ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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「じゃあ、あれほど仲よしに見えた地下アイドルのなかに、嫌がらせの犯人があたんだな」
各自分担して手作りの料理をもちよっていたライヴハウスの夜を思い出した。あの甘いそぼろがたっぷりのったちらし寿司。思い出は美しいが、事実の裏にはいろいろとからくりがある。たくさんの人間が自分の夢を実現しようとしのぎを削っている場所なのだ。おれは地下アイドルのナンバーワンにきいた。
「今日の撮影はだいじょうぶなのか」
イナミは眉をひそめた。
「わからない。カメラマンのギャラとスタジオ代を節約するために、一日で六人分のCDジャケットを撮影するから。相手が誰かはわからないけど、今日もなにかされるかもしれない」
おれは自分の胸をたたいていった。
「わかった。おれがなんとかするから、みんなにはおれが正式なマネージャーになったといってもらえないか。スタジオのなかにはいりたいんだ」
「いいよ。それくらいなら、お安いご用」
そのとき黙っていた小デブのほうがいった。
「あのさ、おたくはイナミさんとつきあってるの」
おたくにおたくといわれるほど腹が立つことはなかった。おれは特殊警棒を勢いよくたたんだ。小デブが驚いて、ちいさくジャンプする。スチールの非常階段が揺れた。
「おれは誰ともつきあってない。あんただって、この事態をみてればわかりだろ」
おれたちは簡単な打ち合わせをしてから、うえのスタジオにあがった。さて、けりをつける時間だ。イッツ・ショータイム!
ペントハウスの天井はガラス張りで温室みたい。自然光のさしこむいいスタジオだった。エアコンは最強にしてあるようだが、暑いのだけが玉にキズ。おれはイナミが着替えるのを、楽屋のまえで待った。閉じたドアのまえに立って、ほんもののマネージャーみたいにね。
パールホワイトのサテンのミニドレスに着替えたイナミといっしょに、真っ白いホリゾントがまぶしいスタジオにはいった。イナミのまえの撮影は、あのすずだった。ポーズと表情がうまく決まらずに、水森がいらついて叫んでいた。
「すず、どうした?ちゃんと気持ちを届けるんだろ。百パーセントの笑顔を見せてみろ」
すずは懸命に笑っていた。歯はすべて見せているが目が笑っていない。
「ああ、いいよ、すずちゃん、その調子」
カメラマンがなんとかすずの表情をやわらげようと、声をかけている。そのすずの目がイナミにむけられた。一瞬だけぎらりと憎しみが底光りする。この女にはイナミを憎むどんな理由があるだろうか。イナミの撮影がスタートする予定の午後二時になっても、すずの撮影は終わらなかった。
各自分担して手作りの料理をもちよっていたライヴハウスの夜を思い出した。あの甘いそぼろがたっぷりのったちらし寿司。思い出は美しいが、事実の裏にはいろいろとからくりがある。たくさんの人間が自分の夢を実現しようとしのぎを削っている場所なのだ。おれは地下アイドルのナンバーワンにきいた。
「今日の撮影はだいじょうぶなのか」
イナミは眉をひそめた。
「わからない。カメラマンのギャラとスタジオ代を節約するために、一日で六人分のCDジャケットを撮影するから。相手が誰かはわからないけど、今日もなにかされるかもしれない」
おれは自分の胸をたたいていった。
「わかった。おれがなんとかするから、みんなにはおれが正式なマネージャーになったといってもらえないか。スタジオのなかにはいりたいんだ」
「いいよ。それくらいなら、お安いご用」
そのとき黙っていた小デブのほうがいった。
「あのさ、おたくはイナミさんとつきあってるの」
おたくにおたくといわれるほど腹が立つことはなかった。おれは特殊警棒を勢いよくたたんだ。小デブが驚いて、ちいさくジャンプする。スチールの非常階段が揺れた。
「おれは誰ともつきあってない。あんただって、この事態をみてればわかりだろ」
おれたちは簡単な打ち合わせをしてから、うえのスタジオにあがった。さて、けりをつける時間だ。イッツ・ショータイム!
ペントハウスの天井はガラス張りで温室みたい。自然光のさしこむいいスタジオだった。エアコンは最強にしてあるようだが、暑いのだけが玉にキズ。おれはイナミが着替えるのを、楽屋のまえで待った。閉じたドアのまえに立って、ほんもののマネージャーみたいにね。
パールホワイトのサテンのミニドレスに着替えたイナミといっしょに、真っ白いホリゾントがまぶしいスタジオにはいった。イナミのまえの撮影は、あのすずだった。ポーズと表情がうまく決まらずに、水森がいらついて叫んでいた。
「すず、どうした?ちゃんと気持ちを届けるんだろ。百パーセントの笑顔を見せてみろ」
すずは懸命に笑っていた。歯はすべて見せているが目が笑っていない。
「ああ、いいよ、すずちゃん、その調子」
カメラマンがなんとかすずの表情をやわらげようと、声をかけている。そのすずの目がイナミにむけられた。一瞬だけぎらりと憎しみが底光りする。この女にはイナミを憎むどんな理由があるだろうか。イナミの撮影がスタートする予定の午後二時になっても、すずの撮影は終わらなかった。