ー特別編ー非正規ワーカーズ
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そのままメールを閉じて、モエの番号を選んだ。メイド服のユニオン代表の声はタカシに負けないくらい冷たかった。
「ベターデイズに登録をすませてきた。明日の仕事も決まったよ。ユニオンのカード、ありがとな」
おれは倉庫の仕事について簡単に報告した。すると、モエの様子が変わった。なにか熱くなっているようだ。
『その豊洲の倉庫のことなんだけど、どれくらい港に近いのかな。悪いけど、悠さん。携帯のカメラでいいから、現場の写真を撮ってきてくれない。作業の様子がわかるものだとなおいいんだけど』
「どうしてだ」
さすがにユニオン代表だった。モエはあっさりという。
『今の労働者派遣法では、港湾と建設の現場への派遣は禁止されてるの。その豊洲の倉庫の仕事が港湾労働だったら、ベターデイズの派遣違法反を証明できる。やっぱり身体ががっしりしてたからかなあ』
なにをいってるんだろうか。まるでわからない。
『登録のときにむこうも適性を見ているの。ルックスがよければ、対人のサービス業。身体が丈夫そうなら、力仕事。パソコンなんかが得意なら、入力の仕事。』
「なんだよ。おれのとり柄は力だけかよ」
傷ついた。これはやはりベターデイズには厳しいおしおきをしてやらなくちゃ気がすまない。おれはユニオン代表との電話を切ると、腹を立てながら家にもどった。
冬の朝六時は、夜明け前だった。真っ暗ではないけれど、朝焼けも始まっていない青い時間である。池袋のマルイから芸術劇場にかけて、たくさんのガキが白い息を吐いてたむろしていた。
劇場通りにはミニバンとマイクロバスがびっしりとならんでいる。おれの住んでる街でこんな景色を見たのは、生まれて初めてだった。池袋駅の西口は日雇い派遣の有名な集合地点だったのだ。
おれはしばらく立っていたが、誰がどの派遣会社の、どんな仕事なのかわからなかった。すると作業ズボンにドカジャンを着た若い男が叫びながらやってきた。
「ベターデイズ、9983豊洲の倉庫で働く人いませんかー」
「はい」
軍手をつけた右手をあげた。男はいう。
「むこうのマイクロバスにのってください。責任者の木下です」
「あの、そちらはベターデイズの人なんですか」
木下は驚いたかおをした。
「いいや、みんなと同じアルバイトだけど」
「ふーん、じゃあ現場にはベターデイズからは誰も来ないんだ」
「きみは日雇い派遣始めたばかりなんだね。現場におえらい正社員さまがくるはずないだろう。先にバスにのってくれ。残りを拾っていくから。」
おれは薄暗い西口五差路で、シートがほこりまみれのオンボロバスにのりこんだ。バスの座席には無言の十二人。囚人の護送車のなかだって、もうすこし明るい雰囲気があるんじゃないだろうか。
「ベターデイズに登録をすませてきた。明日の仕事も決まったよ。ユニオンのカード、ありがとな」
おれは倉庫の仕事について簡単に報告した。すると、モエの様子が変わった。なにか熱くなっているようだ。
『その豊洲の倉庫のことなんだけど、どれくらい港に近いのかな。悪いけど、悠さん。携帯のカメラでいいから、現場の写真を撮ってきてくれない。作業の様子がわかるものだとなおいいんだけど』
「どうしてだ」
さすがにユニオン代表だった。モエはあっさりという。
『今の労働者派遣法では、港湾と建設の現場への派遣は禁止されてるの。その豊洲の倉庫の仕事が港湾労働だったら、ベターデイズの派遣違法反を証明できる。やっぱり身体ががっしりしてたからかなあ』
なにをいってるんだろうか。まるでわからない。
『登録のときにむこうも適性を見ているの。ルックスがよければ、対人のサービス業。身体が丈夫そうなら、力仕事。パソコンなんかが得意なら、入力の仕事。』
「なんだよ。おれのとり柄は力だけかよ」
傷ついた。これはやはりベターデイズには厳しいおしおきをしてやらなくちゃ気がすまない。おれはユニオン代表との電話を切ると、腹を立てながら家にもどった。
冬の朝六時は、夜明け前だった。真っ暗ではないけれど、朝焼けも始まっていない青い時間である。池袋のマルイから芸術劇場にかけて、たくさんのガキが白い息を吐いてたむろしていた。
劇場通りにはミニバンとマイクロバスがびっしりとならんでいる。おれの住んでる街でこんな景色を見たのは、生まれて初めてだった。池袋駅の西口は日雇い派遣の有名な集合地点だったのだ。
おれはしばらく立っていたが、誰がどの派遣会社の、どんな仕事なのかわからなかった。すると作業ズボンにドカジャンを着た若い男が叫びながらやってきた。
「ベターデイズ、9983豊洲の倉庫で働く人いませんかー」
「はい」
軍手をつけた右手をあげた。男はいう。
「むこうのマイクロバスにのってください。責任者の木下です」
「あの、そちらはベターデイズの人なんですか」
木下は驚いたかおをした。
「いいや、みんなと同じアルバイトだけど」
「ふーん、じゃあ現場にはベターデイズからは誰も来ないんだ」
「きみは日雇い派遣始めたばかりなんだね。現場におえらい正社員さまがくるはずないだろう。先にバスにのってくれ。残りを拾っていくから。」
おれは薄暗い西口五差路で、シートがほこりまみれのオンボロバスにのりこんだ。バスの座席には無言の十二人。囚人の護送車のなかだって、もうすこし明るい雰囲気があるんじゃないだろうか。