ー特別編ー非正規ワーカーズ
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翌日の仕事は、なんとゴミ屋敷の清掃だった。現場は練馬の住宅街のどまんなか。ベターデイズから派遣されたのは男四人で、ニトントラック六台分のゴミを敷地のなかから運び出した。派遣の仕事をして驚いたのは、この世界には実にさまざまな仕事があるってこと。
二日目は事故もなく、あのダクトの粉塵のゆうな身体に有害な悪影響もなかった。全身の筋肉痛はなかなかだったけど、そいつのほうは若いからだいじょうぶ。
二日目が終わって、支店に給料をとりにいった。登録カードを見せて、サインをするだけだ。税引き後の手取り一万三千円とすこしを、これほど大切に感じたことはない。帰り際、エレベーターホールで谷岡といっしょになった。またも疲れた土気色の顔。やつはおれに気づくと小声でいった。
「どうだい、仲直りして、実家にはもどれそうか」
適当にごまかしておく。
「まあ、なんとか。それより店長って、どうしていつもそんなに疲れた感じなんですか?」
谷岡はくにゃりと崩れるように笑った。
「ときどきそっちの仕事がうらやましくなるよ。正社員は果てしなく残業しなくちゃならないから。ぼくの残業は去年は千二百時間を超えたんだ。」
あきれてしまった。過労死の認定ラインは年に九百時間だと、以前にどこかで読んだことがある。谷岡はそれよりもはるかに長時間の重労働に耐えているのだ。
「店長、おれたちの国って、どうなっちまったんですかね。一方ではおれたちみたいな働いていも働いていも自分の部屋ももてないフリーターがいて、正社員になることにあこがれている。でも、その正社員が店長みたいに過労死ぎりぎりなんてことになってる。それじゃ、どこにも逃げ場がないじゃないですか。その中間くらいにうまい働きかたってないんですか」
おれは前日の夜から、よりよい働き方ばかり考えていたのだ。社会改良家、悠。谷岡店長は胸をつかれたようだった。疲れ切った目にかすかに光がさした。
「こんな無茶はいつまでも続かない。いつか、みんなで考えなくてはいけないときがくるんじゃないかな。でも、それまでのあいだ、ぼくも小鳥遊くんもたべていかなければならないかな。おたがいの場所でなんとか身を守っていくしかない」
おれはベターデイズの店長にだんだんと好意に似たものを感じ始めていた。この男を罠にかけなければいけないのだ。なんだか気の滅入る仕事。
その夜もまたベターデイズに電話をかけて、ユニオンとインフォメ費の話を延々と続けた。今度は谷岡店長ではなく、平社員相手。
おれの電話はたらいまわしにされたけれど、十分にうるさくて、生意気な登録メンバーという噂はたったことだろう。
二日目は事故もなく、あのダクトの粉塵のゆうな身体に有害な悪影響もなかった。全身の筋肉痛はなかなかだったけど、そいつのほうは若いからだいじょうぶ。
二日目が終わって、支店に給料をとりにいった。登録カードを見せて、サインをするだけだ。税引き後の手取り一万三千円とすこしを、これほど大切に感じたことはない。帰り際、エレベーターホールで谷岡といっしょになった。またも疲れた土気色の顔。やつはおれに気づくと小声でいった。
「どうだい、仲直りして、実家にはもどれそうか」
適当にごまかしておく。
「まあ、なんとか。それより店長って、どうしていつもそんなに疲れた感じなんですか?」
谷岡はくにゃりと崩れるように笑った。
「ときどきそっちの仕事がうらやましくなるよ。正社員は果てしなく残業しなくちゃならないから。ぼくの残業は去年は千二百時間を超えたんだ。」
あきれてしまった。過労死の認定ラインは年に九百時間だと、以前にどこかで読んだことがある。谷岡はそれよりもはるかに長時間の重労働に耐えているのだ。
「店長、おれたちの国って、どうなっちまったんですかね。一方ではおれたちみたいな働いていも働いていも自分の部屋ももてないフリーターがいて、正社員になることにあこがれている。でも、その正社員が店長みたいに過労死ぎりぎりなんてことになってる。それじゃ、どこにも逃げ場がないじゃないですか。その中間くらいにうまい働きかたってないんですか」
おれは前日の夜から、よりよい働き方ばかり考えていたのだ。社会改良家、悠。谷岡店長は胸をつかれたようだった。疲れ切った目にかすかに光がさした。
「こんな無茶はいつまでも続かない。いつか、みんなで考えなくてはいけないときがくるんじゃないかな。でも、それまでのあいだ、ぼくも小鳥遊くんもたべていかなければならないかな。おたがいの場所でなんとか身を守っていくしかない」
おれはベターデイズの店長にだんだんと好意に似たものを感じ始めていた。この男を罠にかけなければいけないのだ。なんだか気の滅入る仕事。
その夜もまたベターデイズに電話をかけて、ユニオンとインフォメ費の話を延々と続けた。今度は谷岡店長ではなく、平社員相手。
おれの電話はたらいまわしにされたけれど、十分にうるさくて、生意気な登録メンバーという噂はたったことだろう。