ー特別編ー非正規ワーカーズ
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おるたちはいつも押すボタンを間違えてしまう。だから、求める反応がきちんと得られないのだ。ブロック長の倉敷をつついたら、すぐに結果が出たのだから、ある意味世のかなというのはわかりやすいものだ。
ブロック長と建設的な意見を交換した翌日のことだった。おれはショルダーバッグをさげて、池袋大橋の近くの狭い路地を歩いていた。時刻はもうすぐ六時で、冬の空は暗くなっている。。街灯が途切れた暗がりで、おれの横手から冷たい風が吹いてきたように感じた。
「悠さん!」
ゼブラの声だった。おれはわけもわからずに腰を落とした。襲撃者は曲がり角でいきなりなぐりつけてきたのだ。目だし帽をかぶった背の高い男。
おれは腰を沈めたまま、やつの腹に頭突きをくらわせた。男が腹を押さえたところで、見えない角度からとんでもない速度のパンチがやってきた。男のあごの先をかすめて、指をはじくような鋭い音を残す。
目だし帽のガキは糸の切れた人形のようにすとんと、アスファルトのうえに正座した。すでに意識はない。こんなことのできるのは、池袋の街にひとりしかいなかった。おれは振り向いていった。
「なんだ、タカシもボディガードにきたのか。よほどこの街のキングもひまなんだな」
タカシは鼻で笑っていった。
「誓ってもいいが、今日が初めての出勤だ。おれにはちょうどいいタイミングでトラブルにぶちあたる運があるんだな。いい肩慣らしになった」
目だし帽のガキがふたりに、フルフェイスのヘルメットがひとり。Sウルフの精鋭に地面に転がされ、腕をうしろで縛られている。例のプラスチックのワンタッチ拘束コードだ。マスクをとって顔を見ると、そのうちのひとりは豊洲の倉庫でいっしょになったフリーターのひとりだった。おれはやつらの財布を探った。みな同じベターデイズの登録カードをもっている。
おれはさも慣れているという調子でいった。
「どうする、タカシ。おれたちの顔をこいつらに見られてしまった。どこか、山のなかに埋めてくるか」
タカシは役者だ。携帯を抜いて、手首のスイングでぱちりとフラップを開いた。
「今、車を呼ぶ。しかたないな、ついてないやつはとことんついてない」
まだ意識のあるふたりが目に見えて身体を震わせ始めた。
「すみません。お願いですから、助けてください」
そういった小太りのガキの横にしゃがみこんだ。
「誰に頼まれた」
やつはよだれを垂らしながらいった。
「ほんとに助けてくれるんですか」
タカシの声はできたてのアイスキューブより鋭い。
「おまえたちが真実を話せばな。おれたちはカードをもらった。嘘をいえばあとで追っ手をかける。池袋のSウルフはしってるな」
悪い噂ならこの街で星の数ほど流れていることだろう。おれはいった。
「誰に頼まれた」
「ブロック長の倉敷さん」
あの教官顔が浮かんだ。抵抗するものは力でたたき潰す。あの男ならやりかねない。
ブロック長と建設的な意見を交換した翌日のことだった。おれはショルダーバッグをさげて、池袋大橋の近くの狭い路地を歩いていた。時刻はもうすぐ六時で、冬の空は暗くなっている。。街灯が途切れた暗がりで、おれの横手から冷たい風が吹いてきたように感じた。
「悠さん!」
ゼブラの声だった。おれはわけもわからずに腰を落とした。襲撃者は曲がり角でいきなりなぐりつけてきたのだ。目だし帽をかぶった背の高い男。
おれは腰を沈めたまま、やつの腹に頭突きをくらわせた。男が腹を押さえたところで、見えない角度からとんでもない速度のパンチがやってきた。男のあごの先をかすめて、指をはじくような鋭い音を残す。
目だし帽のガキは糸の切れた人形のようにすとんと、アスファルトのうえに正座した。すでに意識はない。こんなことのできるのは、池袋の街にひとりしかいなかった。おれは振り向いていった。
「なんだ、タカシもボディガードにきたのか。よほどこの街のキングもひまなんだな」
タカシは鼻で笑っていった。
「誓ってもいいが、今日が初めての出勤だ。おれにはちょうどいいタイミングでトラブルにぶちあたる運があるんだな。いい肩慣らしになった」
目だし帽のガキがふたりに、フルフェイスのヘルメットがひとり。Sウルフの精鋭に地面に転がされ、腕をうしろで縛られている。例のプラスチックのワンタッチ拘束コードだ。マスクをとって顔を見ると、そのうちのひとりは豊洲の倉庫でいっしょになったフリーターのひとりだった。おれはやつらの財布を探った。みな同じベターデイズの登録カードをもっている。
おれはさも慣れているという調子でいった。
「どうする、タカシ。おれたちの顔をこいつらに見られてしまった。どこか、山のなかに埋めてくるか」
タカシは役者だ。携帯を抜いて、手首のスイングでぱちりとフラップを開いた。
「今、車を呼ぶ。しかたないな、ついてないやつはとことんついてない」
まだ意識のあるふたりが目に見えて身体を震わせ始めた。
「すみません。お願いですから、助けてください」
そういった小太りのガキの横にしゃがみこんだ。
「誰に頼まれた」
やつはよだれを垂らしながらいった。
「ほんとに助けてくれるんですか」
タカシの声はできたてのアイスキューブより鋭い。
「おまえたちが真実を話せばな。おれたちはカードをもらった。嘘をいえばあとで追っ手をかける。池袋のSウルフはしってるな」
悪い噂ならこの街で星の数ほど流れていることだろう。おれはいった。
「誰に頼まれた」
「ブロック長の倉敷さん」
あの教官顔が浮かんだ。抵抗するものは力でたたき潰す。あの男ならやりかねない。