ー特別編ー非正規ワーカーズ
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「なんだモエ、いきなり。そちらの人はどなたかな」
テレビで見た広い額とヒゲだった。目元は親子でよく似ている。
「パパ、まだわたしが編んだセーター着てるんだ。明日から会社のほうが大騒ぎになるから、ちょっと話をしにきたの。こちらは今回の事件を解決してくれた小鳥遊悠さん」
モエはそれから池袋支店の組合メンバー襲撃事件を手短に説明した。倉敷の名前をきいて、亀井の顔色が変わった。
「あいつはそんなことをしでかしてたのか。しょうがない男だ。だが、組合などしょせん遊びだ。おまえもそろそろわたしのところにもどって、経営の勉強しなさい。」
どうやらひとり娘のようだった。モエはひどくやさしい声でいった。
「パパがお金に復讐したい気持ちはわかるわ。なくなったママに十分な医療を受けさせてあげられなかったんだものね。でも、今のパパは明らかにやりすぎていると思う。こねままではママが名付け親の会社がダメになってしまうよ」
ベターデイズという皮肉なネーミングは、本来は希望に満ちた名前だったのか。おれがあっけにとられていると、亀井社長がいった。
「なにをいっているんだ。ここまで成長したのは、私の経営手腕のおかげだ。人材派遣業はまだまだのびる。海外との競争はさらに厳しくなるだろう。どの会社もコストを抑えたくて仕方ないんだからな。倉敷の事件は、あの男がひとりでやったことだろう。わたしはしらんし、そんなことは大勢に影響はない。」
モエは負けていなかった。
「わたしは組合活動をすることで、外部からベターデイズの経営をチェックしているつもり。もうパパの会社はあちこちで問題を起こしているでしょう。それは自分でもよくわかってるはずよ」
亀井社長は黙りこんでしまった。モエはたたみかけた。
「わたしはベターデイズの株主のひとりとして、バランスシートをきちんと読んでる。無理な成長路線と多角化で負債が雪だるまだし、資金繰りだっていつショートしてもおかしくないでしょう。パパが個人保証をつけて銀行から借り入れたお金も数十億じゃきかないはずよ」
亀井社長がくたびれた顔をした。ソファにどさりと腰を落として、頭のうしろで両手を組んだ。
「だから、おまえはこっちで経営に加わればいいんだ。うちの専務たちより、ずっと能力はあるんだからな」
モエは寂しそうに笑った。
「もうなにをいっても平行線ね。今夜は、小鳥遊さんと警告にきたの。うちのユニオンはベターデイズの派遣違法反を証明する内部資料を手にいれた。もうすぐ関係省庁とマスコミに届くことになっています」
亀井社長はソファから飛び上がった。おれのほうをむいていう。
「モエのいってることはほんとうなのか」
しかたなくおれはいった。本来なら、あまり親子関係には立ち入りたくないのだが。
テレビで見た広い額とヒゲだった。目元は親子でよく似ている。
「パパ、まだわたしが編んだセーター着てるんだ。明日から会社のほうが大騒ぎになるから、ちょっと話をしにきたの。こちらは今回の事件を解決してくれた小鳥遊悠さん」
モエはそれから池袋支店の組合メンバー襲撃事件を手短に説明した。倉敷の名前をきいて、亀井の顔色が変わった。
「あいつはそんなことをしでかしてたのか。しょうがない男だ。だが、組合などしょせん遊びだ。おまえもそろそろわたしのところにもどって、経営の勉強しなさい。」
どうやらひとり娘のようだった。モエはひどくやさしい声でいった。
「パパがお金に復讐したい気持ちはわかるわ。なくなったママに十分な医療を受けさせてあげられなかったんだものね。でも、今のパパは明らかにやりすぎていると思う。こねままではママが名付け親の会社がダメになってしまうよ」
ベターデイズという皮肉なネーミングは、本来は希望に満ちた名前だったのか。おれがあっけにとられていると、亀井社長がいった。
「なにをいっているんだ。ここまで成長したのは、私の経営手腕のおかげだ。人材派遣業はまだまだのびる。海外との競争はさらに厳しくなるだろう。どの会社もコストを抑えたくて仕方ないんだからな。倉敷の事件は、あの男がひとりでやったことだろう。わたしはしらんし、そんなことは大勢に影響はない。」
モエは負けていなかった。
「わたしは組合活動をすることで、外部からベターデイズの経営をチェックしているつもり。もうパパの会社はあちこちで問題を起こしているでしょう。それは自分でもよくわかってるはずよ」
亀井社長は黙りこんでしまった。モエはたたみかけた。
「わたしはベターデイズの株主のひとりとして、バランスシートをきちんと読んでる。無理な成長路線と多角化で負債が雪だるまだし、資金繰りだっていつショートしてもおかしくないでしょう。パパが個人保証をつけて銀行から借り入れたお金も数十億じゃきかないはずよ」
亀井社長がくたびれた顔をした。ソファにどさりと腰を落として、頭のうしろで両手を組んだ。
「だから、おまえはこっちで経営に加わればいいんだ。うちの専務たちより、ずっと能力はあるんだからな」
モエは寂しそうに笑った。
「もうなにをいっても平行線ね。今夜は、小鳥遊さんと警告にきたの。うちのユニオンはベターデイズの派遣違法反を証明する内部資料を手にいれた。もうすぐ関係省庁とマスコミに届くことになっています」
亀井社長はソファから飛び上がった。おれのほうをむいていう。
「モエのいってることはほんとうなのか」
しかたなくおれはいった。本来なら、あまり親子関係には立ち入りたくないのだが。