ー特別編ー北口アイドル@アンダーグラウンド
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「あっ、そうだ」
なぜかイナミは銀のサインペンのキャップを抜いて、星とハートが飛び散るサインをしてくれた。CDをおれのほうにさしだす。
「……ああ、ありがと」
「いいえ、どういたしまして。お願いがあるんです。ストーカーがついているみたいなので、ボディガードをお願いできないでしょうか」
イナミはホイットニー・ヒューストンとは似てもにつかないけれど、あまりの退屈さに話だけきく気になった。
「わかった。ここじゃなんだから池袋まで行こう」
おれは奥で休憩しているはなちゃんに声をかけた。
「ちょっとでてくるから、店を頼む。」
返事はきかずにイナミと店を出た。奥から雷が落ちてきたようだが、そのときはすでに安全圏。よい子のみんなは嵐がきたら、すぐに逃げなきゃいけないよ。
西口公園のベンチは、ほとんどが埋まっていた。学生もサラリーマンも、なにをしているかわからない昼間の酔っぱらいも、天気がいいので外に出ているのだ。円形広場をとりまくのは、副都心のビル郡と明かりの消えた冴えない昼のネオンサイン。
イナミはショルダーバックからつば広の帽子と長手袋をだして身に付けた。紫外線対策なのだろう。アイドルはたいへんだ。
「ところでさ、おれ、アンタのことしらないんだけど、歌とかアイドルでくってけるの?」
テレビでも雑誌のグラビアでも、イナミを見たことはなかった。地味な私服を着たアイドルがうっとりするような声でいった。
「生活していくのに、ぎりぎりかな。足りないときは日雇いのアルバイトをすることもあるけど」
そういうのは普通フリーターというのではないだろうか。
「ふーん、だけど本業はアイドルなんだ」
「そう、わたしは八十年代のアイドルがすきだから、ああいう歌をずっとうたい続けていきたいの。今の時代には会わなくなっているんだけどね。事務所にもはいってないし、自分達で運営するコンサートでうたったり、CDを手売りしたり。なんとか暮らしてはいるけど、来年どうしているかはわからないな」
自分がやっていることは、冷静に分析できるようだった。おれだって、頭のいかれた自乗アイドルのボディガードは気がすすまない。そこでようやく本気で話をきく気になった。
「アンタのトラブルって、どんなの」
円形広場をわたってきた風は、エアコンの室外機から吹いてくるようだ。座って話をきいてるだけで、汗がにじんでくる。灰色パーカーを一番うえまで締めたイナミがいった。
「こういう仕事だから、ファンの人のなかにときどきおかしな人がまぎれこんじゃうこともある。しつこくつきまとったり、わけのわからないプレゼントを送ってきたりね」
「どんな、プレゼント?」
イナミは肩をすくめる。眉をひそめると目のまわりのしわが一段深くなった。
なぜかイナミは銀のサインペンのキャップを抜いて、星とハートが飛び散るサインをしてくれた。CDをおれのほうにさしだす。
「……ああ、ありがと」
「いいえ、どういたしまして。お願いがあるんです。ストーカーがついているみたいなので、ボディガードをお願いできないでしょうか」
イナミはホイットニー・ヒューストンとは似てもにつかないけれど、あまりの退屈さに話だけきく気になった。
「わかった。ここじゃなんだから池袋まで行こう」
おれは奥で休憩しているはなちゃんに声をかけた。
「ちょっとでてくるから、店を頼む。」
返事はきかずにイナミと店を出た。奥から雷が落ちてきたようだが、そのときはすでに安全圏。よい子のみんなは嵐がきたら、すぐに逃げなきゃいけないよ。
西口公園のベンチは、ほとんどが埋まっていた。学生もサラリーマンも、なにをしているかわからない昼間の酔っぱらいも、天気がいいので外に出ているのだ。円形広場をとりまくのは、副都心のビル郡と明かりの消えた冴えない昼のネオンサイン。
イナミはショルダーバックからつば広の帽子と長手袋をだして身に付けた。紫外線対策なのだろう。アイドルはたいへんだ。
「ところでさ、おれ、アンタのことしらないんだけど、歌とかアイドルでくってけるの?」
テレビでも雑誌のグラビアでも、イナミを見たことはなかった。地味な私服を着たアイドルがうっとりするような声でいった。
「生活していくのに、ぎりぎりかな。足りないときは日雇いのアルバイトをすることもあるけど」
そういうのは普通フリーターというのではないだろうか。
「ふーん、だけど本業はアイドルなんだ」
「そう、わたしは八十年代のアイドルがすきだから、ああいう歌をずっとうたい続けていきたいの。今の時代には会わなくなっているんだけどね。事務所にもはいってないし、自分達で運営するコンサートでうたったり、CDを手売りしたり。なんとか暮らしてはいるけど、来年どうしているかはわからないな」
自分がやっていることは、冷静に分析できるようだった。おれだって、頭のいかれた自乗アイドルのボディガードは気がすすまない。そこでようやく本気で話をきく気になった。
「アンタのトラブルって、どんなの」
円形広場をわたってきた風は、エアコンの室外機から吹いてくるようだ。座って話をきいてるだけで、汗がにじんでくる。灰色パーカーを一番うえまで締めたイナミがいった。
「こういう仕事だから、ファンの人のなかにときどきおかしな人がまぎれこんじゃうこともある。しつこくつきまとったり、わけのわからないプレゼントを送ってきたりね」
「どんな、プレゼント?」
イナミは肩をすくめる。眉をひそめると目のまわりのしわが一段深くなった。