ー特別編ーカウントアップ
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時間ちょうどに、本郷、紅をボディガードに引き連れて、タカシが東部デパート口からやってきた。黒のダウンヴェストに黒のフリースの長袖、黒のストレッチジーンズに黒のトレーニングシューズ。深くかぶったキャップも黒。真冬の路上より一段と低温の空気が、しんと静まってタカシのまわりを取り巻いている。お忍びで日本に遊びにきた中量級の世界チャンピオンのようだった。普通に歩いて広場を渡ってくるだけなのに、細い脚はでたらめなバネを感じさせる。
とろりと無色透明な液体が、つぎの瞬間いきなり爆発する。そんな絵を考えた。ニトログリセリンのようなストリートの王様・虎狗琥崇。やつの一声で数千のSウルフは、沈んでいく太陽さえ押し上げるだろう。おれのとなりに座ると涼しい顔でタカシはいった。紅と本郷はベンチの両わきに、レインボーブリッジの橋脚のようにそびえている。
「悠からの頼みごとなんて、去年の夏以来だな。あまりひとりで抱え込まないほうがいいぞ」
タカシは笑顔を見せた。ヒロキのあの超然とした笑いによく似ている。おれはいった。
「四十八時間だけ、Sウルフの力を貸してくれないか。」
おもしろそうな顔をする。おれはヒロキの誘拐事件の本末を、自分の頭を整理しながら話し始めた。注意深く耳をかたむけるタカシの空気が、どんどん冷え込んでいく。熱狂するとクールになれたちなのだ。
冬の日の引き足は早い。最初はおずおずと気弱に光っていた池袋の街のネオンサインも、日が沈んで十分もすると夜空を圧して輝き始める。暗さに目が慣れると、昼間より明るく感じられるくらいだ。おれたちの話し合いには、小一時間かかった。
おれとタカシがだした結論はこうだ。池袋の街中のすべてのガキに情報を流す。エリトが借りたレンタカーには百万の懸賞をつける。クルマ二台分の行動部隊を用意し、発見情報がはいればすぐに動けるようにしておく。Sウルフへの謝礼は、シャロン吉村の通帳の半分だ。
夜八時、家ではなく任せっきりの茶屋にいった。年の瀬のかきいれ時になにを遊んでるんだって顔をして、はなちゃんはおれを見た。団子がいかれるまえに、すべて売りきる。それ以外はすべて遊びなのだ。その通りかもしれない。おれは店にでたが、さっそくつり銭を間違えた。睡眠不足のうえにめずらしく頭を使ったので、くたくただったのだ。カリスマ店主への道は遠い。
八時間寝てつぎの朝復活した。二十三日は祝日。やることのなくなったおれは、そのあたたかな一日、携帯の呼び出し音にだけ耳を澄ませ、団子を売り続けた。店先のCDラジカセには「十八人の音楽家のための音楽」をいれておく。吉音はおかしくなったんじゃないかという顔をしていた。思い入れや感情を排した音楽は、裏ビデオ屋やファッションヘルスや怪しげなパブが並ぶ池袋の街を思えば、けっこうしっくりくると思うのだが。
とろりと無色透明な液体が、つぎの瞬間いきなり爆発する。そんな絵を考えた。ニトログリセリンのようなストリートの王様・虎狗琥崇。やつの一声で数千のSウルフは、沈んでいく太陽さえ押し上げるだろう。おれのとなりに座ると涼しい顔でタカシはいった。紅と本郷はベンチの両わきに、レインボーブリッジの橋脚のようにそびえている。
「悠からの頼みごとなんて、去年の夏以来だな。あまりひとりで抱え込まないほうがいいぞ」
タカシは笑顔を見せた。ヒロキのあの超然とした笑いによく似ている。おれはいった。
「四十八時間だけ、Sウルフの力を貸してくれないか。」
おもしろそうな顔をする。おれはヒロキの誘拐事件の本末を、自分の頭を整理しながら話し始めた。注意深く耳をかたむけるタカシの空気が、どんどん冷え込んでいく。熱狂するとクールになれたちなのだ。
冬の日の引き足は早い。最初はおずおずと気弱に光っていた池袋の街のネオンサインも、日が沈んで十分もすると夜空を圧して輝き始める。暗さに目が慣れると、昼間より明るく感じられるくらいだ。おれたちの話し合いには、小一時間かかった。
おれとタカシがだした結論はこうだ。池袋の街中のすべてのガキに情報を流す。エリトが借りたレンタカーには百万の懸賞をつける。クルマ二台分の行動部隊を用意し、発見情報がはいればすぐに動けるようにしておく。Sウルフへの謝礼は、シャロン吉村の通帳の半分だ。
夜八時、家ではなく任せっきりの茶屋にいった。年の瀬のかきいれ時になにを遊んでるんだって顔をして、はなちゃんはおれを見た。団子がいかれるまえに、すべて売りきる。それ以外はすべて遊びなのだ。その通りかもしれない。おれは店にでたが、さっそくつり銭を間違えた。睡眠不足のうえにめずらしく頭を使ったので、くたくただったのだ。カリスマ店主への道は遠い。
八時間寝てつぎの朝復活した。二十三日は祝日。やることのなくなったおれは、そのあたたかな一日、携帯の呼び出し音にだけ耳を澄ませ、団子を売り続けた。店先のCDラジカセには「十八人の音楽家のための音楽」をいれておく。吉音はおかしくなったんじゃないかという顔をしていた。思い入れや感情を排した音楽は、裏ビデオ屋やファッションヘルスや怪しげなパブが並ぶ池袋の街を思えば、けっこうしっくりくると思うのだが。