ー特別編ーブラックボックスの蜘蛛
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おれは短い手紙のしたにあるプリントを見た。
こちらのほうには「アヴァタープラネット・オンライン事業計画書」とある。
「来年の夏に立ちあげる新規プロジェクトだ。ライバルの何社かは、この企画書がのどから手がでるほどほしいだろう。うちはオンラインゲームでは先行している。」
いくらおれの頭の回転が早くても、少し事態の進行が急だった。おれはその日二杯目のカプチーノをすすって、しばらく窓の外に目をやった。ライズシティの広場は池袋的というよりも、六本木・青山的だった。おれにはぜんぜん似合ってないってこと。
「そっちがどうしたいのか、だいたいわかったよ。なんとかして、携帯電話をとりもどす。金を払うのは、べつにどっちでもいい。だけど、その場合絶対に二度と脅迫をさせないように手を打ちたい。出来るなら犯人の手元にのこされているかもしれない携帯の情報も、完璧に回収したい。」
部下の優秀な開発者でも見る目で、やつはおれを見た。
「そのとおり。さすがに池袋イチのトラブルシューターだ。それで……」
めずらしくキレ者が言葉を選んでいた。
「クライアントなんだから、なんでも話してくれ。」
声のボリュームをさげて、時期取締役がいった。
「……その、悠くんと懇意にしているSウルフには……なんというか、実力行使の部隊があるそうだな。」
懇意?実力行使?うーん、日本語は難しい。
「それつて、突撃隊みたいなやつのことか」
「ああ、まあそういうことだ」
上品な返事を聞いて、おれは腹を抱えて笑い声をあげてしまった。ガラス張りのクールなカフェにおれのバカ笑いが響く。あんまりいい音じゃないけどな。
「なんだ、おれ、半分しか松本さんの依頼をわかってなかったんだな。」
部長がにやりと笑った。おれは続けた。
「要するにそっちとしては、拾い主を骨の髄までビビらせたい。そこでSウルフの手を借りたい。アンタは最初、タカシに何人かこわもてのガキを貸してくれといったんだろ」
「気がついたんなら、しかたない。悠くんのいうとおりだ。」
おれはカプチーノをのみほしていった。
「だが、タカシはそんなふうにかんたんには自分の部下を貸したりはしない。いくら金を積まれてもな。で、やつはアンタを探らせるために、おれを紹介した。」
松本は悪びれなかった。淡々と認める。
「きっとそのとおりなんだろう。けれども今回の脅迫事件では誰が悪者で、誰が被害者かははっきりしている。きみはわたしの味方になってくれるか、悠くん。」
ようやく相手の腹の底が読めて、おれはうなずいた。
「わかったよ。タカシの紹介じゃ嫌とはいえない。まずはなにをすればいい。」
この冬のトラブルの司令塔は、おれでなく松本のようだった。まあ、おれよりもずっと優秀なのは確かだろう。おれは一生どんな会社の取締役会にも顔を出せそうにない。
「時間がもったいない。さっさと携帯の取引をして、相手に金をわたす。金額の交渉は悠くんのほうで、動いていってもらってもいい。差額は君のとり分にしよう。Sウルフへの謝礼はまた別で、そちらのほうは私と虎狗琥くんで話し合う。」
即断即決が気持ち良かった。この男はビジネスの場でも優秀に違いない。なんといってもIT関連はスピード勝負だからな。
松本がテーブルからスマートフォンをとりあげた。おれも自分の携帯を出し、やつにむける。赤外線通信。おれがうけとったのは、脅迫犯のアドレスと松本の連絡先だった。
こちらのほうには「アヴァタープラネット・オンライン事業計画書」とある。
「来年の夏に立ちあげる新規プロジェクトだ。ライバルの何社かは、この企画書がのどから手がでるほどほしいだろう。うちはオンラインゲームでは先行している。」
いくらおれの頭の回転が早くても、少し事態の進行が急だった。おれはその日二杯目のカプチーノをすすって、しばらく窓の外に目をやった。ライズシティの広場は池袋的というよりも、六本木・青山的だった。おれにはぜんぜん似合ってないってこと。
「そっちがどうしたいのか、だいたいわかったよ。なんとかして、携帯電話をとりもどす。金を払うのは、べつにどっちでもいい。だけど、その場合絶対に二度と脅迫をさせないように手を打ちたい。出来るなら犯人の手元にのこされているかもしれない携帯の情報も、完璧に回収したい。」
部下の優秀な開発者でも見る目で、やつはおれを見た。
「そのとおり。さすがに池袋イチのトラブルシューターだ。それで……」
めずらしくキレ者が言葉を選んでいた。
「クライアントなんだから、なんでも話してくれ。」
声のボリュームをさげて、時期取締役がいった。
「……その、悠くんと懇意にしているSウルフには……なんというか、実力行使の部隊があるそうだな。」
懇意?実力行使?うーん、日本語は難しい。
「それつて、突撃隊みたいなやつのことか」
「ああ、まあそういうことだ」
上品な返事を聞いて、おれは腹を抱えて笑い声をあげてしまった。ガラス張りのクールなカフェにおれのバカ笑いが響く。あんまりいい音じゃないけどな。
「なんだ、おれ、半分しか松本さんの依頼をわかってなかったんだな。」
部長がにやりと笑った。おれは続けた。
「要するにそっちとしては、拾い主を骨の髄までビビらせたい。そこでSウルフの手を借りたい。アンタは最初、タカシに何人かこわもてのガキを貸してくれといったんだろ」
「気がついたんなら、しかたない。悠くんのいうとおりだ。」
おれはカプチーノをのみほしていった。
「だが、タカシはそんなふうにかんたんには自分の部下を貸したりはしない。いくら金を積まれてもな。で、やつはアンタを探らせるために、おれを紹介した。」
松本は悪びれなかった。淡々と認める。
「きっとそのとおりなんだろう。けれども今回の脅迫事件では誰が悪者で、誰が被害者かははっきりしている。きみはわたしの味方になってくれるか、悠くん。」
ようやく相手の腹の底が読めて、おれはうなずいた。
「わかったよ。タカシの紹介じゃ嫌とはいえない。まずはなにをすればいい。」
この冬のトラブルの司令塔は、おれでなく松本のようだった。まあ、おれよりもずっと優秀なのは確かだろう。おれは一生どんな会社の取締役会にも顔を出せそうにない。
「時間がもったいない。さっさと携帯の取引をして、相手に金をわたす。金額の交渉は悠くんのほうで、動いていってもらってもいい。差額は君のとり分にしよう。Sウルフへの謝礼はまた別で、そちらのほうは私と虎狗琥くんで話し合う。」
即断即決が気持ち良かった。この男はビジネスの場でも優秀に違いない。なんといってもIT関連はスピード勝負だからな。
松本がテーブルからスマートフォンをとりあげた。おれも自分の携帯を出し、やつにむける。赤外線通信。おれがうけとったのは、脅迫犯のアドレスと松本の連絡先だった。