ー特別編ー非正規ワーカーズ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
東京フリーターズユニオンのピンクのカードを出してみせる。
「おれがどんな組合にはいろうが勝手だろ。あんたには関係ない。」
第一このお偉いさんのことを、おれはまったくしらないのだ。ベターデイズの社員たちもびびってしまって、誰も紹介してくれないしな。
「組合なんかにはいるとロクなことがないぞ。そんなものやめて、一生懸命働け」
「そうかな。インフォメ費の話しじゃあ、あんたたちよりユニオンのほうが、ずっと信頼できそうだけど。あの金はどういう理由で、勝手に天引きしてるんだよ。なんにつかってるんだ」
おれのうしろにできた行列から声が飛んだ。
「そうだ、なんにつかってるんだ」
おれはガキの顔を見た。別にユニオンのメンバーではなさそうだったが、不満はたまっているのだろう。ごま塩の坊主刈りは顔を赤くしていった。
「労災の保険とかあるだろう。みんな、おまえたちのためにつかっるんだよ」
おれは八重歯を見えて笑い、いってやった。
「このまえ豊洲の倉庫で作業中の事故を見た。足を骨折したやつは電話で指示されていたぞ。自分の金で勝手に病院にいけってな。救急車を呼ぶと労災になって面倒だからだってさ。なにが保険だよ。そんなもん口先だけだろうが」
何人かのフリーターが、おれの背中に拍手した。
「やかましい。ビジネスの世界にはちゃんと大人の理屈ってやつがあるんだ。おまえたちみたいな自分の仕事に責任をとらないやつなに、なにがわかる」
男は会議室からでていった。これだけ騒げば十分だろう。給料袋をもって廊下に出ると、谷岡店長がにやりと笑いかけてきた。
「小鳥遊きんはすごいな」
おれは肩をすくめた。こういうときしかほめらるないのは、あまりうれしくない。
「あのひとは倉敷さんといって、東京北西部のブロック長だ。ぼくもあの声でいつも怒鳴られてるよ」
「まあ、高給取りだから、しかたないよな。残業代だけで、住宅ローンくらい払えるんじゃないか」
年に千二百時間なら、残業の割り増し手当てを考えれば、それもあたりまえだった。谷岡は顔を暗くした。
「その話しはやめてくれ。店長は幹部ということで、残業代はつかないんだ。平のころと年収でいったら、ほとんど変わらない」
おれは開いた口がふさがらなかった。ベターデイズはフリーターにだけ厳しいのではなかった。自分のところの社員にも同じように厳しいのだ。
「そうか、わかったよ。気の毒にな」
このいつも疲れた店長もフリーターとは別な形の罠にはまっているのだった。
「おれがどんな組合にはいろうが勝手だろ。あんたには関係ない。」
第一このお偉いさんのことを、おれはまったくしらないのだ。ベターデイズの社員たちもびびってしまって、誰も紹介してくれないしな。
「組合なんかにはいるとロクなことがないぞ。そんなものやめて、一生懸命働け」
「そうかな。インフォメ費の話しじゃあ、あんたたちよりユニオンのほうが、ずっと信頼できそうだけど。あの金はどういう理由で、勝手に天引きしてるんだよ。なんにつかってるんだ」
おれのうしろにできた行列から声が飛んだ。
「そうだ、なんにつかってるんだ」
おれはガキの顔を見た。別にユニオンのメンバーではなさそうだったが、不満はたまっているのだろう。ごま塩の坊主刈りは顔を赤くしていった。
「労災の保険とかあるだろう。みんな、おまえたちのためにつかっるんだよ」
おれは八重歯を見えて笑い、いってやった。
「このまえ豊洲の倉庫で作業中の事故を見た。足を骨折したやつは電話で指示されていたぞ。自分の金で勝手に病院にいけってな。救急車を呼ぶと労災になって面倒だからだってさ。なにが保険だよ。そんなもん口先だけだろうが」
何人かのフリーターが、おれの背中に拍手した。
「やかましい。ビジネスの世界にはちゃんと大人の理屈ってやつがあるんだ。おまえたちみたいな自分の仕事に責任をとらないやつなに、なにがわかる」
男は会議室からでていった。これだけ騒げば十分だろう。給料袋をもって廊下に出ると、谷岡店長がにやりと笑いかけてきた。
「小鳥遊きんはすごいな」
おれは肩をすくめた。こういうときしかほめらるないのは、あまりうれしくない。
「あのひとは倉敷さんといって、東京北西部のブロック長だ。ぼくもあの声でいつも怒鳴られてるよ」
「まあ、高給取りだから、しかたないよな。残業代だけで、住宅ローンくらい払えるんじゃないか」
年に千二百時間なら、残業の割り増し手当てを考えれば、それもあたりまえだった。谷岡は顔を暗くした。
「その話しはやめてくれ。店長は幹部ということで、残業代はつかないんだ。平のころと年収でいったら、ほとんど変わらない」
おれは開いた口がふさがらなかった。ベターデイズはフリーターにだけ厳しいのではなかった。自分のところの社員にも同じように厳しいのだ。
「そうか、わかったよ。気の毒にな」
このいつも疲れた店長もフリーターとは別な形の罠にはまっているのだった。