ー特別編ー非正規ワーカーズ
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十五分ほど待つと、気の弱そうな小柄な男が手にファイルをもってやってきた。ネクタイが曲がっているのが気になってしかたない。若いOLがノートパソコンをもってしたがっている。
「はい、では登録説明会を始めます。わたしはベターデイズ池袋支店、店長の谷岡晃市です。最初にうちの会社のビデオをみてください」
そこから恐ろしくつまらない企業PRビデオを二十分間見せられた。人材派遣業は新しいビッグビジネスで、働くかたがたに自由と豊かさと安定を保証するものです。
全産業界からも厚い支持を得ております。最後はベターデイズの右肩上がりの売り上げと経常利益のグラフが、きらきら輝く3Dで映写されておしまい。
最初から儲けだけ見せておけばよかったのに。ビデオのなかにも自家用ジェット機のタラップからおりてくる亀井繋治社長のヒゲ面が映っていた。でたがりの品のない勝ち犬。
「はい、では登録を開始します。順番にこちらにならんでください」
おいおい、なんの説明もないのかよ。おれはびっくりしていたが、やる気のない店長はファイルを広げて受付を開始した。なんというか恐ろしく抵抗感のない説明会だった。
おれの番がまわってきた。近くでよく見ると谷岡店長の顔色は最悪。ところどころコケの生えた日陰の土みたい。ちらりとおれに視線をあげるといった。
「お名前は」
「小鳥遊悠」
おれはそれから、年齢と携帯電話の番号とアドレスをきかれた。緊急時の連絡先なんかも。OLがすごいスピードで、ノートパソコンの雛形に情報を入力していく。
「住所は?決まってないようなら、別にいいんだけど」
おれは難民の振りをした。襲撃犯のことを考えると、おれの住所はしらせたくない。
「不定です。あちこちのカフェに泊まっていますから」
「じゃあ、小鳥遊さんは派遣の仕事に慣れてますね」
おれはうなずいていった。
「はい、明日からよろしくお願いします」
なんの反応もなかった。登録は五分で終了。帰りに仕事の探しかたや手順を書いた紙切れとプラスチックの登録ガードをもらった。
おれの登録番号は、I28356である。
えーと、なんかロボットにでもなった気分。
ベターデイズをでると、おれはまっすぐに西口公園にむかった。東武デパートのまえで、タカシと約束していたのだ。スモークを張ったメルセデスのRVにのりこむと、タカシは黒革のシートで脚を組んでいた。
「悠が日雇い派遣なんて、なんだかおもしろいことになってきたな」
おれはシートに腰を落ち着けると、すぐに携帯電話を抜いた。さっそく仕事の手配をしなければならない。
「ちょっと静かにしていてくれ。職探しをするから」
おれはベターデイズの番号を押した。内勤の女の声がきこえた。マニュアルどおりに伝える。
「はい、では登録説明会を始めます。わたしはベターデイズ池袋支店、店長の谷岡晃市です。最初にうちの会社のビデオをみてください」
そこから恐ろしくつまらない企業PRビデオを二十分間見せられた。人材派遣業は新しいビッグビジネスで、働くかたがたに自由と豊かさと安定を保証するものです。
全産業界からも厚い支持を得ております。最後はベターデイズの右肩上がりの売り上げと経常利益のグラフが、きらきら輝く3Dで映写されておしまい。
最初から儲けだけ見せておけばよかったのに。ビデオのなかにも自家用ジェット機のタラップからおりてくる亀井繋治社長のヒゲ面が映っていた。でたがりの品のない勝ち犬。
「はい、では登録を開始します。順番にこちらにならんでください」
おいおい、なんの説明もないのかよ。おれはびっくりしていたが、やる気のない店長はファイルを広げて受付を開始した。なんというか恐ろしく抵抗感のない説明会だった。
おれの番がまわってきた。近くでよく見ると谷岡店長の顔色は最悪。ところどころコケの生えた日陰の土みたい。ちらりとおれに視線をあげるといった。
「お名前は」
「小鳥遊悠」
おれはそれから、年齢と携帯電話の番号とアドレスをきかれた。緊急時の連絡先なんかも。OLがすごいスピードで、ノートパソコンの雛形に情報を入力していく。
「住所は?決まってないようなら、別にいいんだけど」
おれは難民の振りをした。襲撃犯のことを考えると、おれの住所はしらせたくない。
「不定です。あちこちのカフェに泊まっていますから」
「じゃあ、小鳥遊さんは派遣の仕事に慣れてますね」
おれはうなずいていった。
「はい、明日からよろしくお願いします」
なんの反応もなかった。登録は五分で終了。帰りに仕事の探しかたや手順を書いた紙切れとプラスチックの登録ガードをもらった。
おれの登録番号は、I28356である。
えーと、なんかロボットにでもなった気分。
ベターデイズをでると、おれはまっすぐに西口公園にむかった。東武デパートのまえで、タカシと約束していたのだ。スモークを張ったメルセデスのRVにのりこむと、タカシは黒革のシートで脚を組んでいた。
「悠が日雇い派遣なんて、なんだかおもしろいことになってきたな」
おれはシートに腰を落ち着けると、すぐに携帯電話を抜いた。さっそく仕事の手配をしなければならない。
「ちょっと静かにしていてくれ。職探しをするから」
おれはベターデイズの番号を押した。内勤の女の声がきこえた。マニュアルどおりに伝える。