ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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太った腕に続いて、スカイブルーのつなぎを着た男がふたり、エレベーターのなかに突進してきた。先頭のLLサイズが警棒を振り上げたおれにいった。
「待ってくれ、俺たちはイナミさんを傷つけるつもりはないんだ」
エレベーターの扉が閉まって、静かに上昇が始まった。おれは銀の警棒をかまえたままいった。
「じゃあ、なぜあの夜、イナミのマンションの近くをうろついていた」
デブのうしろに隠れていたもうひとりのXLサイズがいった。こちらは低く響くいい声をしている。
「最初はおれたち、追っかけをしていただけなんだ。イナミさんの家を張ったり、ゴミをあさったり。だけど、いまじゃ逆なんだよ」
四階、六階、八階、R。屋上のペントハウスでエレベーターが開くと、イナミはいった。
「悠さん、そのふたりは嘘ついてないと思う。マナブさんたとアキオさんはあそこまでひどいことを書いたりしない。ちょっとこっちきて」
イナミに連れられてビルの外側についている非常階段に移動した。ふたりの太めのガードマンの名は坂下学(さかしたまなぶ)と池田彰夫(いけだあきお)。職業は実際にガードマンなのだという。慎重体重はマナブが百七十センチ九十キロ、アキオが百七十五センチ百五キロというところか。小デブのほうのマナブがいった。
「あの制服って便利なんだよ。あれ着てると、みんなぜんぜん顔なんか見ないんだ」
したの通りから自動車のクラクションがきこえた。今日も都心の道路は元気よく渋滞している。おれはいった。
「さっき、追っかけの逆になったといってたけど、あれはどういういみなんだ」
アキオとマナブ、同じ青いつなぎを着ているから、どうもわかりにくい。でかいほうがいった。
「ずっとイナミさんの追っかけをしているうちに、誰かがひどいいやがらせをしているって気がついたんだ。このまえはドアに落書きがあっただろ。そのまえはライヴのまえに衣装が切り刻まれていた。あのときは衣装チェンジしないで、後半のステージでてたよね」
「そんなことがあったのか」
おれはその話をイナミからきいていなかった。
「忘れてた。それにあれはストーカーの仕業じゃないと思ってたし」
今回は最初から情報が足りないまま動いていたのだ。イナミにいった。
「地下アイドルだって、アイドルだろ。普通出番まえの衣装にファンがさわれるものなのか」
イナミは首を横に振った。
「楽屋のロッカーのなかだから、まず男性ファンはなかにはいれない」
「そうか。ストーカーじゃなく、その手の嫌がらせをされることもあるんだな。女から」
ふっとため息をついて、イナミがいった。
「そうだね、やっぱり女同士のいじわるはひどいときがある。表面的には仲がよくても、みんなライバルだし、嫉妬が激しいから」
おれは思うのだけど、心のなかのどろどろした影の力は、男の場合瞬間的な暴力であらわれ、女の場合は継続的ないじわるという形で放射される。どちらがより残酷で悪質かは、簡単には決められない話。
「待ってくれ、俺たちはイナミさんを傷つけるつもりはないんだ」
エレベーターの扉が閉まって、静かに上昇が始まった。おれは銀の警棒をかまえたままいった。
「じゃあ、なぜあの夜、イナミのマンションの近くをうろついていた」
デブのうしろに隠れていたもうひとりのXLサイズがいった。こちらは低く響くいい声をしている。
「最初はおれたち、追っかけをしていただけなんだ。イナミさんの家を張ったり、ゴミをあさったり。だけど、いまじゃ逆なんだよ」
四階、六階、八階、R。屋上のペントハウスでエレベーターが開くと、イナミはいった。
「悠さん、そのふたりは嘘ついてないと思う。マナブさんたとアキオさんはあそこまでひどいことを書いたりしない。ちょっとこっちきて」
イナミに連れられてビルの外側についている非常階段に移動した。ふたりの太めのガードマンの名は坂下学(さかしたまなぶ)と池田彰夫(いけだあきお)。職業は実際にガードマンなのだという。慎重体重はマナブが百七十センチ九十キロ、アキオが百七十五センチ百五キロというところか。小デブのほうのマナブがいった。
「あの制服って便利なんだよ。あれ着てると、みんなぜんぜん顔なんか見ないんだ」
したの通りから自動車のクラクションがきこえた。今日も都心の道路は元気よく渋滞している。おれはいった。
「さっき、追っかけの逆になったといってたけど、あれはどういういみなんだ」
アキオとマナブ、同じ青いつなぎを着ているから、どうもわかりにくい。でかいほうがいった。
「ずっとイナミさんの追っかけをしているうちに、誰かがひどいいやがらせをしているって気がついたんだ。このまえはドアに落書きがあっただろ。そのまえはライヴのまえに衣装が切り刻まれていた。あのときは衣装チェンジしないで、後半のステージでてたよね」
「そんなことがあったのか」
おれはその話をイナミからきいていなかった。
「忘れてた。それにあれはストーカーの仕業じゃないと思ってたし」
今回は最初から情報が足りないまま動いていたのだ。イナミにいった。
「地下アイドルだって、アイドルだろ。普通出番まえの衣装にファンがさわれるものなのか」
イナミは首を横に振った。
「楽屋のロッカーのなかだから、まず男性ファンはなかにはいれない」
「そうか。ストーカーじゃなく、その手の嫌がらせをされることもあるんだな。女から」
ふっとため息をついて、イナミがいった。
「そうだね、やっぱり女同士のいじわるはひどいときがある。表面的には仲がよくても、みんなライバルだし、嫉妬が激しいから」
おれは思うのだけど、心のなかのどろどろした影の力は、男の場合瞬間的な暴力であらわれ、女の場合は継続的ないじわるという形で放射される。どちらがより残酷で悪質かは、簡単には決められない話。