ー特別編ーカウントアップ
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シェビーヴァンからは男がふたり滑り出し、スプレーの白い攻撃にあわせてナイフでスペースギアの後輪を切り裂いた。ぷつりと繊維が切れる音はおれの車内でも聞こえた。続いて爆発的に空気が漏れる音がする。スペースギアの車体はがくんとおおきく尻を落とし、一度だけバウンドした。
おれはドアを明け、通りにおりた。運転手をひとり残し、シェビーヴァンとパジェロからおりたSウルフが、すでに八人がかりでスペースギアを囲んでいる。タカシがレンタカーの横に立っていう。
「おまえらはもう逃げられない。ドアを開けておりてこい。豊島開発でなく、俺たちの網にかかってよかったな。別におまえらをどうこうしようというわけじゃない」
タカシの話を聞こうと窓がすこし開いた。おれはタカシのとなりに立っていった。
「そこに吉村秀人という男がいるな。それに共犯の人間も。多田の組織はおまえらを殺すつもりだ。ヒロキを解放すれば、自由に逃がしてやる。急ぐんだ。もうすぐ、警察か多田の手下がやって来る。やつらは池袋中にびっしり網をかけているぞ」
スペースギアの横のスライドドアが開いて、遊び人風の男がふたり飛び出してきた。殺すという言葉が聞いたようだ。ようやく事態がのみこめたらしい。頭の悪そうな金髪のロングヘアと荒事の好きそうながっしりした坊主頭。Sウルフがふたりを押さえた。タカシがいう。
「いいんだ。いかせろ」
男たちは足早で公園のなかに消えていった。半開きのスライドドアから三台のマウンテンバイクが見えた。クルマを捨て自転車で逃げるつもりだったのだろうか。池袋の裏町なら悪いアイディアじゃない。
「本当に逃げてもいいのか」
薄く開いた窓から、エリトの細い声がした。タカシがクールにいう。
「ああ、どうせそのクルマはもう動かない。出てきて好きにしろよ」
おれは叫んだ。
「ヒロキ、そこにいるのか。だいじょうぶか」
運転席のドアが開いた。なかからいつかの写真より、ぐっとやつれた男が出てくる。エリトは派手な色合いのウインドブレーカーにシャリパン姿だが、二十代後半より、三十代後半に見えた。助手席には安全ベルトを斜めにかけたヒロキの顔が覗いていた。カチカチと計数機を叩く懐かしい音がする。ヒロキは顔いっぱいに笑っていった。
「カッパ・ピザーラ・マック・ミスド。悠ならきっとわかってくれるとおもった。」
とんでもない学習障害児。胸がつまって、気の聞いた台詞がでてこなかった。ちょっとくやしい。おれは手にもった紙袋をエリトの胸に投げてやった。
「そこに二百万とすこしはいっている。おれのじゃなく、あんたの母親の金だ。シャロン吉村はあんたが、多田につかまって半殺しにされるのを心配していた。その金をもって、どこか好きなところに逃げるといい。」
吉村秀人は背を丸めしわくちゃの紙袋を抱き締めた。反省しているようにも見えたが、あまり信用できない。おれなら絶対自分の金をこいつには貸さないだろう。
おれはドアを明け、通りにおりた。運転手をひとり残し、シェビーヴァンとパジェロからおりたSウルフが、すでに八人がかりでスペースギアを囲んでいる。タカシがレンタカーの横に立っていう。
「おまえらはもう逃げられない。ドアを開けておりてこい。豊島開発でなく、俺たちの網にかかってよかったな。別におまえらをどうこうしようというわけじゃない」
タカシの話を聞こうと窓がすこし開いた。おれはタカシのとなりに立っていった。
「そこに吉村秀人という男がいるな。それに共犯の人間も。多田の組織はおまえらを殺すつもりだ。ヒロキを解放すれば、自由に逃がしてやる。急ぐんだ。もうすぐ、警察か多田の手下がやって来る。やつらは池袋中にびっしり網をかけているぞ」
スペースギアの横のスライドドアが開いて、遊び人風の男がふたり飛び出してきた。殺すという言葉が聞いたようだ。ようやく事態がのみこめたらしい。頭の悪そうな金髪のロングヘアと荒事の好きそうながっしりした坊主頭。Sウルフがふたりを押さえた。タカシがいう。
「いいんだ。いかせろ」
男たちは足早で公園のなかに消えていった。半開きのスライドドアから三台のマウンテンバイクが見えた。クルマを捨て自転車で逃げるつもりだったのだろうか。池袋の裏町なら悪いアイディアじゃない。
「本当に逃げてもいいのか」
薄く開いた窓から、エリトの細い声がした。タカシがクールにいう。
「ああ、どうせそのクルマはもう動かない。出てきて好きにしろよ」
おれは叫んだ。
「ヒロキ、そこにいるのか。だいじょうぶか」
運転席のドアが開いた。なかからいつかの写真より、ぐっとやつれた男が出てくる。エリトは派手な色合いのウインドブレーカーにシャリパン姿だが、二十代後半より、三十代後半に見えた。助手席には安全ベルトを斜めにかけたヒロキの顔が覗いていた。カチカチと計数機を叩く懐かしい音がする。ヒロキは顔いっぱいに笑っていった。
「カッパ・ピザーラ・マック・ミスド。悠ならきっとわかってくれるとおもった。」
とんでもない学習障害児。胸がつまって、気の聞いた台詞がでてこなかった。ちょっとくやしい。おれは手にもった紙袋をエリトの胸に投げてやった。
「そこに二百万とすこしはいっている。おれのじゃなく、あんたの母親の金だ。シャロン吉村はあんたが、多田につかまって半殺しにされるのを心配していた。その金をもって、どこか好きなところに逃げるといい。」
吉村秀人は背を丸めしわくちゃの紙袋を抱き締めた。反省しているようにも見えたが、あまり信用できない。おれなら絶対自分の金をこいつには貸さないだろう。