ー特別編ーカウントアップ
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サンシャイン六十階通りを戻りながら、池袋のSウルフの王様、虎狗琥崇にTELをいれた。久しぶりだった。このところストリートに大事件はない。取次ぎがでて、すぐに電話がまわされる。
『ああ、悠か。今月号のコラム読んだぞ。お前は汚いものを美しく書きすぎる癖があるな』
どうでもいいけれどといいたげなクールな声。
「タカシのこともな」
やつは鼻で笑った。記者の森下社がどうしてもタカシのことを取材して欲しいというので、本当にちょっとだけコラムに書いてみたら、池袋ではタカシの人気はカリスマ的になっていた。女性ファン急増。まあ美容師なんかと違ってやつは元々カリスマなんだが。おれはいった。
「頼みがある。すぐに会えないか?」
『豊島開発絡みなのか』
そうだといった。なぜわかったんだろうか。
『この二日間くらい、豊島開発と関西系のやつらが、あちこちでもめ事を起こしてる。なんかあると、悠はいつも顔をだしてるな。禅からも一報があったぞ』
トラブルがおれを呼ぶのだといった。二十分後、西口公園で待ち合わせを約束して、携帯を切った。なにげなく足下を見る。サンシャイン六十通りの敷石にはチューイングガムが無数に落ちて、灰色の水玉になっている。大勢の人間に踏みならされて、あとでついたというより、最初から計算されてプリントされた模様のようだった。通行人は誰も気にしていない。これはこれで、けっこうきれいだった。
汚いものを美しく書きすぎる癖か。いいんだ、どうせおれは甘いのだ。
円形広場のベンチでタカシを待っていると、携帯が鳴った。耳を寄せる。携帯の雑音は北風みたいだ。
『小鳥遊さん、お金の受け渡しがきまったわ』
シャロン吉村が息をひそめるようにいった。まだ、豊島開発の本社ビルにいるのだろうか。続けてくれといった。
『二十四日の夕方の四時、西口のターミナルにお金を積んだクルマを待機させておくことになった。細かな場所の指定はそのときまた電話するって』
「ヒロキの兄貴から、なにか連絡は」
『ないわ。そちらはなにかわかったの』
「まあ、すこし……あの金は使わせてもらっていいかな」
どこから情報が漏れるかはわからない。レンタカーの一件は伏せておくことにした。
『ええ、ヒロキが無事に戻って、エリトが逃げられるなら、全部使ってください』
シャロン吉村の声は必死だった。おれは、ともかくやってみるといった。うまくいくかどうかは、ぜんぜんわからない。おれが多田より一歩有利なのは、ヒロキがあの数を教えてくれたからにすぎない。
クリスマスを直前に控えて華やいだ女たちが、あちこちのデパートにむかいさっさと通りすぎていく。おれの頭のなかには最悪の想像が広がっていた。豊島開発の猟犬たちがヒロキの目の前で、兄と悪い仲間を殺していくのだ。ひとら、ふたり、さんにん……。
ヒロキの計数樹は死体もカウントするだろうか。
『ああ、悠か。今月号のコラム読んだぞ。お前は汚いものを美しく書きすぎる癖があるな』
どうでもいいけれどといいたげなクールな声。
「タカシのこともな」
やつは鼻で笑った。記者の森下社がどうしてもタカシのことを取材して欲しいというので、本当にちょっとだけコラムに書いてみたら、池袋ではタカシの人気はカリスマ的になっていた。女性ファン急増。まあ美容師なんかと違ってやつは元々カリスマなんだが。おれはいった。
「頼みがある。すぐに会えないか?」
『豊島開発絡みなのか』
そうだといった。なぜわかったんだろうか。
『この二日間くらい、豊島開発と関西系のやつらが、あちこちでもめ事を起こしてる。なんかあると、悠はいつも顔をだしてるな。禅からも一報があったぞ』
トラブルがおれを呼ぶのだといった。二十分後、西口公園で待ち合わせを約束して、携帯を切った。なにげなく足下を見る。サンシャイン六十通りの敷石にはチューイングガムが無数に落ちて、灰色の水玉になっている。大勢の人間に踏みならされて、あとでついたというより、最初から計算されてプリントされた模様のようだった。通行人は誰も気にしていない。これはこれで、けっこうきれいだった。
汚いものを美しく書きすぎる癖か。いいんだ、どうせおれは甘いのだ。
円形広場のベンチでタカシを待っていると、携帯が鳴った。耳を寄せる。携帯の雑音は北風みたいだ。
『小鳥遊さん、お金の受け渡しがきまったわ』
シャロン吉村が息をひそめるようにいった。まだ、豊島開発の本社ビルにいるのだろうか。続けてくれといった。
『二十四日の夕方の四時、西口のターミナルにお金を積んだクルマを待機させておくことになった。細かな場所の指定はそのときまた電話するって』
「ヒロキの兄貴から、なにか連絡は」
『ないわ。そちらはなにかわかったの』
「まあ、すこし……あの金は使わせてもらっていいかな」
どこから情報が漏れるかはわからない。レンタカーの一件は伏せておくことにした。
『ええ、ヒロキが無事に戻って、エリトが逃げられるなら、全部使ってください』
シャロン吉村の声は必死だった。おれは、ともかくやってみるといった。うまくいくかどうかは、ぜんぜんわからない。おれが多田より一歩有利なのは、ヒロキがあの数を教えてくれたからにすぎない。
クリスマスを直前に控えて華やいだ女たちが、あちこちのデパートにむかいさっさと通りすぎていく。おれの頭のなかには最悪の想像が広がっていた。豊島開発の猟犬たちがヒロキの目の前で、兄と悪い仲間を殺していくのだ。ひとら、ふたり、さんにん……。
ヒロキの計数樹は死体もカウントするだろうか。