ー特別編ー非正規ワーカーズ
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あきらめない。あきらめたら、そこで終わりだ。
泣かない。泣いたら、人に同情されるだけだ。泣きたくなったら、笑う。
うらまない。人と自分をくらべない。どんなにちいさくてもいい。自分の幸福の形を探そう。
切れない。怒りを人に向けてはいけない。今のぼくの生活は、すべてぼくに責任がある。
それはシステムにつかい潰されていく若者の叫びだった。無限の自己責任を負わされ、安く便利に入れ換えられる働き手のひそかな声だった。この言葉に動かされないようなら、おれはあきらめようと思っていた。内部告発はボランティアだ。無理矢理やらせるようなことはできない。
「おれはベターデイズがもうすこしましになってくれたら、うれしいんだ。なにせ派遣業最大手で、年商五千億もあるんだろ。業界に与えるインパクトだってでかいはずだ。それと同時に、サトシみたいな日雇い派遣の仕事が、もうすこし人間的になったらすばらしいとも思う。人間が機械の部品のようにではなく、人間らしく働けたら、やっぱりいいもんな。おれは頭よくないからグローバル化とか価格競争力とかよくわかんない。でも、今のまま誰も幸福になれない働きかたは絶対によくないよ」
谷岡店長の目に涙が光っていた。ページをめくり、つぎつぎとサトシの言葉を読んでいく。最後にいった。
「小鳥遊くん、ぼくになにをさせたいんだ。」
おれはモエと目をみあわせた。うなずきあう。
「ベターデイズは派遣法で禁止されている港湾や建設現場への派遣をしていますね。二重派遣もしているはずです。谷岡店長が内側から、会社をよくしてくれませんか。内部告発してください。なんなら谷岡さんの存在は伏せてめらってかまわない。でも、極秘の資料をマスコミと関係省庁に送ってほしいんです」
モエがメイド服の頭をさげた。
「お嬢さん、やめてください。ほんとうにそれで、ベターデイズはよくなるんですか」
ユニオンの代表はいった。
「しばらくのあいだはたいへんな騒ぎになると思います。でも、そのあとのことは誰にもわかりません。会社をよくするのは谷岡さんのような人のひとりひとりの努力だと思います。」
谷岡はしっかりとうなずいた。
「わかりました、お嬢さんがそういうなら、きっとそれがただしいんでしょう。これから会社にもどって、資料のコピーを一枚CD-Rに焼きます。そのままおわたししますから、ご自由につかってください」
モエがお嬢さん?
それは確かにおれに似てちょっと上品な顔をしているけど、なぜ、このメイド服がお嬢さんなんだろうか。おれはそれから二時間後、今回の事件でもっともおおきな驚きに出会うことになる。
泣かない。泣いたら、人に同情されるだけだ。泣きたくなったら、笑う。
うらまない。人と自分をくらべない。どんなにちいさくてもいい。自分の幸福の形を探そう。
切れない。怒りを人に向けてはいけない。今のぼくの生活は、すべてぼくに責任がある。
それはシステムにつかい潰されていく若者の叫びだった。無限の自己責任を負わされ、安く便利に入れ換えられる働き手のひそかな声だった。この言葉に動かされないようなら、おれはあきらめようと思っていた。内部告発はボランティアだ。無理矢理やらせるようなことはできない。
「おれはベターデイズがもうすこしましになってくれたら、うれしいんだ。なにせ派遣業最大手で、年商五千億もあるんだろ。業界に与えるインパクトだってでかいはずだ。それと同時に、サトシみたいな日雇い派遣の仕事が、もうすこし人間的になったらすばらしいとも思う。人間が機械の部品のようにではなく、人間らしく働けたら、やっぱりいいもんな。おれは頭よくないからグローバル化とか価格競争力とかよくわかんない。でも、今のまま誰も幸福になれない働きかたは絶対によくないよ」
谷岡店長の目に涙が光っていた。ページをめくり、つぎつぎとサトシの言葉を読んでいく。最後にいった。
「小鳥遊くん、ぼくになにをさせたいんだ。」
おれはモエと目をみあわせた。うなずきあう。
「ベターデイズは派遣法で禁止されている港湾や建設現場への派遣をしていますね。二重派遣もしているはずです。谷岡店長が内側から、会社をよくしてくれませんか。内部告発してください。なんなら谷岡さんの存在は伏せてめらってかまわない。でも、極秘の資料をマスコミと関係省庁に送ってほしいんです」
モエがメイド服の頭をさげた。
「お嬢さん、やめてください。ほんとうにそれで、ベターデイズはよくなるんですか」
ユニオンの代表はいった。
「しばらくのあいだはたいへんな騒ぎになると思います。でも、そのあとのことは誰にもわかりません。会社をよくするのは谷岡さんのような人のひとりひとりの努力だと思います。」
谷岡はしっかりとうなずいた。
「わかりました、お嬢さんがそういうなら、きっとそれがただしいんでしょう。これから会社にもどって、資料のコピーを一枚CD-Rに焼きます。そのままおわたししますから、ご自由につかってください」
モエがお嬢さん?
それは確かにおれに似てちょっと上品な顔をしているけど、なぜ、このメイド服がお嬢さんなんだろうか。おれはそれから二時間後、今回の事件でもっともおおきな驚きに出会うことになる。