ー特別編ー非正規ワーカーズ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
おれとモエが谷岡店長からディスクを受け取ったのは、夜の十時すぎだった。これで今回の事件は解決に向かうだろう。真冬の夜で空気はひどく冷たかったけれど、おれの胸のなかは爽やかだった。
「ふう、身体はきつかったけど、これで全部終わりだな。おれはもう二度とネットカフェにはいかないと思う。リクライニングチェアにはこりごりだ」
モエはおれの冗談には笑わなかった。
「悠さん、これからちょっとつきあってほしい場所があるんだけど。」
夜のこの時間に若い女がつきあえという。やはりわかる女にはおれの魅力はちゃんと伝わるのだと思った。
「もうおしまいだから、別にいいけど」
モエは西口五差路の角でタクシーをとめた。先にのりこむと、運転手に告げた。
「六本木ヒルズ」
おれが一度だけ遊びにいって、迷子になったひどくすかしたショッピングセンターだった。当然、住人にはダチはいない。
「ヒルズになんの用があるの」
「これから起きることを話しておきたい人がいる。」
おれはもういっぱいいっぱいだった。考えるのが面倒になり、タクシーの後部座席に背中を預けた。
タクシーはけやし坂の途中で止まった。ガラスのエレベーターをあがると、すぐ近くにレジデンス棟のガラス張りのエントランスが見えた。モエは慣れた手つきで部屋番号を入力した。CCDカメラにむかっていう。
「わたし、モエ」
ガラスの扉が静かに開いた。おれは美術館の展示室のようなエントランスをつま先で歩いた。どうも大理石張りの床に傷をつけてしまいそうね。エレベーターの扉が開いたのは三十六階だった。モエは迷わずに内廊下をすすんでいく。えらく高級なホテルのようだ。
ドアは両開きだった。プレートにはKAMEIのローマ字。おれは呆然としていた。そこはベターデイズの社長、亀井繋治の住まいなのだ。モエは右手をあげて、インターホンを鳴らすまえに、おれを振り向いた。
「うちのパパなの」
おれは衝撃でなにもいえなかった。電子音がなると、ドアが開いた。むこうにいるのはほんものの中年のメイドだ。
「お嬢さま、お帰りなさいませ。そちらはお友達のかたですか」
「ただいま、おけいさん。パパ、いるかな」
「はい、お風呂あがりでございますよ」
モエはメイドと話ながら、廊下を奥にすすんでいく。部屋のあちこちに亀のおきものが見えた。おれはモエの背中にいった。
「もしかしてネットカフェのタートルズって、モエのおやじさんの会社なのか」
「うん、そうみたい」
リビングの広さは五十畳ほどあるだろうか、バドミントンができそうな広さだ。パジャマのうえに肘の抜けた手編みのセーターを着こんだ男が、窓を背にしてたっていた。
六本木の夜景は確かに池袋よりも、ずっと美しいようだ。
「ふう、身体はきつかったけど、これで全部終わりだな。おれはもう二度とネットカフェにはいかないと思う。リクライニングチェアにはこりごりだ」
モエはおれの冗談には笑わなかった。
「悠さん、これからちょっとつきあってほしい場所があるんだけど。」
夜のこの時間に若い女がつきあえという。やはりわかる女にはおれの魅力はちゃんと伝わるのだと思った。
「もうおしまいだから、別にいいけど」
モエは西口五差路の角でタクシーをとめた。先にのりこむと、運転手に告げた。
「六本木ヒルズ」
おれが一度だけ遊びにいって、迷子になったひどくすかしたショッピングセンターだった。当然、住人にはダチはいない。
「ヒルズになんの用があるの」
「これから起きることを話しておきたい人がいる。」
おれはもういっぱいいっぱいだった。考えるのが面倒になり、タクシーの後部座席に背中を預けた。
タクシーはけやし坂の途中で止まった。ガラスのエレベーターをあがると、すぐ近くにレジデンス棟のガラス張りのエントランスが見えた。モエは慣れた手つきで部屋番号を入力した。CCDカメラにむかっていう。
「わたし、モエ」
ガラスの扉が静かに開いた。おれは美術館の展示室のようなエントランスをつま先で歩いた。どうも大理石張りの床に傷をつけてしまいそうね。エレベーターの扉が開いたのは三十六階だった。モエは迷わずに内廊下をすすんでいく。えらく高級なホテルのようだ。
ドアは両開きだった。プレートにはKAMEIのローマ字。おれは呆然としていた。そこはベターデイズの社長、亀井繋治の住まいなのだ。モエは右手をあげて、インターホンを鳴らすまえに、おれを振り向いた。
「うちのパパなの」
おれは衝撃でなにもいえなかった。電子音がなると、ドアが開いた。むこうにいるのはほんものの中年のメイドだ。
「お嬢さま、お帰りなさいませ。そちらはお友達のかたですか」
「ただいま、おけいさん。パパ、いるかな」
「はい、お風呂あがりでございますよ」
モエはメイドと話ながら、廊下を奥にすすんでいく。部屋のあちこちに亀のおきものが見えた。おれはモエの背中にいった。
「もしかしてネットカフェのタートルズって、モエのおやじさんの会社なのか」
「うん、そうみたい」
リビングの広さは五十畳ほどあるだろうか、バドミントンができそうな広さだ。パジャマのうえに肘の抜けた手編みのセーターを着こんだ男が、窓を背にしてたっていた。
六本木の夜景は確かに池袋よりも、ずっと美しいようだ。