ー特別編ー非正規ワーカーズ
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ふっくらとした唇をかんで、モエは近づいてくる灰色の建物を見つめていた。
皮肉なことに施設の名は「きぼうの家」だった。
「それで、あんたはおれになにをしてほしいんだ」
駐車場にJEEPをいれた。すこしななめになったがかまうことない。
「柴山さんを守ってほしい。できるなら、ほかの訴訟団のメンバーもだけど。それで、さらに望みをいうなら、ベターデイズが陰でなにをしているのか、調べあげてもらいたい。でも、そんなことができるのは、スーパーマンだけね」
おれは思い切りハンドブレーキを引いた。ワイヤーが悲鳴をあげる。
「そうかもな。でも、池袋の学生をなめないほうがいいよ。空はとべないが、あんたたちといっしょに地面を転げまわることはできるんだからな」
モエはちらりと横目におれをみた。にっこりと微笑んでやった。
「元気そうでよかったな」
おれはベッドに横になったサトシに団子が入ったパックを投げてやった。
見舞い代わりに、店先からくすねてきたものだ(まぁ、作ったのはおれだけど)。部屋は六畳ばかりの広さのこぎれいな板張り。ベッドと机と小型のテレビが置いてある。コインロッカーではなく、ほんもののクローゼットもあった。
サトシの顔色は芸術劇場のカフェのときより、ずっとまし。土色だった顔は、すくなくとも生物のあたたかさをもっている。
「悠さん、どうしてここがわかったの」
サトシはベッドに横になったまま、おれからモエへ視線を動かした。
「うちの代表か」
おれは机のまえにあった木製のしゃれた椅子に腰かけた。なんだか良いとこの学校にでもあるみたいなやつ。モエはメイド服で、ベッドの足元にひざを揃えて座った。ほんもののメイドみたいだ。組合の代表がいった。
「柴山さんから、小鳥遊さんの話を聞いたときには、ライターでマスコミ関係の人だから、そちらの方面から助けてもらおうと思っていたの。でも、しりあいから評判を聞くと、ライターとしてよりもぜんぜんトラブルシューターとしてのほうが有名で、それで今回の襲撃事件を調べてもらおうと思って」
ちょっとがっかりした。いくら書いても、なかなか文運隆盛とはいかないものだ。日暮れて道遠し。
おれは気を取り直して、サトシに質問した。
「おまえが襲われたのは、どこだったんだ」
サトシは毛布のしたの右ひざに目をやった。
「池袋二丁目の路地だった。もうすぐ十時で、ネカフェのナイトパックが始まる時間だったんだ。その日は仕事がきつくて、シャワーつきのところに急いでいた。汗を流しておかないと、つぎの日の仕事で困ることがあるから。設備のいい人気の店はすぐにいっぱいになるんだ」
おれが育った街にそんな顔があったなんて、想像もできない。ナイトパック競争。
皮肉なことに施設の名は「きぼうの家」だった。
「それで、あんたはおれになにをしてほしいんだ」
駐車場にJEEPをいれた。すこしななめになったがかまうことない。
「柴山さんを守ってほしい。できるなら、ほかの訴訟団のメンバーもだけど。それで、さらに望みをいうなら、ベターデイズが陰でなにをしているのか、調べあげてもらいたい。でも、そんなことができるのは、スーパーマンだけね」
おれは思い切りハンドブレーキを引いた。ワイヤーが悲鳴をあげる。
「そうかもな。でも、池袋の学生をなめないほうがいいよ。空はとべないが、あんたたちといっしょに地面を転げまわることはできるんだからな」
モエはちらりと横目におれをみた。にっこりと微笑んでやった。
「元気そうでよかったな」
おれはベッドに横になったサトシに団子が入ったパックを投げてやった。
見舞い代わりに、店先からくすねてきたものだ(まぁ、作ったのはおれだけど)。部屋は六畳ばかりの広さのこぎれいな板張り。ベッドと机と小型のテレビが置いてある。コインロッカーではなく、ほんもののクローゼットもあった。
サトシの顔色は芸術劇場のカフェのときより、ずっとまし。土色だった顔は、すくなくとも生物のあたたかさをもっている。
「悠さん、どうしてここがわかったの」
サトシはベッドに横になったまま、おれからモエへ視線を動かした。
「うちの代表か」
おれは机のまえにあった木製のしゃれた椅子に腰かけた。なんだか良いとこの学校にでもあるみたいなやつ。モエはメイド服で、ベッドの足元にひざを揃えて座った。ほんもののメイドみたいだ。組合の代表がいった。
「柴山さんから、小鳥遊さんの話を聞いたときには、ライターでマスコミ関係の人だから、そちらの方面から助けてもらおうと思っていたの。でも、しりあいから評判を聞くと、ライターとしてよりもぜんぜんトラブルシューターとしてのほうが有名で、それで今回の襲撃事件を調べてもらおうと思って」
ちょっとがっかりした。いくら書いても、なかなか文運隆盛とはいかないものだ。日暮れて道遠し。
おれは気を取り直して、サトシに質問した。
「おまえが襲われたのは、どこだったんだ」
サトシは毛布のしたの右ひざに目をやった。
「池袋二丁目の路地だった。もうすぐ十時で、ネカフェのナイトパックが始まる時間だったんだ。その日は仕事がきつくて、シャワーつきのところに急いでいた。汗を流しておかないと、つぎの日の仕事で困ることがあるから。設備のいい人気の店はすぐにいっぱいになるんだ」
おれが育った街にそんな顔があったなんて、想像もできない。ナイトパック競争。