松本は結局つぎの春の年、研究開発担当の取締役になったそうだ。今では仕事にあぶれたゲーム好きのSウルフが何人も、ライフゲートで働いている。

オリエは松本とわかれて、会社もやめてしまったらしい。その後どうなったのかは、おれにはちょっとわからない。だが、ストーカーをひと目で落とす純情派(?)の女だ。まだ若いし、つぎの相手に困ることは無いだろう。

タカシは相変わらずタカシのまま、池袋のキングを張っている。つぎの事件ではない事件で、おれはやつに散々こきつかわれたので、今回の貸しはチャラになった。

そうそう忘れていた。池袋の家電戦争の話。

ある火曜日(平日?気にするな)、おれは真桜といっしょにあの着手金をもって、元三越の量販店にいった。定価二十二万円の最新型冷蔵庫の値段は、最終的には十三万四千円プラス二〇パーセントのポイントつきで決着した。

これ以上安い値段は池袋中探しても絶対に見つからないだろう。なにせおれと真桜はビックカメラとヤマダのあいだを五往復もしたのだ。

残りの金は半分ずつ山分けにして、おれたちのこづかいになった。

なあ、たまには街のトラブルで小銭を拾うのもいいもんだよな。

やっぱり金は脅迫でなく、感謝して払ってもらうのも。

まあ、そんなまともなことをいうのは、金をもたない貧乏人だけだけどな。






ｰ特別編ｰブラックボックスの蜘蛛・完