁ、なんしても俺はそこが限界だった。だから、悠の手腕を期待してる。」

「手腕って…」

期待されてるなんて言われたら俺は緊張してしまう。

「ふふ…天野さんも…十分…動けて…ますよ。…ですから…虎琥狗…さんも…雇ったん…ですから。」

「そうかな？」

澪は遠慮がちに笑った。


「えぇ…。虎琥狗…さんは…使える…人…しか側に…置きません…。今ですから…話しますが…。今回の件は…人材探しも…含めて…いました。4人の内…あなたが…一番使える…と判断し…候補に選ばれ…たんです。」

流石、王さまと言う事か。
街の仕事と同時に自分に必要なカードを確りと見定め集めていく。

恐ろしさもあるがそれが出来るからこそ何千のガキを従えれるのかも知れない。
それこそが崇の手腕なんだ。

「なら…いつかは俺も必要なくなるかもな。」

俺が崇の依頼を受けなくても手中にあるカードで解決。
わざわざ、俺みたいな微妙な探偵を動かさなくてもいいわけだ。

「ふぅ…わかって…ませんね。」

禅がため息をついた。
バニラエッセンスの甘い香りが俺の方まで届いた。

「力、知恵、情報、人脈……どれか…飛び抜けた人材は…探せば…一山いくらで…います。……必要なのは…持ち前の…バランス…をもつ人。……それが…悠さん…です」

「おだてすぎだろ。俺はパンピーだぞ。」

「それでも…貴方の…実績は…本物です…。他に…同じ…事が…出来る…人は…いないと断言しても…良い。」

まっすぐに人に誉められる事になれてない俺はそれ以上なにも言わなかった。

禅にまた新しい客が現れた辺りで俺も澪と別れた。

最後に明日からの事をきかれたので５時に池袋で落ち合う約束をして互いの連絡先を交換した。