ー特別編ーカウントアップ
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横断歩道の白線を数えたことがあるだろうか。
意味なんてまったくないし、そんなことをしてどうなるわけでもない。冬の日ざしに輝くちょっと盛り上がった白線を、通りの向こう岸を目ざしかぞえながら渡る。黒いアスファルトの谷底に転げ落ちないように、慎重に足を運ぶのだ。白線は十七本。すてきな素数。自分と一以外では割り切れない、友達のいない孤独ないい数字だとやつはいう。
やつは横断歩道どころか目につくものすべてを数え続ける。それもいいかげんにじゃなく、真剣にできる限り正確に数えあげる。空をいく雲、雲にまぎれる鳥、鳥がとまる電線、電線でつなぎ繋がる池袋西一番街の雑居ビルの薄汚れたすべての窓。そうやって世界を数に置き換えることで、やつは初めて安心するんだ。
自分が誰なのか確かめるため、一日中心臓の鼓動を数えたり、呼吸数をカウントしたりする日々。やつは自分は人間じゃないといっていた。自分はただの計数機で、人間なんかじゃない。そんなに不正確で、信用ならないアナログ的存在じゃない。
西口公園でおれがやつに最初に合った日、やつはこのおかしな世界に生まれて三千八百六十九日目だったそうだ。おれはその月に入ってから出会った二十二人目の人間だともいった。
不正確でアナログの人間も大変だが、ただ計数機として生きるのも楽じゃない。
ーカウントアップー
意味なんてまったくないし、そんなことをしてどうなるわけでもない。冬の日ざしに輝くちょっと盛り上がった白線を、通りの向こう岸を目ざしかぞえながら渡る。黒いアスファルトの谷底に転げ落ちないように、慎重に足を運ぶのだ。白線は十七本。すてきな素数。自分と一以外では割り切れない、友達のいない孤独ないい数字だとやつはいう。
やつは横断歩道どころか目につくものすべてを数え続ける。それもいいかげんにじゃなく、真剣にできる限り正確に数えあげる。空をいく雲、雲にまぎれる鳥、鳥がとまる電線、電線でつなぎ繋がる池袋西一番街の雑居ビルの薄汚れたすべての窓。そうやって世界を数に置き換えることで、やつは初めて安心するんだ。
自分が誰なのか確かめるため、一日中心臓の鼓動を数えたり、呼吸数をカウントしたりする日々。やつは自分は人間じゃないといっていた。自分はただの計数機で、人間なんかじゃない。そんなに不正確で、信用ならないアナログ的存在じゃない。
西口公園でおれがやつに最初に合った日、やつはこのおかしな世界に生まれて三千八百六十九日目だったそうだ。おれはその月に入ってから出会った二十二人目の人間だともいった。
不正確でアナログの人間も大変だが、ただ計数機として生きるのも楽じゃない。
ーカウントアップー