ー特別編ー黄色のCurrency
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「秘密にしたい理由はわかったけど、俺にはまだひとつわからないことがある」
オコノギは先を促すように、俺に手のひらをむけた。
「いったい全体なんで自分達で金なんか発行しようと思ったんだ?」
ギザで冷静。それにちょっと疲れたNPO代表の目に炎がはいるのがわかった。
声に若々しい張りがもどる。
オコノギは座ったまま、すっきりと背を伸ばした。
「悠くん。ぼくはその質問をマスコミから何十回となくきかれている。でもね、それにこたえるのに慣れたことはないんだ。自分で話していて毎回心が動くよ。」
そういってオコノギは俺の目をじっと見つめた。
「今の日本の状況をどう思う。」
不景気なのはわかっていた。
だが、もの心ついたときから不景気には慣れているので、別におかしいとも思わない。
ただ俺のまわりのガキのほぼ三分の一に職がないのは事実だった。
一番不思議なのは、やつらがどうやって携帯の通話料金を払い込んでいるかだ。
「日本全体のことはわからない。でもこの街はだんだん貧しくなっているような気がする。」
オコノギは力強くうなずいた。
「今この国で起きているのは全面的なミスマッチだ。需要と供給。労働と対価。サービスとその受益者。通貨はもともと強力無比なブルドーザーで、そうしたミスマッチをならして平らにする力があったはずなんだ。それが日本ではもう十分に機能しなくなっている。いつまでたっても、社会にあいた傷口がふさがらない。断層は広がるばかりだ。だから、ぼくは自分達でバンソウコウをつくろうと思ったんだ。目の前で怪我をしている人をみていられなかったから。」
まだ話の要点がわからなかった。
きっとおれの頭が悪いせいなのだろう。
第一俺にはNGOとNPOの違いさえわからない。
「もともと、街づくりとか環境問題、それにボランティア活動は、現在の通貨とは反りが合わないところが多かった。金の世界ではよりおおきな利潤を生むことが最高で、精神的な満足や社会貢献は二の次だ。池袋ではたくさんの若い人たちの力があまっていた。だが、円で対価を支払うのでは、払う側ももらう側も硬直してうまくいかないだろう。それでこんな地域通貨を考えだした。」
オコノギはジャケットの内ポケットから新しい100ep札を抜いた。
ヒラヒラと揺らして見せる。
公園の木々を背に新しい旗のようになびいた。
「最初はうまくいくはずがないと、みんな笑っていた。だが、うちの事務所に登録したボランティアが千人を超えたら、誰も文句はいわなくなったよ。今度はマスコミの取材がうるさいくらいだ。きみもうちのNPOのホームページは知ってるだろう。」
ともきに見せてもらった画面を思いだした。
犬の散歩100ep。
「現在六千人を超えて登録メンバーが増大しつつある。自分の飽き時間を使って、誰かが困ってる人のために自発的に働く。それでちゃんと報酬だってもらえるんだ。わかるかな、悠くん」
俺はクールじゃない。
だから、前向きに世の中に働きかけるオコノギみたいな人間が嫌いじゃない。
オコノギは先を促すように、俺に手のひらをむけた。
「いったい全体なんで自分達で金なんか発行しようと思ったんだ?」
ギザで冷静。それにちょっと疲れたNPO代表の目に炎がはいるのがわかった。
声に若々しい張りがもどる。
オコノギは座ったまま、すっきりと背を伸ばした。
「悠くん。ぼくはその質問をマスコミから何十回となくきかれている。でもね、それにこたえるのに慣れたことはないんだ。自分で話していて毎回心が動くよ。」
そういってオコノギは俺の目をじっと見つめた。
「今の日本の状況をどう思う。」
不景気なのはわかっていた。
だが、もの心ついたときから不景気には慣れているので、別におかしいとも思わない。
ただ俺のまわりのガキのほぼ三分の一に職がないのは事実だった。
一番不思議なのは、やつらがどうやって携帯の通話料金を払い込んでいるかだ。
「日本全体のことはわからない。でもこの街はだんだん貧しくなっているような気がする。」
オコノギは力強くうなずいた。
「今この国で起きているのは全面的なミスマッチだ。需要と供給。労働と対価。サービスとその受益者。通貨はもともと強力無比なブルドーザーで、そうしたミスマッチをならして平らにする力があったはずなんだ。それが日本ではもう十分に機能しなくなっている。いつまでたっても、社会にあいた傷口がふさがらない。断層は広がるばかりだ。だから、ぼくは自分達でバンソウコウをつくろうと思ったんだ。目の前で怪我をしている人をみていられなかったから。」
まだ話の要点がわからなかった。
きっとおれの頭が悪いせいなのだろう。
第一俺にはNGOとNPOの違いさえわからない。
「もともと、街づくりとか環境問題、それにボランティア活動は、現在の通貨とは反りが合わないところが多かった。金の世界ではよりおおきな利潤を生むことが最高で、精神的な満足や社会貢献は二の次だ。池袋ではたくさんの若い人たちの力があまっていた。だが、円で対価を支払うのでは、払う側ももらう側も硬直してうまくいかないだろう。それでこんな地域通貨を考えだした。」
オコノギはジャケットの内ポケットから新しい100ep札を抜いた。
ヒラヒラと揺らして見せる。
公園の木々を背に新しい旗のようになびいた。
「最初はうまくいくはずがないと、みんな笑っていた。だが、うちの事務所に登録したボランティアが千人を超えたら、誰も文句はいわなくなったよ。今度はマスコミの取材がうるさいくらいだ。きみもうちのNPOのホームページは知ってるだろう。」
ともきに見せてもらった画面を思いだした。
犬の散歩100ep。
「現在六千人を超えて登録メンバーが増大しつつある。自分の飽き時間を使って、誰かが困ってる人のために自発的に働く。それでちゃんと報酬だってもらえるんだ。わかるかな、悠くん」
俺はクールじゃない。
だから、前向きに世の中に働きかけるオコノギみたいな人間が嫌いじゃない。