ー特別編ーカウントアップ
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「主人は豊島開発の多田三樹夫といいます」
ため息がでる。西口の風俗街の半分をもっている会社だ。豊島開発は池袋の地元じゃ有名だった。勝新じゃないが「悪名」が轟いてる。ゴリラ(拳二)のいる一ノ瀬組とはいいライバル。
「やっぱり、無理なお願いかしら」
母親の顔になる。おれは世界の誰からにも自分を傷つけさせないというヒロキの決然とした笑顔を思い出した。あの笑いを生んだ理由の一部はこの女にもあるのだろうが、つぎの瞬間おれはいっていた。
「わかりました。できる限りのことはしてみます」
別に金などもらわなくても、そうするつもりだったのだ。だって、誰にでもすぐ財布の中身を見せるようなガキを、池袋に放りだしてはおけないだろ。
つぎの日から西口公園で、ヒロキと毎日言葉を交わすようになった。
まず最初にしたのは、やつを丸井スポーツ館に連れていくことだった。じりじりと絶壁をよじのぼるようなスピードで、西口公園内のバスターミナルのむかいにあるビルへとすすんでいく。スポーツ館まで直線距離なら百メートルくらいだが、今度は信号があるからちょっと楽だった。なぜかヒロキは横断歩道では、跳ねるように白線だけ踏んで渡るのだ。歩道より断然速い。
おれたちは建物にはいると、またすぐにインラインスケート売り場にむかった。壁には色とりどりのスケート靴が下がっている。未来の靴屋って感じ。
「なあ、ヒロキ、これをはけば直接地面とふれることないから、きっと素早く動けるようになるぞ。このまえはコーヒーおごってもらったから、今日はおれのおごりだ。好きなの選んではいてみろよ」
どうせシャロン吉村の金なのだ。かまうことはない。おれは子ども用では一番高いやつに手を伸ばした。鮫のように光る黒いプラスチックブーツの横に、銀のラインが三本走っている。靴底には一直線に四つの車輪。ヒロキに渡してやった。超然とした笑いに変化はないが、頬が赤くなっている。うれしいみたいだ。ヒロキがスケート靴をはこうとかがみこむと、遠くからポロシャツ姿の店員が飛んできた。サイズの確認だけして、おれはそいつを買った。片足だけで二万ちょい。ものを買うのってなぜ楽しいんだろう。たとえひとの金でも楽しさはぜんぜん変わらない。
その日は夕暮れまで、公園のなかでスケートの練習をした。絵日記みたいな一日。
ため息がでる。西口の風俗街の半分をもっている会社だ。豊島開発は池袋の地元じゃ有名だった。勝新じゃないが「悪名」が轟いてる。ゴリラ(拳二)のいる一ノ瀬組とはいいライバル。
「やっぱり、無理なお願いかしら」
母親の顔になる。おれは世界の誰からにも自分を傷つけさせないというヒロキの決然とした笑顔を思い出した。あの笑いを生んだ理由の一部はこの女にもあるのだろうが、つぎの瞬間おれはいっていた。
「わかりました。できる限りのことはしてみます」
別に金などもらわなくても、そうするつもりだったのだ。だって、誰にでもすぐ財布の中身を見せるようなガキを、池袋に放りだしてはおけないだろ。
つぎの日から西口公園で、ヒロキと毎日言葉を交わすようになった。
まず最初にしたのは、やつを丸井スポーツ館に連れていくことだった。じりじりと絶壁をよじのぼるようなスピードで、西口公園内のバスターミナルのむかいにあるビルへとすすんでいく。スポーツ館まで直線距離なら百メートルくらいだが、今度は信号があるからちょっと楽だった。なぜかヒロキは横断歩道では、跳ねるように白線だけ踏んで渡るのだ。歩道より断然速い。
おれたちは建物にはいると、またすぐにインラインスケート売り場にむかった。壁には色とりどりのスケート靴が下がっている。未来の靴屋って感じ。
「なあ、ヒロキ、これをはけば直接地面とふれることないから、きっと素早く動けるようになるぞ。このまえはコーヒーおごってもらったから、今日はおれのおごりだ。好きなの選んではいてみろよ」
どうせシャロン吉村の金なのだ。かまうことはない。おれは子ども用では一番高いやつに手を伸ばした。鮫のように光る黒いプラスチックブーツの横に、銀のラインが三本走っている。靴底には一直線に四つの車輪。ヒロキに渡してやった。超然とした笑いに変化はないが、頬が赤くなっている。うれしいみたいだ。ヒロキがスケート靴をはこうとかがみこむと、遠くからポロシャツ姿の店員が飛んできた。サイズの確認だけして、おれはそいつを買った。片足だけで二万ちょい。ものを買うのってなぜ楽しいんだろう。たとえひとの金でも楽しさはぜんぜん変わらない。
その日は夕暮れまで、公園のなかでスケートの練習をした。絵日記みたいな一日。