ー特別編ーブラックボックスの蜘蛛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
おれたちはいつも、ちいさな爆弾を抱え歩いている。
ポケットにはいる秘密の小箱は、いまやおれたちの命綱だ。たまに忘れて外出したりすると、丸裸になったような心細さになるのだから、心底いかれてる。
薄っぺらなマシンのなかには、オフィシャル&プライベートな生活情報がぎっしり。そいつはいつ破裂するかわからない、致命的な危険物。
もちろんそこには情報だけでなく、あんたの大好きなアイドルの音楽ファイルや、ロシアの文豪の小説だってダウンロードしてあるかもしれない。写真だって何百枚もためてあることだろう。家族や友人だけでなく、通りすがりの芸能人や可愛い子猫の写真なんかもね。メールにいたってはもう数えきれないくらい。どのフォルダーもぱんぱんにふくれている。
現代の日本人は短い便りを歴史上もっとも膨大に送りつけあってる、暇で孤独恐怖症の人間なのだ。誰かとつながっていなければ、不安でしかたなくなる生きもの。
それは大人も子供も関係ないんだ。もっともその大切なメールの九割は、まるで意味の無い空メールと変わらないんだけどな。
考えてみれば、おれがガキのころはそんな爆弾、誰ももっていなかった。まぁ、それだけのテクノロジーもインフラもなかったからね。
携帯電話ってこの十年ばかりのうちに生まれたたくさんの新語とよく似てるよな。格差社会とか勝ち組負け組、仮面うつ病とかワーキングプア、自己チューとか学級崩壊なんか。
どれも悲しくなるくらいこの世界を射貫いていて、人をつなげるよりも人を差別してばらばらにしていく働きしかないのだ。
今回の話は、冬を迎えた池袋で起きた悲しい恋の終わりの物語。とはいっても、おれの失恋話じゃないよ。そんなことがあったとしても、おれは自分のことは絶対に話したりしないし。
ブログなんかやってるやつが多いけど、ああいう垂れ流しはどういう神経なんだろうか。
電子メディアで誰かとつながるなんていうのは、池袋の街がユートピアだっていうのと同じで、まったくの勘違い。
あんたもああいう情報の「夢の島」なんて、信じちゃいけないよ。
あそこに積んであるのは未来じゃなくて、使い古してぼろぼろになった情報の断片にすぎない。まあ、いつものおれの話しみたいなものだ。
ーブラックボックスの蜘蛛ー
ポケットにはいる秘密の小箱は、いまやおれたちの命綱だ。たまに忘れて外出したりすると、丸裸になったような心細さになるのだから、心底いかれてる。
薄っぺらなマシンのなかには、オフィシャル&プライベートな生活情報がぎっしり。そいつはいつ破裂するかわからない、致命的な危険物。
もちろんそこには情報だけでなく、あんたの大好きなアイドルの音楽ファイルや、ロシアの文豪の小説だってダウンロードしてあるかもしれない。写真だって何百枚もためてあることだろう。家族や友人だけでなく、通りすがりの芸能人や可愛い子猫の写真なんかもね。メールにいたってはもう数えきれないくらい。どのフォルダーもぱんぱんにふくれている。
現代の日本人は短い便りを歴史上もっとも膨大に送りつけあってる、暇で孤独恐怖症の人間なのだ。誰かとつながっていなければ、不安でしかたなくなる生きもの。
それは大人も子供も関係ないんだ。もっともその大切なメールの九割は、まるで意味の無い空メールと変わらないんだけどな。
考えてみれば、おれがガキのころはそんな爆弾、誰ももっていなかった。まぁ、それだけのテクノロジーもインフラもなかったからね。
携帯電話ってこの十年ばかりのうちに生まれたたくさんの新語とよく似てるよな。格差社会とか勝ち組負け組、仮面うつ病とかワーキングプア、自己チューとか学級崩壊なんか。
どれも悲しくなるくらいこの世界を射貫いていて、人をつなげるよりも人を差別してばらばらにしていく働きしかないのだ。
今回の話は、冬を迎えた池袋で起きた悲しい恋の終わりの物語。とはいっても、おれの失恋話じゃないよ。そんなことがあったとしても、おれは自分のことは絶対に話したりしないし。
ブログなんかやってるやつが多いけど、ああいう垂れ流しはどういう神経なんだろうか。
電子メディアで誰かとつながるなんていうのは、池袋の街がユートピアだっていうのと同じで、まったくの勘違い。
あんたもああいう情報の「夢の島」なんて、信じちゃいけないよ。
あそこに積んであるのは未来じゃなくて、使い古してぼろぼろになった情報の断片にすぎない。まあ、いつものおれの話しみたいなものだ。
ーブラックボックスの蜘蛛ー