ー特別編ー黄色のCurrency
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「働く能力も意志もあるのに、仕事がなくて働けない。それは通貨が足りないせいだ。みんなが自分に提供できるサービスを公開して、このep札を仲介に池袋のコミュニティで取引の輪を広げていく。そこで生まれるのは新しい雇用だ。国にできないというなら、ぼくたちが新しい金を発行して、若い人たちに仕事をつくりだせばいい。この紙切れはただのレーザープリンターの出力なんかじゃない。新しい働きかた、新しい生き方、それに新しいこの街のシンボルなんだ。」
オコノギの頬にはかすかに赤みがさしていた。
さすがに有力NPOの代表だ。
言葉に人をひきつける魅力がある。
鈍い俺の頭にもようやく話が見えてきた。
そして地域通貨というものが、本来どんな働きをするのかも。
この街のガキ千人に新しい仕事をつくれるなら、俺は一年間ただ働きしたってヘッチャラだ。
だってあたりまえだろ。
新しい仕事をつくることは、新しい希望を作ることだ。
それはこの国の大人たちが、ずっと放りだしてきた問題だった。
「最初に偽札が見つかったのは、どこなんだ?」
俺は失礼ながらミネラルウォーターを一気に飲み干して聞いた。
オコノギは声をひそめた。
「ここだ。epは池袋の飲食店の六割で使用可能になっている。それぞれの店でたまったepはこの事務所で、円に換金される事になっている。」
俺は手帳を取り出して書き留めていく。
「先月末の金曜日にもちこまれた四件分のep札のなかに、この偽札が二十枚ほどまぎれこんでいた。」
そういうと店の名と所在地と電話番号が記されたメモを俺にわたした。
ザッと目をとおす。
オーディネール、ネイチャーキッチン、スオミカフェ、デリ・マングローブ。
どれも池袋で最近急に増えてきた、新しいスタイルの店のようだ。
「そうか、最初に使われたのはどこかのカフェなんだ。ますます若いやつが匂うな。ところでさ、この100epでいくらくらいの価値があるの?」
オコノギは肩をすくめる。
「この事務所では100ep五百円だけど、街では別のレートで動いてる。金券ショップなんかでは、変動相場制で今は六百から七百円のあいだだろう。悠くんへの報酬はepでいいかな。」
「別に金なんかとらないよ。」
既に俺は乗り気のやる気だったし。
「はは。コーヒー飲み放題のチケットだとでも思ってくれればいいさ。」
悪くない話だ。
俺は遠慮なくうなずくと、オコノギはジャケットの内ポケットからなにか取り出した。
黄色の再生紙の分厚い封筒だった。
「そこに前金で半額の二万epがはいってる。うまくいったら、残り半分と特別ボーナスを考えてもいい。この街の人のために、ぼくたちの通貨を守ってほしい。悠くんよろしく頼む。」
そういうと若きNPO代表は腕時計をちらりと見た。
「取材の時間?」
オコノギの声は疲れていた。
「つぎで今日四件目だ。同じことを繰り返し話すのはひどく消耗するよ。」
背後のドアを誰かがノックした。俺は「日経BP」の記者と入れ違いに会議室をでた。
最後に見たオコノギの顔は逆光で表情が読めなかったが、暗くなり始めた公園の緑を背に古いSFマンガにでてくる火星人みたいに鈍い緑色だった。
オコノギの頬にはかすかに赤みがさしていた。
さすがに有力NPOの代表だ。
言葉に人をひきつける魅力がある。
鈍い俺の頭にもようやく話が見えてきた。
そして地域通貨というものが、本来どんな働きをするのかも。
この街のガキ千人に新しい仕事をつくれるなら、俺は一年間ただ働きしたってヘッチャラだ。
だってあたりまえだろ。
新しい仕事をつくることは、新しい希望を作ることだ。
それはこの国の大人たちが、ずっと放りだしてきた問題だった。
「最初に偽札が見つかったのは、どこなんだ?」
俺は失礼ながらミネラルウォーターを一気に飲み干して聞いた。
オコノギは声をひそめた。
「ここだ。epは池袋の飲食店の六割で使用可能になっている。それぞれの店でたまったepはこの事務所で、円に換金される事になっている。」
俺は手帳を取り出して書き留めていく。
「先月末の金曜日にもちこまれた四件分のep札のなかに、この偽札が二十枚ほどまぎれこんでいた。」
そういうと店の名と所在地と電話番号が記されたメモを俺にわたした。
ザッと目をとおす。
オーディネール、ネイチャーキッチン、スオミカフェ、デリ・マングローブ。
どれも池袋で最近急に増えてきた、新しいスタイルの店のようだ。
「そうか、最初に使われたのはどこかのカフェなんだ。ますます若いやつが匂うな。ところでさ、この100epでいくらくらいの価値があるの?」
オコノギは肩をすくめる。
「この事務所では100ep五百円だけど、街では別のレートで動いてる。金券ショップなんかでは、変動相場制で今は六百から七百円のあいだだろう。悠くんへの報酬はepでいいかな。」
「別に金なんかとらないよ。」
既に俺は乗り気のやる気だったし。
「はは。コーヒー飲み放題のチケットだとでも思ってくれればいいさ。」
悪くない話だ。
俺は遠慮なくうなずくと、オコノギはジャケットの内ポケットからなにか取り出した。
黄色の再生紙の分厚い封筒だった。
「そこに前金で半額の二万epがはいってる。うまくいったら、残り半分と特別ボーナスを考えてもいい。この街の人のために、ぼくたちの通貨を守ってほしい。悠くんよろしく頼む。」
そういうと若きNPO代表は腕時計をちらりと見た。
「取材の時間?」
オコノギの声は疲れていた。
「つぎで今日四件目だ。同じことを繰り返し話すのはひどく消耗するよ。」
背後のドアを誰かがノックした。俺は「日経BP」の記者と入れ違いに会議室をでた。
最後に見たオコノギの顔は逆光で表情が読めなかったが、暗くなり始めた公園の緑を背に古いSFマンガにでてくる火星人みたいに鈍い緑色だった。