ー特別編ー非正規ワーカーズ
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「うちのユニオンで交通費の支給を交渉しているところ。ベターデイズはぜんぜん話をきいてくれないけどね」
「しかたなく、おれは巣鴨にもどってきた。あそこは池袋ほど警官の職務質問もやかましくないし、安くて時間をつぶせる店がたくさんある。昼すぎに駅をでて、地蔵通りにむかう路地の途中で、ガツンだ。いきなりうしろからやられた」
サトシのときとよく似ていた。問答無用で襲撃されるということは、自分たちが狙う相手が誰なのかはっきりしているのだろう。おれはつい警察官がするような質問をした。
「金はとられてないのか。あと、最近誰かにうらまれていることは?」
永田は届けられたハラミとタンを焼き網いっぱいに広げ始めた。
「俺、いつかこうやって腹一杯焼き肉をくうのが夢だったんだ」
サトシは脚を伸ばして眠る夢、永田の一皿四百五十円の焼き肉を腹一杯食べる夢。若者の夢は年々ダウンサイズしている。皮肉なものだ。薄切りのタンをトングでひっくり返しながら、永田はいった。
「うらまれることなんてないし、金もとられてないよ。財布をやられてたら、こうして焼肉をくうような食欲もなかったと思う。俺の全財産がはいってるからな」
永田は半分生のタン塩をうまそうに口に運んだ。
「襲ってきたのは、三人組だよな」
フリーターは驚いた顔をした。
「そうだ。そのうちのひとりがしつこくわき腹を蹴ってきた。」
おれはサトシにきいた男たちの格好を思い出した。
「えーっと、目だし帽がふたりに、ヘルメットがひとりだっけ」
永田はハラミとタンを交互に口に押し込んでいる。
「なんだよ、だったら話をするようなこと、ぜんぜんないじゃないか。いっとくけど、それでも焼き肉はそっちのおごりだからな」
ネットカフェ生活が長引くと、金にはうるさくなるようだ。
「わかってるよ。やっぱりそいつらも自分と似てる感じがしたのか」
永田の箸がとまった。ウーロン茶を半分ほど一気にのむ。
「考えてもみなかったが、そうかもしれない。いや、確かに俺たちみたいな負け犬の感じはあったな。着てるものにブランド品はなかったし、安物ばかりだった気がする。あと靴だな。三百円均一の店で見たことがある中国製のパチものだ。」
サトシの証言と同じだった。フリーターがフリーターを襲うのは、どういう理由があるんだろうか。まるでおれにはわからない。黙っていたモエが口を開いた。
「柴山さん、永田さん、それにあとのふたりとも、共通する点があります。」
永田がタン塩をやけにうまそうにくうので、おれも一枚ほしくなった。箸をとって、モエにきいてみる。
「おれもおごってもらっていいかな。その共通点て、なんだよ」
返事を待たずに紙のように薄いタンをつまんだ。たっぷりとコショウがきいて実にうまい。ビールが欲しくなるが自重。
「しかたなく、おれは巣鴨にもどってきた。あそこは池袋ほど警官の職務質問もやかましくないし、安くて時間をつぶせる店がたくさんある。昼すぎに駅をでて、地蔵通りにむかう路地の途中で、ガツンだ。いきなりうしろからやられた」
サトシのときとよく似ていた。問答無用で襲撃されるということは、自分たちが狙う相手が誰なのかはっきりしているのだろう。おれはつい警察官がするような質問をした。
「金はとられてないのか。あと、最近誰かにうらまれていることは?」
永田は届けられたハラミとタンを焼き網いっぱいに広げ始めた。
「俺、いつかこうやって腹一杯焼き肉をくうのが夢だったんだ」
サトシは脚を伸ばして眠る夢、永田の一皿四百五十円の焼き肉を腹一杯食べる夢。若者の夢は年々ダウンサイズしている。皮肉なものだ。薄切りのタンをトングでひっくり返しながら、永田はいった。
「うらまれることなんてないし、金もとられてないよ。財布をやられてたら、こうして焼肉をくうような食欲もなかったと思う。俺の全財産がはいってるからな」
永田は半分生のタン塩をうまそうに口に運んだ。
「襲ってきたのは、三人組だよな」
フリーターは驚いた顔をした。
「そうだ。そのうちのひとりがしつこくわき腹を蹴ってきた。」
おれはサトシにきいた男たちの格好を思い出した。
「えーっと、目だし帽がふたりに、ヘルメットがひとりだっけ」
永田はハラミとタンを交互に口に押し込んでいる。
「なんだよ、だったら話をするようなこと、ぜんぜんないじゃないか。いっとくけど、それでも焼き肉はそっちのおごりだからな」
ネットカフェ生活が長引くと、金にはうるさくなるようだ。
「わかってるよ。やっぱりそいつらも自分と似てる感じがしたのか」
永田の箸がとまった。ウーロン茶を半分ほど一気にのむ。
「考えてもみなかったが、そうかもしれない。いや、確かに俺たちみたいな負け犬の感じはあったな。着てるものにブランド品はなかったし、安物ばかりだった気がする。あと靴だな。三百円均一の店で見たことがある中国製のパチものだ。」
サトシの証言と同じだった。フリーターがフリーターを襲うのは、どういう理由があるんだろうか。まるでおれにはわからない。黙っていたモエが口を開いた。
「柴山さん、永田さん、それにあとのふたりとも、共通する点があります。」
永田がタン塩をやけにうまそうにくうので、おれも一枚ほしくなった。箸をとって、モエにきいてみる。
「おれもおごってもらっていいかな。その共通点て、なんだよ」
返事を待たずに紙のように薄いタンをつまんだ。たっぷりとコショウがきいて実にうまい。ビールが欲しくなるが自重。