ー特別編ー鬼子母神ランダウン
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ただし、女はキングと違って、かなりのぽっちゃり。
太もものなんかははちきれそうで、顔も丸々としていた。美人ではないが愛嬌のある顔立ち。太めの某公共放送アナウンサーという感じか。そろも地方局。けれど、顔の表情は険しかった。タカシのほうは完全に無視して、おれをにらみつけていった。
「三月二十二日の木曜日、朝八時十五分ころ、あなたはどこにいましたか?」
おれは自分を指差した。
「おれのこと?そんな正確になにをしてたかなんて、わかんないよ」
いきなり法廷にでも立たされたようだった。女はおれの言葉を聞いていないのか、即座にいった。
「その時間に自転車にのっていましたか?」
なぜ、自転車に乗っていたことが問題なのだろう。さすがに回転の速いおれでも面食らっていると、キングが涼しい顔で助け船をだしてくれた。
「このピストンバイクが問題なら、安心しろ。こいつは今日届いたばかりの新品だ。」
ぽっちゃり女はケヤキ参道をおれたちのほうに歩いてきて、顔をくっつけるようにして、おれの自転車を確認した。つるつるのフレーム、油をさしたばかりのギア、ほとんどすり減っていないチューブラータイヤ。がっかりした顔でぺこりと頭をさげる。
「すみません。人違いみたいです。」
おれはいった。
「いいよ、別に。なにか大切なことなんだろ。」
女は顔を曇らせた。おれはそのままその場を立ち去ろうとした。そのとき信じられないものを見た。タカシが笑顔で女に話しかけたのである。
「どういう理由で、白い自転車を探しているんだ?三月二十二日の朝なにがあった?ここにいる悠は池袋ではちょっと名の売れたなんでも屋だ。女にはもてないし、頭もそこそこだが、こいつに頼めば、なぜか事件は解決する。話をしてみたら、どうだ。」
キングが自分のチームメンバーでもないとおりすがりの女の相談にのるなんて前代未聞。女にもてなくて、頭もそこそこは余計だが、事実なのでしかたない。
「いいよ、話をきこう。コイツがあんたのことを気に入ったみたいだから。タカシは自転車雑誌の専属モデルじゃなくて、池袋のギャングの王さまだ」
女の丸い頬にはなんの変化もなかった。池袋イチのトラブルシューターと池袋イチのキングには、ぜんぜんぴんときていないらしい。このあたりのガキの二大スターだが、おれたちもまだまだだな。
三台の自転車を押しておれたちがむかったのは、参道の先にある都電荒川線の鬼子母神前駅だった。駅といっても無人駅で改札もない。自転車をとめて、一段高くなったホームにあがり、夏の日のあたるベンチに座る。なんとなく手持ちぶさたなので、踏切の横にある焼き鳥屋にいって、つくねを三本買ってきた。ここはおれの子どものころからのいきつけだ。
「ありがとうございます。」
女は財布から百円玉をとりだそうとしたが、おれは笑って手を振った。
「そんなもんいいよ。この焼き鳥うまいだろ」
ちょっとタレが焦げた感じがたまらない。つくねに混ざった軟骨もいい口当たりだ。タカシはじっとつくねの串を見てから、さっさと片付けた。きっとイタリア製のサイクリングウエアに似合わないと判断したのだろう。つやつやに光って細くひと筋に空を映すレールをみながら、キングは女にいった。
「話せ」
太もものなんかははちきれそうで、顔も丸々としていた。美人ではないが愛嬌のある顔立ち。太めの某公共放送アナウンサーという感じか。そろも地方局。けれど、顔の表情は険しかった。タカシのほうは完全に無視して、おれをにらみつけていった。
「三月二十二日の木曜日、朝八時十五分ころ、あなたはどこにいましたか?」
おれは自分を指差した。
「おれのこと?そんな正確になにをしてたかなんて、わかんないよ」
いきなり法廷にでも立たされたようだった。女はおれの言葉を聞いていないのか、即座にいった。
「その時間に自転車にのっていましたか?」
なぜ、自転車に乗っていたことが問題なのだろう。さすがに回転の速いおれでも面食らっていると、キングが涼しい顔で助け船をだしてくれた。
「このピストンバイクが問題なら、安心しろ。こいつは今日届いたばかりの新品だ。」
ぽっちゃり女はケヤキ参道をおれたちのほうに歩いてきて、顔をくっつけるようにして、おれの自転車を確認した。つるつるのフレーム、油をさしたばかりのギア、ほとんどすり減っていないチューブラータイヤ。がっかりした顔でぺこりと頭をさげる。
「すみません。人違いみたいです。」
おれはいった。
「いいよ、別に。なにか大切なことなんだろ。」
女は顔を曇らせた。おれはそのままその場を立ち去ろうとした。そのとき信じられないものを見た。タカシが笑顔で女に話しかけたのである。
「どういう理由で、白い自転車を探しているんだ?三月二十二日の朝なにがあった?ここにいる悠は池袋ではちょっと名の売れたなんでも屋だ。女にはもてないし、頭もそこそこだが、こいつに頼めば、なぜか事件は解決する。話をしてみたら、どうだ。」
キングが自分のチームメンバーでもないとおりすがりの女の相談にのるなんて前代未聞。女にもてなくて、頭もそこそこは余計だが、事実なのでしかたない。
「いいよ、話をきこう。コイツがあんたのことを気に入ったみたいだから。タカシは自転車雑誌の専属モデルじゃなくて、池袋のギャングの王さまだ」
女の丸い頬にはなんの変化もなかった。池袋イチのトラブルシューターと池袋イチのキングには、ぜんぜんぴんときていないらしい。このあたりのガキの二大スターだが、おれたちもまだまだだな。
三台の自転車を押しておれたちがむかったのは、参道の先にある都電荒川線の鬼子母神前駅だった。駅といっても無人駅で改札もない。自転車をとめて、一段高くなったホームにあがり、夏の日のあたるベンチに座る。なんとなく手持ちぶさたなので、踏切の横にある焼き鳥屋にいって、つくねを三本買ってきた。ここはおれの子どものころからのいきつけだ。
「ありがとうございます。」
女は財布から百円玉をとりだそうとしたが、おれは笑って手を振った。
「そんなもんいいよ。この焼き鳥うまいだろ」
ちょっとタレが焦げた感じがたまらない。つくねに混ざった軟骨もいい口当たりだ。タカシはじっとつくねの串を見てから、さっさと片付けた。きっとイタリア製のサイクリングウエアに似合わないと判断したのだろう。つやつやに光って細くひと筋に空を映すレールをみながら、キングは女にいった。
「話せ」