ー特別編ーブラックボックスの蜘蛛
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三台のクルマがぐるぐると池袋東口を周回した。さすがの副都心でも駅から離れたこのあたりでは、人どおりはすくなかった。まもなく真夜中の十二時である。車内では、誰もが、松本に注目していた。やつは送話口を押えていった。
「彼女の名は宮崎織枝、わたしの秘書だ。」
タカシが雪つぶてでも投げるように冷たく言った。
「お前の愛人だな」
松本が言葉に詰まっていた。だが、今は道徳の時間ではなかった。さっきの悲鳴が最優先だ。おれは割っていった。
「なにが起きている?」
松本は怯えていた。きっと本当に彼女のことが心配なのだ。
「彼女の部屋に誰かが侵入しようとしている。ひどく太ったやつらしい。」
それを聞いたマリオの顔色がかわった。
「あのバカ」
「おまえのしりあいか」
タカシの声は氷のナイフのようだ。マリオは、一瞬この事態を自分に有利に運ぼうと考えたようだが、タカシの声と視線の冷たさにすぐ抵抗をやめた。
「そいつはパソコンおたくなんだ。携帯からデータを吸いだしたのも、そいつの仕事だ。普段はゲームのバグとりをしてるんだ」
「名前は?」
「荒井正平(あらいしょうへい)、でも誰もそんな名前でやつを呼ばない。虫とり名人の蜘蛛、スパイダーのスパイだ。」
松本の愛人の部屋に、バグとり名人がいる?おれにはわけがわからなかった。わけがわからないときはとにかく動きつづけるしかない。おれはまだ通話中の松本にいった。
「オリエの部屋はどこだ。」
「所沢」
タカシの目を見た。やつはうなずいて、ドライバーの本郷にいった。
「所沢にやれ。最速でな」
五リットルを超えるメルセデスのエンジンが猛烈な叫び声をあげた。
サンシャイン裏にある首都高速の入り口にむかった。メルセデスは急な坂道をロケットじみた速度で駆けあがっていく。おれは松本にささやいた。
「なんでもいい。話しをできるだけ引きのばしてくれ。」
つぎはマリオだ。できる限り、スパイの情報を集めておかなければいけない。やつはまだ埋められるのが恐ろしいのだろう。半泣きの顔だった。ひっぱたいてやりたいが、ぐっとがまんしていった。
「スパイをオリエの部屋に行かせたのは、お前なのか。保健でもかけるつもりで。」
やつは必死で首を横に振る。
「金さえもらえれば、あとは関係ない。あの女には俺は指一本ふれちゃいない」
「じゃあ、なぜ、スパイが女のところにいる?」
「そんなことわかんないよ」
悲鳴は電話からだけではなかった。マリオの声も悲鳴のようだ。
「……そういえば」
なんだかひどくイラつくガキだった。やっぱり埋めちゃったほうが、日本の将来のためにはいいかもしれない。
「なんでもいい、気がついたら早くいえ」
「すみません。スパイのやつ、彼女のことタイプだっていってました。データBOXにはいってる、その……あの……」
マリオが松本のほうをチラチラ見ていた。タカシがブリザードのようなひと言を投げる。
「話せ、死にたいか」
「彼女の名は宮崎織枝、わたしの秘書だ。」
タカシが雪つぶてでも投げるように冷たく言った。
「お前の愛人だな」
松本が言葉に詰まっていた。だが、今は道徳の時間ではなかった。さっきの悲鳴が最優先だ。おれは割っていった。
「なにが起きている?」
松本は怯えていた。きっと本当に彼女のことが心配なのだ。
「彼女の部屋に誰かが侵入しようとしている。ひどく太ったやつらしい。」
それを聞いたマリオの顔色がかわった。
「あのバカ」
「おまえのしりあいか」
タカシの声は氷のナイフのようだ。マリオは、一瞬この事態を自分に有利に運ぼうと考えたようだが、タカシの声と視線の冷たさにすぐ抵抗をやめた。
「そいつはパソコンおたくなんだ。携帯からデータを吸いだしたのも、そいつの仕事だ。普段はゲームのバグとりをしてるんだ」
「名前は?」
「荒井正平(あらいしょうへい)、でも誰もそんな名前でやつを呼ばない。虫とり名人の蜘蛛、スパイダーのスパイだ。」
松本の愛人の部屋に、バグとり名人がいる?おれにはわけがわからなかった。わけがわからないときはとにかく動きつづけるしかない。おれはまだ通話中の松本にいった。
「オリエの部屋はどこだ。」
「所沢」
タカシの目を見た。やつはうなずいて、ドライバーの本郷にいった。
「所沢にやれ。最速でな」
五リットルを超えるメルセデスのエンジンが猛烈な叫び声をあげた。
サンシャイン裏にある首都高速の入り口にむかった。メルセデスは急な坂道をロケットじみた速度で駆けあがっていく。おれは松本にささやいた。
「なんでもいい。話しをできるだけ引きのばしてくれ。」
つぎはマリオだ。できる限り、スパイの情報を集めておかなければいけない。やつはまだ埋められるのが恐ろしいのだろう。半泣きの顔だった。ひっぱたいてやりたいが、ぐっとがまんしていった。
「スパイをオリエの部屋に行かせたのは、お前なのか。保健でもかけるつもりで。」
やつは必死で首を横に振る。
「金さえもらえれば、あとは関係ない。あの女には俺は指一本ふれちゃいない」
「じゃあ、なぜ、スパイが女のところにいる?」
「そんなことわかんないよ」
悲鳴は電話からだけではなかった。マリオの声も悲鳴のようだ。
「……そういえば」
なんだかひどくイラつくガキだった。やっぱり埋めちゃったほうが、日本の将来のためにはいいかもしれない。
「なんでもいい、気がついたら早くいえ」
「すみません。スパイのやつ、彼女のことタイプだっていってました。データBOXにはいってる、その……あの……」
マリオが松本のほうをチラチラ見ていた。タカシがブリザードのようなひと言を投げる。
「話せ、死にたいか」