ー特別編ーブラックボックスの蜘蛛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
四時半になって、おれは真桜に声をかけた。用件をいうと、とたんに敵は目をつり上げた。
「なんなの。夕飯前に。また金にもならないハンパ仕事かなの」
おりは胸を張っていってやった。
「相手は超絶好調のIT企業の研究開発部長なんだ。今回金はうなるほどあるんだ」
おれが相手にしているトラブルはほとんど貧乏このうえない街のガキのものばかり。
真桜はあれでも、それなりにおれの経済状況を心配しているのかもしれない。なにせ、茶屋の月給はびっくりするほど安い。はなちゃんに至ってはよくうちで働いてくれてるようなものだった。だが、具体的な金の話はあまりうちではしないことにしている。駒裡さんが気を使うからな。
声のトーンが変わった。
「たんまりギャラはくれそうなのかなの」
わからないが、タカシはノーギャラでは今回は働かないといっとていた。
「あー、札束がどさどさ降ってくるかも。」
真桜はにやりと幼女スマイルを向けてきた。
「よし、わかったなの。そのかわり、しっかり稼いでくるんだぞ悠なの。お金が入ったら、うちの冷蔵庫新しいの買ってもらうなの。ヤマダのチラシでいいの見つけたなの。」
「あー、はいはい。」
なにもめったにない家主のもうけ話に、すぐのることはないじゃないか。計算高い幼女。やっぱり貧乏人の男の側にいる女は強い。それでなくちゃ幼女の細腕一本で、この家を守っていくのは困難だ。っか、なんだか母と子供みたいで笑えてくる。
夕方五時まえというと、東京の空は暗くなっていた。ひと月もまえからクリスマスのイルミネーションが始まっているので、デパートの周辺はどこもひどくにぎやかでロマンチックだ。
まあ、例年のごとくおれにはプレゼントもイヴのディナーも全然関係ないけどね。
ガードしたをくぐり、西口から東口に出た。グリーン大通りをまっすぐにすすむと、再開発された一角に地上四十階プラスアルファの超高層ビルが見えてくる。
なんでもセキュリティ万全のハイテクマンションらしいが、おれにはこちらも関係なかった。誰かに盗まれるのを防ぐには、簡単に何も持たなければいい。おれやうちの店みたいにね。
クスノキの植栽をとおり抜けて、ビルの谷間の広場にはいった。地下鉄の東池袋駅におりる階段に学生や会社員が流れ込んでいく。枯葉を吸い込む排水溝見たいだ。おれがぼんやり突っ立てると、ビジネス棟からグレイのスーツ男がやってきた。流行の細身ダブル。柄はグレンチェックだ。今シャワーを浴びたばかりというようなさっぱりした顔をしていた。
「小鳥遊悠さんですか、松本です」
声は低くて、よく響く。いわゆる二枚目声。なんだかおれまで硬くなる。うなずいていった。
「どういうトラブルかわからないけど、おれなんかよりもすぐに警察いったほうが解決は早いよ」
思ってもみなかったことを口にしていた。やっぱりおれは商売が下手だ。
「いえ、警察はちょっと困ります。」
松本は腕時計を見ていった。
「時間がありません。ここではなんですから、コーヒーでも飲みましょう。」
おれはライズシティの空を見上げた。サンシャインに負けないくらいの高さのガラスの壁が、冬の空にそそり立っている。吹きさらしのビル風は真冬の冷たさだった。
おれは得体の知れない開発部長と、ビジネス棟にもどり一階にあるカフェにはいった。
「なんなの。夕飯前に。また金にもならないハンパ仕事かなの」
おりは胸を張っていってやった。
「相手は超絶好調のIT企業の研究開発部長なんだ。今回金はうなるほどあるんだ」
おれが相手にしているトラブルはほとんど貧乏このうえない街のガキのものばかり。
真桜はあれでも、それなりにおれの経済状況を心配しているのかもしれない。なにせ、茶屋の月給はびっくりするほど安い。はなちゃんに至ってはよくうちで働いてくれてるようなものだった。だが、具体的な金の話はあまりうちではしないことにしている。駒裡さんが気を使うからな。
声のトーンが変わった。
「たんまりギャラはくれそうなのかなの」
わからないが、タカシはノーギャラでは今回は働かないといっとていた。
「あー、札束がどさどさ降ってくるかも。」
真桜はにやりと幼女スマイルを向けてきた。
「よし、わかったなの。そのかわり、しっかり稼いでくるんだぞ悠なの。お金が入ったら、うちの冷蔵庫新しいの買ってもらうなの。ヤマダのチラシでいいの見つけたなの。」
「あー、はいはい。」
なにもめったにない家主のもうけ話に、すぐのることはないじゃないか。計算高い幼女。やっぱり貧乏人の男の側にいる女は強い。それでなくちゃ幼女の細腕一本で、この家を守っていくのは困難だ。っか、なんだか母と子供みたいで笑えてくる。
夕方五時まえというと、東京の空は暗くなっていた。ひと月もまえからクリスマスのイルミネーションが始まっているので、デパートの周辺はどこもひどくにぎやかでロマンチックだ。
まあ、例年のごとくおれにはプレゼントもイヴのディナーも全然関係ないけどね。
ガードしたをくぐり、西口から東口に出た。グリーン大通りをまっすぐにすすむと、再開発された一角に地上四十階プラスアルファの超高層ビルが見えてくる。
なんでもセキュリティ万全のハイテクマンションらしいが、おれにはこちらも関係なかった。誰かに盗まれるのを防ぐには、簡単に何も持たなければいい。おれやうちの店みたいにね。
クスノキの植栽をとおり抜けて、ビルの谷間の広場にはいった。地下鉄の東池袋駅におりる階段に学生や会社員が流れ込んでいく。枯葉を吸い込む排水溝見たいだ。おれがぼんやり突っ立てると、ビジネス棟からグレイのスーツ男がやってきた。流行の細身ダブル。柄はグレンチェックだ。今シャワーを浴びたばかりというようなさっぱりした顔をしていた。
「小鳥遊悠さんですか、松本です」
声は低くて、よく響く。いわゆる二枚目声。なんだかおれまで硬くなる。うなずいていった。
「どういうトラブルかわからないけど、おれなんかよりもすぐに警察いったほうが解決は早いよ」
思ってもみなかったことを口にしていた。やっぱりおれは商売が下手だ。
「いえ、警察はちょっと困ります。」
松本は腕時計を見ていった。
「時間がありません。ここではなんですから、コーヒーでも飲みましょう。」
おれはライズシティの空を見上げた。サンシャインに負けないくらいの高さのガラスの壁が、冬の空にそそり立っている。吹きさらしのビル風は真冬の冷たさだった。
おれは得体の知れない開発部長と、ビジネス棟にもどり一階にあるカフェにはいった。