「いや、アレはパーティーとかが好きだからいいんだよ。俺はこういうのは合わないし…もう帰らせてくれ。」

親父にうったえてると誰かが挨拶してきた。

育ちもよく金持ちで、オマケにハンサムなエリートを演じる役者のような声。
爽やかで頭良さげ。

「すいません。小鳥遊兜馬さんですか？」

「そうだが。君は？」

白いアルマーニスーツを着た若い男が礼儀ただしく、名刺と何か黄色い札みたいな物を差し出している。

「じゃ、俺は先に帰るな。」

チャンスとばかりに俺は退散した。

そうだ。
あのときもう少しあの場にいたら俺はもっと早く解決出来たんじゃないかと考えるのは、まだ先の話だけどな。


…………


あれから数日経ち。
パーティーの事なんか既に忘れた頃、俺はまた何時もの日常に戻っていた。

ｰ教室(昼休み)ｰ

机を並べていつものメンバーで昼食を食べながら、談笑していた。

俺はとうに食べ終えていて話の方に集中していると隣にいる岡崎亮が財布を開いて難しい顔をした。

「どった？」

「ん、あぁ、今月ちょっと厳しいんだよ。」

財布の中を見ると千円札が一枚だけ見えた。なかなかのわびしい事になっている。

まぁ、偉そうにいってるけど俺の場合財布すら持ってない。
真桜に取り上げられてるかなら…

俺の前に座っている、ともきが弁当箱を終いながら亮に話しかけた。


「なんだ。亮、金欠か？」

「ああ。ちょっと色々つかってな。」

亮は苦笑いでは無く、どこか照れた様な笑いをする。

「千草とのデートか？」

「まぁ…そんなところ…だな。」

「あ、亮。殴っていい？」

俺は拳を握る。

「何でだよ！」

「いや、普通にムカついたんで。」

「無茶苦茶だな…」

ともきが冷静にツッコミを入れた。
くっリア充どもめ…

「話は変わるけど。アルバイトとかはしないのか？」
「バイトか。」

「千草とこですりゃいいじゃないか。イチャイチャしながら。」

俺はヘラヘラと笑いながら話すが亮は無視してともきに質問した。

「ともきはバイトしてたよな。何か良いのないか？」
「そうだな。良いバイトって言うかこういうのはどうだ？」

ともきは財布から千円札より一回り小さい鮮やかな黄色で印刷された札をだして机の上に置く。

「「これなんだ？」」

俺と亮は同時に質問した。
「あれ、悠も知らないのか？EP、結構便利な新しい金だよ。池袋でも喫茶店とかならだいたいつかえるぞ。」

「ふぅん。」

俺はその札を手に取ってマジマジと見た。

無数の石を水のおもてに投げたようにたくさんの同心円が広がり、波は互いに干渉を起こして複雑で美しい縞模様を描いている。

コンピューターグラフィックスでつくられた精密な文様。

中央には「100EP」と、これもデジタル時計の文字盤で使われるような数値が入っている。