ー特別編ー非正規ワーカーズ
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「スタッフ番号I28356の小鳥遊です。明日の仕事ありますか」
かちゃかちゃとキーボードをたたく音がした。
『はい、豊洲の倉庫で清掃と荷運びの仕事があります。日給七千五百円。集合朝六時、池袋西口マルイまえ。これでオーケーですか?』
びっくりするくらいスピーディで、カンタン。確かに便利な働きかたではある。
「了解しました。よろしくおねがいします」
『はい、お疲れさま』
電話を切るまでに一分とかからなかったと思う。タカシはあきれた声でいった。
「なんだかコンビニで雑誌でも買うくらいの手軽さなんだな」
「ああ」
おれの気持ちは複雑だった。働くことって、もっとこう手ごたえのあるものじゃなかっただろうか。それがこんなふうに砂のようにさらさら乾いて、労働力の売り買いだけになる。こんなことでは、そのうち命までネットで売りにだせるような気がした。
タカシが普段の氷の声にもどっていった。
「おまえには四人のガードをつける。仕事から離れたオフタイムは、なるべく街をぶらぶらして、襲われやすいようにしておけ。連絡はこまめにいれるんだぞ。悠が襲撃されてけがをしたらしゃれにならないからな。ところで、ユニオンのカードってもってるのか」
おれは財布から、ベターデイズの登録カードと今朝届いた東京フリーターズユニオンのカードを抜いた。どちらも日付は同じになっている。
「まかせておけ。一日でも働いたら、組合員になれるんだ。何日か日雇い派遣をやって、あとはやつらの足の裏に刺さった釘みたいな嫌味なガキになるさ」
タカシは横目でおれを見た。
「悠がひとを苛立たせる才能については、おれは心配していない。いつもどおりでいいんだからな。おまえのガードの責任者は、そこにいるゼブラだ」
おれはよろしくといって、手を伸ばした。サングラスをかけた小柄なガキが分厚い手でにぎり返してくる。てのひらが潰されそうだった。指の硬さでなにか格闘技をやっているのがわかった。
おっかないボディガード。
ぶらぶらと冬の歩道を歩いて、店に帰る途中だった。メールの着信音が鳴った。開いて読み始める。
作業コード9983
得意先(株)豊津倉庫
作業場所江東区豊洲
作業時間8:00~14:00
残業不明
支払い給与7500円
作業人数12名
こんな調子のメールが二十行も続いていた。あとは作業の内容や現場アルバイトの責任者の名前、集合場所なんかだ。注意事項としては、軍手とマスクをもっていくこと。ジーンズはNGなので、作業ズボンをはくこととあった。
なんだかおかしな感じである。人間同士の接触は極力なくして、仕事だけを抽出するのだ。
小鳥遊悠という一個人ではなく、統計のうえの潜在労働力の1ポイントになった気がした。
かちゃかちゃとキーボードをたたく音がした。
『はい、豊洲の倉庫で清掃と荷運びの仕事があります。日給七千五百円。集合朝六時、池袋西口マルイまえ。これでオーケーですか?』
びっくりするくらいスピーディで、カンタン。確かに便利な働きかたではある。
「了解しました。よろしくおねがいします」
『はい、お疲れさま』
電話を切るまでに一分とかからなかったと思う。タカシはあきれた声でいった。
「なんだかコンビニで雑誌でも買うくらいの手軽さなんだな」
「ああ」
おれの気持ちは複雑だった。働くことって、もっとこう手ごたえのあるものじゃなかっただろうか。それがこんなふうに砂のようにさらさら乾いて、労働力の売り買いだけになる。こんなことでは、そのうち命までネットで売りにだせるような気がした。
タカシが普段の氷の声にもどっていった。
「おまえには四人のガードをつける。仕事から離れたオフタイムは、なるべく街をぶらぶらして、襲われやすいようにしておけ。連絡はこまめにいれるんだぞ。悠が襲撃されてけがをしたらしゃれにならないからな。ところで、ユニオンのカードってもってるのか」
おれは財布から、ベターデイズの登録カードと今朝届いた東京フリーターズユニオンのカードを抜いた。どちらも日付は同じになっている。
「まかせておけ。一日でも働いたら、組合員になれるんだ。何日か日雇い派遣をやって、あとはやつらの足の裏に刺さった釘みたいな嫌味なガキになるさ」
タカシは横目でおれを見た。
「悠がひとを苛立たせる才能については、おれは心配していない。いつもどおりでいいんだからな。おまえのガードの責任者は、そこにいるゼブラだ」
おれはよろしくといって、手を伸ばした。サングラスをかけた小柄なガキが分厚い手でにぎり返してくる。てのひらが潰されそうだった。指の硬さでなにか格闘技をやっているのがわかった。
おっかないボディガード。
ぶらぶらと冬の歩道を歩いて、店に帰る途中だった。メールの着信音が鳴った。開いて読み始める。
作業コード9983
得意先(株)豊津倉庫
作業場所江東区豊洲
作業時間8:00~14:00
残業不明
支払い給与7500円
作業人数12名
こんな調子のメールが二十行も続いていた。あとは作業の内容や現場アルバイトの責任者の名前、集合場所なんかだ。注意事項としては、軍手とマスクをもっていくこと。ジーンズはNGなので、作業ズボンをはくこととあった。
なんだかおかしな感じである。人間同士の接触は極力なくして、仕事だけを抽出するのだ。
小鳥遊悠という一個人ではなく、統計のうえの潜在労働力の1ポイントになった気がした。