ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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イナミは二度三度うなずくと、なんの変哲もないタイル張りのマンションのまえで立ち止まった。
「ここだから、もういいよ。今夜はありがとうね。急におかしなお願いをして、ごめんなさい。じゃあ」
イナミはファンにするようにおれに手をさし出した。握手すると、小さくて冷たいてのひらだった。その手をちいさく振って、池袋のナンバーワン地下アイドルはマンションのオートロックに消えた。
おれは見知らぬ街を川越街道に戻ろうとした。
遠くの電柱のしたに、なぜかガードマンの姿が見えた。さっき目撃したのとは、別人のようだ。さっきのやつは太っていたが、今度のはとても太っている。LLサイズとXLサイズくらいの違いがあった。やつのところまでは百メートル以上はあるだろうか。おれの足とやつの足を考えた。ダッシュすれば、つかまえて話しくらいは聞けるかも知れない。
そのとき、おれの軍パンで携帯電話が震えだした。液晶の小窓を確認する。昼に登録したばかりのイナミからの着信だった。フラップを開き、おれはいった。
「どうした?」
『悠さん、来て。うちのドアが……』
ショックでうまく言葉が出てこないようだった。おれは路地の先のデブのガードマンに目をやった。やつは小走りで角を曲がっていってしまう。そちらのほうはあきらめるしかないだろう。おれは携帯に集中した。
「怪我はないか。なにかが壊されてたり、盗まれたりしていないか。それなら、すぐに警察呼ぶんだぞ」
警察なら指紋や足紋や防犯カメラを調べてくれるだろう。それは素人トラブルシューターには無理な話。
『それはだいじょうぶ。とにかく、すぐきて。したのオートロックのところで待ってる。』
「わかった」
それだけ返して、久しぶりにおれは夜の街を走った。
真っ青な顔をしたイナミに連れて行かれたのは、三階の302号室だった。
このマンションのドアは白塗りなのだが、イナミの部屋のドアには赤いマジックインキで殴り書きがしてあった。
インランアイドル!SEX依存症!!
イナミは怒りか恐怖に震えている。自分の身体を両手で抱いて、おれにいった。
「ドアを開けるのが怖くて、悠さんに来てもらったの。ごめんね」
いいんだといった。おれはイナミから鍵を受け取り、静かにドアを開けた。明かりは消えていて、ひとの気配はなかった。廊下の奥が住居スペースになっているようだ。バスケットシューズを脱ぎ、室内にあがり、照明をつけた。ワンルームまで行って、あたりを確認した。イナミハおれの背中に張りつくようについてくる。
「ここだから、もういいよ。今夜はありがとうね。急におかしなお願いをして、ごめんなさい。じゃあ」
イナミはファンにするようにおれに手をさし出した。握手すると、小さくて冷たいてのひらだった。その手をちいさく振って、池袋のナンバーワン地下アイドルはマンションのオートロックに消えた。
おれは見知らぬ街を川越街道に戻ろうとした。
遠くの電柱のしたに、なぜかガードマンの姿が見えた。さっき目撃したのとは、別人のようだ。さっきのやつは太っていたが、今度のはとても太っている。LLサイズとXLサイズくらいの違いがあった。やつのところまでは百メートル以上はあるだろうか。おれの足とやつの足を考えた。ダッシュすれば、つかまえて話しくらいは聞けるかも知れない。
そのとき、おれの軍パンで携帯電話が震えだした。液晶の小窓を確認する。昼に登録したばかりのイナミからの着信だった。フラップを開き、おれはいった。
「どうした?」
『悠さん、来て。うちのドアが……』
ショックでうまく言葉が出てこないようだった。おれは路地の先のデブのガードマンに目をやった。やつは小走りで角を曲がっていってしまう。そちらのほうはあきらめるしかないだろう。おれは携帯に集中した。
「怪我はないか。なにかが壊されてたり、盗まれたりしていないか。それなら、すぐに警察呼ぶんだぞ」
警察なら指紋や足紋や防犯カメラを調べてくれるだろう。それは素人トラブルシューターには無理な話。
『それはだいじょうぶ。とにかく、すぐきて。したのオートロックのところで待ってる。』
「わかった」
それだけ返して、久しぶりにおれは夜の街を走った。
真っ青な顔をしたイナミに連れて行かれたのは、三階の302号室だった。
このマンションのドアは白塗りなのだが、イナミの部屋のドアには赤いマジックインキで殴り書きがしてあった。
インランアイドル!SEX依存症!!
イナミは怒りか恐怖に震えている。自分の身体を両手で抱いて、おれにいった。
「ドアを開けるのが怖くて、悠さんに来てもらったの。ごめんね」
いいんだといった。おれはイナミから鍵を受け取り、静かにドアを開けた。明かりは消えていて、ひとの気配はなかった。廊下の奥が住居スペースになっているようだ。バスケットシューズを脱ぎ、室内にあがり、照明をつけた。ワンルームまで行って、あたりを確認した。イナミハおれの背中に張りつくようについてくる。