ー特別編ー鬼子母神ランダウン
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「座れよ」
困ったような暗い顔。ナナがおれのほうに詰めたので、太ももがと太ももが一瞬だけ触れあった。キングに殺されるかもしれない。マサヒロは松葉杖をベンチの横に立てかけ、片足でけんけんするように腰をおろした。
「足の方はどうだ?」
マサヒロの声はききとれないほどちいさい。こっちまで心細くなりそうだ。
「手術した。来週から、リハビリだって」
怪我の正式名称は、足間接脱臼骨折とアキレス腱の部分断裂だと、ナナにきいていた。どちらもスポーツ選手には命にかかわるような重症だ。
マサヒロはそのとき急に顔をあげて叫ぶようにいった。
「昔みたいにはボールを蹴れないかもしれないけど、ぼくは絶対にまたサッカーしに、グラウンドにもどるから。ナナ姉、心配いらないから。おとうさんとおかあさんにも、そういっておいて」
おれは前髪が長くて、ほとんど隠れているマサヒロのつぶらな目を見た。悲しげではあるが、やる気を完全にはなくしていないようだ。
「がんばれよ。きっとまたすごいプレイができるようになる。おれ、お前のことぜんぜん知らないけど、マサヒロならできるような気がする」
たとえ希望的観測とわかっていても、なにか言わなければいけないときがあるよな。マサヒロは寂しそうにいった。
「でも、帝都学院のスポーツ推薦は、この怪我でダメになっちゃった」
そこは全国大会を何度も制覇している名門校。また、暗い顔に戻っている。ナナがいった。
「だいじょうぶ。ほかの高校にいって、帝都のサッカー部をやっつけてやればいいじゃない。見返してやろうよ」
ナナが弟の肩をポンポンとたたいた。
「この子、アキレス腱はお風呂であたためるのがいいってきいて、毎日一時間半お風呂のなかで、マッサージしてるの。わたしがはいる時間がぜんぜんなくて困ってるんだよね」
仲のいい姉と弟というのはいいものだった。おれはひとりっ子なので、こんな姉貴がいたらいいなと思った。命令ばかりするばかりするえらそうな兄貴はいらないけどね。
「おれ、ナナさんに頼まれて轢き逃げの犯人を探しているんだ。事故の日のこと、もうすこしくわしくきかせてくれないかな。」
どんな情報でもいい。おれのほうは白いピストバイク以外にはなんの手がかりもないのだ。マサヒロはうなずいた。
「まず、その白い自転車にのった男だけど、まえにも何度かみかけたことはあったのかな」
「うーん、注意してないから、わからない。でも、見たことなかったような気がする」
おれはナナにも同じことをきいた。
「私もみてないかな。でも、なぜそれが大事なの」
「自転車にのってるってことは、通勤だか通学で近くに住んでるってことだろ。まあ、最近じゃあ、片道二十キロくらいなら自転車でかようっていう猛者もいるけど、普通ならそんな遠いところに住んでるはずがない。だとしたら、なんどか見かけたことがあるかなと思ってさ」
困ったような暗い顔。ナナがおれのほうに詰めたので、太ももがと太ももが一瞬だけ触れあった。キングに殺されるかもしれない。マサヒロは松葉杖をベンチの横に立てかけ、片足でけんけんするように腰をおろした。
「足の方はどうだ?」
マサヒロの声はききとれないほどちいさい。こっちまで心細くなりそうだ。
「手術した。来週から、リハビリだって」
怪我の正式名称は、足間接脱臼骨折とアキレス腱の部分断裂だと、ナナにきいていた。どちらもスポーツ選手には命にかかわるような重症だ。
マサヒロはそのとき急に顔をあげて叫ぶようにいった。
「昔みたいにはボールを蹴れないかもしれないけど、ぼくは絶対にまたサッカーしに、グラウンドにもどるから。ナナ姉、心配いらないから。おとうさんとおかあさんにも、そういっておいて」
おれは前髪が長くて、ほとんど隠れているマサヒロのつぶらな目を見た。悲しげではあるが、やる気を完全にはなくしていないようだ。
「がんばれよ。きっとまたすごいプレイができるようになる。おれ、お前のことぜんぜん知らないけど、マサヒロならできるような気がする」
たとえ希望的観測とわかっていても、なにか言わなければいけないときがあるよな。マサヒロは寂しそうにいった。
「でも、帝都学院のスポーツ推薦は、この怪我でダメになっちゃった」
そこは全国大会を何度も制覇している名門校。また、暗い顔に戻っている。ナナがいった。
「だいじょうぶ。ほかの高校にいって、帝都のサッカー部をやっつけてやればいいじゃない。見返してやろうよ」
ナナが弟の肩をポンポンとたたいた。
「この子、アキレス腱はお風呂であたためるのがいいってきいて、毎日一時間半お風呂のなかで、マッサージしてるの。わたしがはいる時間がぜんぜんなくて困ってるんだよね」
仲のいい姉と弟というのはいいものだった。おれはひとりっ子なので、こんな姉貴がいたらいいなと思った。命令ばかりするばかりするえらそうな兄貴はいらないけどね。
「おれ、ナナさんに頼まれて轢き逃げの犯人を探しているんだ。事故の日のこと、もうすこしくわしくきかせてくれないかな。」
どんな情報でもいい。おれのほうは白いピストバイク以外にはなんの手がかりもないのだ。マサヒロはうなずいた。
「まず、その白い自転車にのった男だけど、まえにも何度かみかけたことはあったのかな」
「うーん、注意してないから、わからない。でも、見たことなかったような気がする」
おれはナナにも同じことをきいた。
「私もみてないかな。でも、なぜそれが大事なの」
「自転車にのってるってことは、通勤だか通学で近くに住んでるってことだろ。まあ、最近じゃあ、片道二十キロくらいなら自転車でかようっていう猛者もいるけど、普通ならそんな遠いところに住んでるはずがない。だとしたら、なんどか見かけたことがあるかなと思ってさ」