ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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「なにか変わったことはないか」
イナミの部屋はすっきりとすべてモノトーンだった。壁には二十五年も昔のアイドルの写真が無数に張ってある。
「だいじょうぶみたい。部屋をでたときと、なにもかわってない」
「そうか、とりあえず被害はドアの落書きだけだな」
イナミはミニキッチンにいき、雑巾と洗剤をとりだした。玄関に向かう。おれもあとを追った。白いドアのまえにたって、はあっとため息をついた。
「明日の朝、みんなが出勤するまえに消さなくちゃな」
しゃがみこんで、洗剤をスプレーして、ドアをこすりだした。おれはなるべく感情が混じらないように質問した。
「あのさ、その落書きだけど、どうも女が書いたみたいな気がするんだ。イナミは誰かと今つきあってないのかな。その男には別な女がいて、三角関係のトラブルになってるとか」
それが一番常識的?な判断だろう。イナミは振り向きもせずに、せっせと雑巾をつかっている。
「彼はもう二年いないよ。今は誰ともつきあってない。適当に遊んでもいない。悠さんの予想ははずれだね」
そういうことか。あっさりしているのが、おれのいいところ。すぐに自分の意見を捨てて、思い立ってきいてみた。
「わかった。じゃあさ、太ったガードマンしらないか」
今度はぴくりと右肩が動いた。反応あり。
「うーん、しってるような、知らないような。ファンの人で太っていて、その手の仕事をしてる人がいるの。わたしたちのファンって、半分は、フリーターだから」
なけなしの金で、コンサートにかよい、インディーズCDを買っているのだ。ファン心理もそれだけ熱烈かもしれない。
「ガードマンがどうかしたの」
今度はおれが言葉を濁す番だった。
「いいや、なんでもない。ちょっと見かけて気になったから。」
十分後、ひどい落書きはほぼ見えなくなった。白いドアにはかすかにピンクの跡が残っているだけ。それにしても、誰が地下アイドルの部屋の扉に、タイガー・ウッズへの悪口みたいな言葉を書くのだろうか。
SEX依存症。
そいつはファンが自分の好きなアイドルにつかう言葉とは、とても思えなかった。
その夜は、家に帰ってばたりと倒れこんだ。頭のなかでは、シンセサイザーのドラムがぶんぶんうなっている。おれはダンスビートは嫌いじゃないが、やっぱりいくらライブでも適正な音量というものがあるよな。ストーカーのことはなにも考えてなかった。なにせ、まだ材料が少なすぎる。
翌日、新宿で店を開けていると吉音がまじめな声で声をかけてきた。
「ああいう人がいいとわたしは思うんだよね」
なんの話しなのか、まるでわからない。
「はあ?なにいってるんだよ」
「だからー、昨日奥からみてたんだよ。悠が年上の人とあるいてくところ。アネサンにょうぼっていうんだよね。」
なぜバカというのは、こうも人をイラつかせるものだろいか。声がとがっていくのが、自分でもわかった。
イナミの部屋はすっきりとすべてモノトーンだった。壁には二十五年も昔のアイドルの写真が無数に張ってある。
「だいじょうぶみたい。部屋をでたときと、なにもかわってない」
「そうか、とりあえず被害はドアの落書きだけだな」
イナミはミニキッチンにいき、雑巾と洗剤をとりだした。玄関に向かう。おれもあとを追った。白いドアのまえにたって、はあっとため息をついた。
「明日の朝、みんなが出勤するまえに消さなくちゃな」
しゃがみこんで、洗剤をスプレーして、ドアをこすりだした。おれはなるべく感情が混じらないように質問した。
「あのさ、その落書きだけど、どうも女が書いたみたいな気がするんだ。イナミは誰かと今つきあってないのかな。その男には別な女がいて、三角関係のトラブルになってるとか」
それが一番常識的?な判断だろう。イナミは振り向きもせずに、せっせと雑巾をつかっている。
「彼はもう二年いないよ。今は誰ともつきあってない。適当に遊んでもいない。悠さんの予想ははずれだね」
そういうことか。あっさりしているのが、おれのいいところ。すぐに自分の意見を捨てて、思い立ってきいてみた。
「わかった。じゃあさ、太ったガードマンしらないか」
今度はぴくりと右肩が動いた。反応あり。
「うーん、しってるような、知らないような。ファンの人で太っていて、その手の仕事をしてる人がいるの。わたしたちのファンって、半分は、フリーターだから」
なけなしの金で、コンサートにかよい、インディーズCDを買っているのだ。ファン心理もそれだけ熱烈かもしれない。
「ガードマンがどうかしたの」
今度はおれが言葉を濁す番だった。
「いいや、なんでもない。ちょっと見かけて気になったから。」
十分後、ひどい落書きはほぼ見えなくなった。白いドアにはかすかにピンクの跡が残っているだけ。それにしても、誰が地下アイドルの部屋の扉に、タイガー・ウッズへの悪口みたいな言葉を書くのだろうか。
SEX依存症。
そいつはファンが自分の好きなアイドルにつかう言葉とは、とても思えなかった。
その夜は、家に帰ってばたりと倒れこんだ。頭のなかでは、シンセサイザーのドラムがぶんぶんうなっている。おれはダンスビートは嫌いじゃないが、やっぱりいくらライブでも適正な音量というものがあるよな。ストーカーのことはなにも考えてなかった。なにせ、まだ材料が少なすぎる。
翌日、新宿で店を開けていると吉音がまじめな声で声をかけてきた。
「ああいう人がいいとわたしは思うんだよね」
なんの話しなのか、まるでわからない。
「はあ?なにいってるんだよ」
「だからー、昨日奥からみてたんだよ。悠が年上の人とあるいてくところ。アネサンにょうぼっていうんだよね。」
なぜバカというのは、こうも人をイラつかせるものだろいか。声がとがっていくのが、自分でもわかった。