ー特別編ーカウントアップ
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三日もするとヒロキはインラインスケートをマスターした。曲芸はできなくとも、まっすぐに走り、とまりたいところでとまり、段差を乗り越えられるようになった。おれの文章力と同じくらいか。ヒロキの運動神経は上々だった。それでぐっど、おれたちの行動半径も広がった。
おれはヒロキを西一番街のリッカの店に連れていった。リッカも母親には冷たかったくせに、ヒロキには甘い顔をする。ヒロキは芸能人の母親仕込みか、挨拶だけは異常にていねいだから、リッカ母にも一発で気に入られた。おれやリッカには腐りかけを食わせるくせに、ヒロキには市場から入荷したばかりの売り物のマスクメロンを切ってやる。不当な差別だ。
たまたま用があったのでおれの店にも連れていった。池袋の町並みとは一変した場所はどこも新鮮だったのか計数機のカウントはフルターボだった。カチカチカチカチ。ちょうど顔をだした吉音にもヒロキを紹介した。変わり者同士ふたりで意見があうかと思ったが、そう簡単にはいかなかった。吉音のテンションに押し負けたのか、妙に緊張している。しかたないから、放っておいた。無理に誰かを仲良くさせることなんて、誰にもできない。
サンシャイン通りをおれがヒロキを連れて歩いていると、通りのあちこちにいるS・ウルフの連中がハンドサインを送り挨拶してくる。最初はびびっていたが、すぐに慣れたようだ。ヒロキもサインを覚え、おれのまわりを円を描くようにインラインスケートで飛ばしながら、S・ウルフにハンドサインをを返す。
手のなかの計数機は、歌うようにおれたちの街のひとつひとつをかぞえていた。
夢のようにすぎた十二月の第三週のある日、おれたちは東池袋のデニーズまで足を伸ばした。シャロン吉村の金も使いきり、おれはいつもの貧乏暮らし。ポットケーキをひとつ取り、あとはお代わり自由のコーヒーで時間を潰す。ヒロキはおれのやることをすべてまねているから、自分は例によって百枚近い五百円玉をもってるくせに、アイスクリームではなくあまり好きでもないコーヒーを頼んでいる。あいかわらず計数機は活躍していた。店にいる客をかぞえ終わると、用もないのにメニューをもらい、料理の値段を片っ端から合算していく。
窓越しに見えるサンシャインシティが、灰をまぶしたような東京の青空をふたつに割っていた。窓ガラスは天井近くまであるが、六十階建てのてっぺんまでははいらない。視線をおろすと、窓際の一番奥、この店の特等席とでもいえそうなボックスシートに、禅が座っていた。池袋の情報屋で、噂では北東京一のハッカーだという。おれは最近やつを使ったことはない。情報ならS・ウルフのガキのネットワークで間に合ってるし、ハッキングが必要な仕事も今のところなかった。それにだいたいおれの仕事は口先三寸と丈夫な足でなんとかなる。
おれはヒロキを西一番街のリッカの店に連れていった。リッカも母親には冷たかったくせに、ヒロキには甘い顔をする。ヒロキは芸能人の母親仕込みか、挨拶だけは異常にていねいだから、リッカ母にも一発で気に入られた。おれやリッカには腐りかけを食わせるくせに、ヒロキには市場から入荷したばかりの売り物のマスクメロンを切ってやる。不当な差別だ。
たまたま用があったのでおれの店にも連れていった。池袋の町並みとは一変した場所はどこも新鮮だったのか計数機のカウントはフルターボだった。カチカチカチカチ。ちょうど顔をだした吉音にもヒロキを紹介した。変わり者同士ふたりで意見があうかと思ったが、そう簡単にはいかなかった。吉音のテンションに押し負けたのか、妙に緊張している。しかたないから、放っておいた。無理に誰かを仲良くさせることなんて、誰にもできない。
サンシャイン通りをおれがヒロキを連れて歩いていると、通りのあちこちにいるS・ウルフの連中がハンドサインを送り挨拶してくる。最初はびびっていたが、すぐに慣れたようだ。ヒロキもサインを覚え、おれのまわりを円を描くようにインラインスケートで飛ばしながら、S・ウルフにハンドサインをを返す。
手のなかの計数機は、歌うようにおれたちの街のひとつひとつをかぞえていた。
夢のようにすぎた十二月の第三週のある日、おれたちは東池袋のデニーズまで足を伸ばした。シャロン吉村の金も使いきり、おれはいつもの貧乏暮らし。ポットケーキをひとつ取り、あとはお代わり自由のコーヒーで時間を潰す。ヒロキはおれのやることをすべてまねているから、自分は例によって百枚近い五百円玉をもってるくせに、アイスクリームではなくあまり好きでもないコーヒーを頼んでいる。あいかわらず計数機は活躍していた。店にいる客をかぞえ終わると、用もないのにメニューをもらい、料理の値段を片っ端から合算していく。
窓越しに見えるサンシャインシティが、灰をまぶしたような東京の青空をふたつに割っていた。窓ガラスは天井近くまであるが、六十階建てのてっぺんまでははいらない。視線をおろすと、窓際の一番奥、この店の特等席とでもいえそうなボックスシートに、禅が座っていた。池袋の情報屋で、噂では北東京一のハッカーだという。おれは最近やつを使ったことはない。情報ならS・ウルフのガキのネットワークで間に合ってるし、ハッキングが必要な仕事も今のところなかった。それにだいたいおれの仕事は口先三寸と丈夫な足でなんとかなる。