ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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「これから、すずをレッスンに連れていくところなんだ。ボイスとダンス。話ならクルマのなかでもできるからな。」
見栄っ張りの芸能関係者がこんなクルマにのっているのだ。水森はほんとうに金に困っているのではないか。もっともこいつが傷だらけのワンボックスカーが好きなマニアという可能性もある。あらゆるものにマニアがいる時代だ。クルマは山手通りにでて新宿方面にむかっていく。
「あの、水森さんはこれからどんな事業展開を考えているんですか」
ぱっとやつの顔色が明るくなった。水森はぺらぺらとしゃべりだす。
「確かにな、地下アイドルはひとりひとりじゃ、勝負にならない。大手に所属するアイドルはみんな美人でスタイルもいい。それでもなかなか売れないんだ。今はアイドル冬の時代だからな。」
おれは汗臭いシートで丁重に代表の話をきく振りをしていた。
「だけどな、ひとりの女の子がもってる執念とか、エネルギーっていうのはすごいものなんだ。みんな自分の一生をかけて、アイドルになりたいというんだからな。アキバやブクロの地下アイドルだって、ひとりじゃむずかしくとも、ユニットを組んで売り込めば、勝算はおおいにある。全員が売れる必要はないんだ。ひとりでもビッグになれば元はとれる」
電話一本とデスクひとつで開業できるミカン箱商売だといわれる所以だった。すずがいった。
「そのビッグになるオンリーワンがわたしなんでしょう、水森さん」
混雑した山手通りを運転しながら、水森は振り返った。危なくて見ていられない。
「そうだよ、すず。おまえがうちの事務所のスター候補第一号だ」
それだけで安心したようだった。すずはイヤフォンをつけて、iPodで音楽をきき始めた。ここでもシンセベースのうなりとシンバルのシャカシャカが聞こえる。
「イナミさんからきいたんですけど、水森さんはそのユニットに彼女を誘ってるんですよね」
「ああ、リーダーとしてな。三十過ぎまで、たったひとりでがんばってきたアイドルの志願者。おばちゃんキャラでいじることもできるし、ルックスはともかく、あれだけの声がある。イナミはぜひほしいメンバーだ」
おれはそこで、エサを投げてみた。
「そういえば、イナミさんが不安がっていましたよ。最近またたちの悪いストーカーがついたんだって」
おれは全神経を集中させて水森の横顔を見ていた。表情が一瞬完全にとまり、それから元にもどった。こいつもストーカーについて、なにかをしっているようだ。おれの勘はたび重なるトラブルで極限まで磨かれている。まあ、ときにはおおはずれで赤恥をかくこともあるけれど。
「イナミは困っているようだったか」
「ええ、おれにボディガードを頼んでくるくらいだから」
おれは一段声をさげた。内緒話ほど人が真剣にきくことはない。
見栄っ張りの芸能関係者がこんなクルマにのっているのだ。水森はほんとうに金に困っているのではないか。もっともこいつが傷だらけのワンボックスカーが好きなマニアという可能性もある。あらゆるものにマニアがいる時代だ。クルマは山手通りにでて新宿方面にむかっていく。
「あの、水森さんはこれからどんな事業展開を考えているんですか」
ぱっとやつの顔色が明るくなった。水森はぺらぺらとしゃべりだす。
「確かにな、地下アイドルはひとりひとりじゃ、勝負にならない。大手に所属するアイドルはみんな美人でスタイルもいい。それでもなかなか売れないんだ。今はアイドル冬の時代だからな。」
おれは汗臭いシートで丁重に代表の話をきく振りをしていた。
「だけどな、ひとりの女の子がもってる執念とか、エネルギーっていうのはすごいものなんだ。みんな自分の一生をかけて、アイドルになりたいというんだからな。アキバやブクロの地下アイドルだって、ひとりじゃむずかしくとも、ユニットを組んで売り込めば、勝算はおおいにある。全員が売れる必要はないんだ。ひとりでもビッグになれば元はとれる」
電話一本とデスクひとつで開業できるミカン箱商売だといわれる所以だった。すずがいった。
「そのビッグになるオンリーワンがわたしなんでしょう、水森さん」
混雑した山手通りを運転しながら、水森は振り返った。危なくて見ていられない。
「そうだよ、すず。おまえがうちの事務所のスター候補第一号だ」
それだけで安心したようだった。すずはイヤフォンをつけて、iPodで音楽をきき始めた。ここでもシンセベースのうなりとシンバルのシャカシャカが聞こえる。
「イナミさんからきいたんですけど、水森さんはそのユニットに彼女を誘ってるんですよね」
「ああ、リーダーとしてな。三十過ぎまで、たったひとりでがんばってきたアイドルの志願者。おばちゃんキャラでいじることもできるし、ルックスはともかく、あれだけの声がある。イナミはぜひほしいメンバーだ」
おれはそこで、エサを投げてみた。
「そういえば、イナミさんが不安がっていましたよ。最近またたちの悪いストーカーがついたんだって」
おれは全神経を集中させて水森の横顔を見ていた。表情が一瞬完全にとまり、それから元にもどった。こいつもストーカーについて、なにかをしっているようだ。おれの勘はたび重なるトラブルで極限まで磨かれている。まあ、ときにはおおはずれで赤恥をかくこともあるけれど。
「イナミは困っているようだったか」
「ええ、おれにボディガードを頼んでくるくらいだから」
おれは一段声をさげた。内緒話ほど人が真剣にきくことはない。