ー特別編ーブラックボックスの蜘蛛
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この冬、池袋で一番の話題といえば、なんといっても家電量販店の頂上決戦だろう。
池袋はもともとビックカメラの城下町で、我が家にある家電製品のほとんどは、あの店のポイントカードを使って購入したものだ。
それが平成になって何度目かわからないデフレ不況が到来すると、いよいよ副都心池袋もいよいよヤバくなってきた。小売りはどこも厳しいけれど、高級品は全滅。三越の池袋店はあっさり閉店。
あんなでっかいビルどうするんだと思っていたら、北関東のヤマダ電機だった。しかも店名がふるってる。日本総本店。なんでもあのチェーンの日本最大の店舗になるんだそうだ。
もちろんビックカメラだって黙っちゃいない。東口の三店をリニューアルして迎え撃った。
おれは別にほしいものは無かったけれど、ちゃんと見学にはいってきた。江戸っ子のつねで、ミーハーなのだ。もっとも開店直前に一万五千人集まったという、オープニングの当日ではない。ラーメン、ディズニーランド、コミケ、家電量販店、どこでもいいけどおれは行列が大っ嫌いだ。
どのフロアもものすごい人だかりで、商品を見るのは早々にあきらめ、さっさと七階のレストランフロアにあがった。さすがにこっちはそんなに混んではいなかった。おれがはいったのはパスタも出すようなありがちなカフェで、聞こえる言葉の半分は中国語。
人疲れしてぐったりしてると、携帯電話が震えだした。おれは着信音も着メロも苦手だ。どうにもあれは暴力的。
届いたのは見知らぬ相手からのメールだった。こういうのはたいてい、うさん臭い出会い系か、いくこともないショップか、やる可能性ゼロのネットゲームの宣伝だから、普段ならすぐ削除するんだが、そのときはなぜか開いてしまった。
それが最初の間違い。
>拝啓 小鳥遊悠さま
>はじめまして、当方
>㈱ライフゲートの研究開発部
>部長を務めております
>松本悟(まつもとさとる)と申します。
>トラブルシューターとして
>高名な小鳥遊様に、
>おりいってお願いしたい
>儀がございます。
>ぜひ、今日明日中にも
>お時間をいただけないでしょうか。
>よろしくお願い申し上げます。
>ちなみにこのアドレスは、
>ご友人の虎狗琥崇さまから
>うかがいました。
>ではでは、失礼いたします。
お願いしたい儀!おれのダチにこうてう文章を打てるやつは、まずひとりもいない。
小さなディスプレイの文字が妙に立派に見えるから、言葉って不思議だ。絵文字や、デコメもなし。
また、タカシが面倒な仕事をおれに押しつけてきたようだった。まあ、基本的におれはいつも退屈してるから、おもしろいネタだったらいつだって大歓迎なんだけどね。
誰もが携帯中毒になるのは、無理ないのかも知れない。
おれが最初にやったことは、携帯をiモードにつないで検索エンジンを呼び出すことだった。あったかなカフェラテをのみながら、椅子から動かずにそんな芸当ができるのだ。ある意味、携帯は持ち主よりも賢い。
ライフゲートで検索すると、さっそく三百件近くのサイトが上がってきた。なんでもライトゲートは自前のポータルサイトを核とした、メディア・広告業を展開しているという。
その手のIT企業のなかでは中堅だが、最近は非常に勢いがいいのだとか。いち早く韓国のネットゲームの大手と手を組んで、日本版を立ち上げたのだ。本社は豊島区東池袋四丁目。あの再開発地にあるオフィスビルの中だった。
おれはサラリーマンの経験はないから、部長というのがどれくらいえらいのかよく分からなかった。社長と平社員のあいだにある急な階段のちょうど真ん中くらいかなっと思っただけである。
池袋はもともとビックカメラの城下町で、我が家にある家電製品のほとんどは、あの店のポイントカードを使って購入したものだ。
それが平成になって何度目かわからないデフレ不況が到来すると、いよいよ副都心池袋もいよいよヤバくなってきた。小売りはどこも厳しいけれど、高級品は全滅。三越の池袋店はあっさり閉店。
あんなでっかいビルどうするんだと思っていたら、北関東のヤマダ電機だった。しかも店名がふるってる。日本総本店。なんでもあのチェーンの日本最大の店舗になるんだそうだ。
もちろんビックカメラだって黙っちゃいない。東口の三店をリニューアルして迎え撃った。
おれは別にほしいものは無かったけれど、ちゃんと見学にはいってきた。江戸っ子のつねで、ミーハーなのだ。もっとも開店直前に一万五千人集まったという、オープニングの当日ではない。ラーメン、ディズニーランド、コミケ、家電量販店、どこでもいいけどおれは行列が大っ嫌いだ。
どのフロアもものすごい人だかりで、商品を見るのは早々にあきらめ、さっさと七階のレストランフロアにあがった。さすがにこっちはそんなに混んではいなかった。おれがはいったのはパスタも出すようなありがちなカフェで、聞こえる言葉の半分は中国語。
人疲れしてぐったりしてると、携帯電話が震えだした。おれは着信音も着メロも苦手だ。どうにもあれは暴力的。
届いたのは見知らぬ相手からのメールだった。こういうのはたいてい、うさん臭い出会い系か、いくこともないショップか、やる可能性ゼロのネットゲームの宣伝だから、普段ならすぐ削除するんだが、そのときはなぜか開いてしまった。
それが最初の間違い。
>拝啓 小鳥遊悠さま
>はじめまして、当方
>㈱ライフゲートの研究開発部
>部長を務めております
>松本悟(まつもとさとる)と申します。
>トラブルシューターとして
>高名な小鳥遊様に、
>おりいってお願いしたい
>儀がございます。
>ぜひ、今日明日中にも
>お時間をいただけないでしょうか。
>よろしくお願い申し上げます。
>ちなみにこのアドレスは、
>ご友人の虎狗琥崇さまから
>うかがいました。
>ではでは、失礼いたします。
お願いしたい儀!おれのダチにこうてう文章を打てるやつは、まずひとりもいない。
小さなディスプレイの文字が妙に立派に見えるから、言葉って不思議だ。絵文字や、デコメもなし。
また、タカシが面倒な仕事をおれに押しつけてきたようだった。まあ、基本的におれはいつも退屈してるから、おもしろいネタだったらいつだって大歓迎なんだけどね。
誰もが携帯中毒になるのは、無理ないのかも知れない。
おれが最初にやったことは、携帯をiモードにつないで検索エンジンを呼び出すことだった。あったかなカフェラテをのみながら、椅子から動かずにそんな芸当ができるのだ。ある意味、携帯は持ち主よりも賢い。
ライフゲートで検索すると、さっそく三百件近くのサイトが上がってきた。なんでもライトゲートは自前のポータルサイトを核とした、メディア・広告業を展開しているという。
その手のIT企業のなかでは中堅だが、最近は非常に勢いがいいのだとか。いち早く韓国のネットゲームの大手と手を組んで、日本版を立ち上げたのだ。本社は豊島区東池袋四丁目。あの再開発地にあるオフィスビルの中だった。
おれはサラリーマンの経験はないから、部長というのがどれくらいえらいのかよく分からなかった。社長と平社員のあいだにある急な階段のちょうど真ん中くらいかなっと思っただけである。