ー特別編ー非正規ワーカーズ
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東口の焼肉屋で別れて、おれは駐車場からJEEPをだした。ガソリン代や駐車料金は、経費として請求できるんだろうか。おれはアメリカ西海岸で探偵業をやったことはないから、どうしたらいいのかわからなかった。
分厚く無骨な車をサトシのいるホームレスの自立支援施設にむけた。巣鴨のつぎは南大塚だ。おれのあつかう事件はいつもコンパクトにまとまっている。
サトシの私物がはいったダッフルバッグをもって、ドアをノックするとサトシの声が戻ってきた。
「はーい、どうぞ」
おれは両手にバッグをさげて、部屋にはいった。サトシはベッドでひざを曲げて身体を起こしている。壊されたひざ。永田のひびがはいった肋骨とどっちがいいだろうか。
「ほら、私物をもってきてやった」
「ありがとう、悠さん」
おれはバッグをベッドのわきにおいた。
木製の椅子に座っていった。
「悪気はなかったけど、外側のポケットにさしてあったノートをみちまった」
なにかいおうとしたサトシの動きがとまった。
「……そうか、あれ見たんだ。なんかはずかしいな。みっともないことたくさん書いてあったでしょう」
そこにはぎりぎりの生活に追い込まれたフリーターが自分を励ます言葉がならんでいたのだ。
あきらめない、泣かない、うらまない、切れない。今の自分の生活は、すべて自分に責任がある。
「いいや、ちょっと感動したよ。おれは……サトシみたいに真剣に生きてないから。」
サトシはふっと自分を笑ったようだった。
「ぼくなんて最低だよ。ホームレスと変わらないようなカフェ暮らしだったんだから」
「だけど、どうしておまえはそっちのほうにすべっていったんだ」
しばらく間があいた。サトシはじっと自分のひざに目を落としていた。
「そのことは、何度も考えたよ。やっぱりバリアーがなかったせいじゃないかな」
バリアー、おれはアメコミを原作にしたハリウッド製SF映画を考えた。どんなミサイルやビームもはじいてしまう念力のバリアーだ。
「誰でもひとつくらいは、自分の身を守るバリアーがあるよね。家族だったり、学歴だったり、財産だったり、頼れる友達だったり。でも、なにかの理由でそういうバリアーが全部ダメになっちゃうと、今は誰でも難民になる時代なんだと思う。」
おれのバリアーを考えた。
あの家とちいさな茶屋。
血の繋がりは無くても真桜や駒狸さんにカゲコやデコもいる。おれだけの部屋もあるし、脚を伸ばして眠ることもできる。あとは池袋の街のどこにでもいるあのガキどもも、おれのバリアーなのかもしれなかった。タカシとSウルフ。ともきに亮、摩耶、金剛、氷室さん、拳二や六花……誰ひとり金持ちはいないが、みな頼りになるやつばかりだ。
分厚く無骨な車をサトシのいるホームレスの自立支援施設にむけた。巣鴨のつぎは南大塚だ。おれのあつかう事件はいつもコンパクトにまとまっている。
サトシの私物がはいったダッフルバッグをもって、ドアをノックするとサトシの声が戻ってきた。
「はーい、どうぞ」
おれは両手にバッグをさげて、部屋にはいった。サトシはベッドでひざを曲げて身体を起こしている。壊されたひざ。永田のひびがはいった肋骨とどっちがいいだろうか。
「ほら、私物をもってきてやった」
「ありがとう、悠さん」
おれはバッグをベッドのわきにおいた。
木製の椅子に座っていった。
「悪気はなかったけど、外側のポケットにさしてあったノートをみちまった」
なにかいおうとしたサトシの動きがとまった。
「……そうか、あれ見たんだ。なんかはずかしいな。みっともないことたくさん書いてあったでしょう」
そこにはぎりぎりの生活に追い込まれたフリーターが自分を励ます言葉がならんでいたのだ。
あきらめない、泣かない、うらまない、切れない。今の自分の生活は、すべて自分に責任がある。
「いいや、ちょっと感動したよ。おれは……サトシみたいに真剣に生きてないから。」
サトシはふっと自分を笑ったようだった。
「ぼくなんて最低だよ。ホームレスと変わらないようなカフェ暮らしだったんだから」
「だけど、どうしておまえはそっちのほうにすべっていったんだ」
しばらく間があいた。サトシはじっと自分のひざに目を落としていた。
「そのことは、何度も考えたよ。やっぱりバリアーがなかったせいじゃないかな」
バリアー、おれはアメコミを原作にしたハリウッド製SF映画を考えた。どんなミサイルやビームもはじいてしまう念力のバリアーだ。
「誰でもひとつくらいは、自分の身を守るバリアーがあるよね。家族だったり、学歴だったり、財産だったり、頼れる友達だったり。でも、なにかの理由でそういうバリアーが全部ダメになっちゃうと、今は誰でも難民になる時代なんだと思う。」
おれのバリアーを考えた。
あの家とちいさな茶屋。
血の繋がりは無くても真桜や駒狸さんにカゲコやデコもいる。おれだけの部屋もあるし、脚を伸ばして眠ることもできる。あとは池袋の街のどこにでもいるあのガキどもも、おれのバリアーなのかもしれなかった。タカシとSウルフ。ともきに亮、摩耶、金剛、氷室さん、拳二や六花……誰ひとり金持ちはいないが、みな頼りになるやつばかりだ。