ー特別編ー非正規ワーカーズ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ああだいたいは間違いないけど」
女がうなずくとカチューシャのフリルが揺れた。
「わたしたちのユニオンでは、正規の依頼料金をお支払したいと考えています。誰にしても、不当に安い賃金で働くべきではないからです」
なるほどな。だったら、逆にうちの用心棒に給料(食費)値下の団体交渉でもしてもらおうか。
「わかったよ。そっちの頼みって、なんなんだ」
「柴山慧さんという非正規雇用の労働者がいます。あなたもご存知ですね」
いきなりサトシの名がでて、おれはびっくりしてしまった。
「ああ、しってる。一回コーヒーをおごっただけだけどな。あいつは元気にしてるか」
女の眉がかすかにひそめられた。不穏な空気。
「そのこたえの半分はイエスで、半分はノーです。」
どういう意味だろう。
「まだどこかのネットカフェで寝泊まりしてるのかな」
だいたいメイド服が似合う女なんてめったにいないのだが、モエはめずらしい成功例だった。ヴィクトリア朝のバカらしいパロディではなく、どこか清楚に見えるのだ。
「いいえ、わたしたちの仲間が手配して、今は区の福祉施設に宿泊しています」
「そうか、そいつはよかったな。じゃあ、あいつの夢はかなったんだ。そこなら脚を伸ばして眠れるんだろ」
新宿一丁目の歩道で、フレンチメイドスタイルの代表がいった。
「それはちょっとむずかしいでしょうね。今、柴山さんの右ひざはギプスで固定されていますから。あの状態では完全に脚を伸ばして眠るのは、無理だと思います」
おれは依頼を絶対に断るつもりだった。だが、つぎの瞬間には店の奥にいるはなちゃんにむかって叫んでいた。
「ちょっと話をきいてくる。店番変わってくれ」
豊島区の福祉施設は南大塚にあるという。
おれは駐車場からJEEPをだした。いい加減くたびれているけど、うちの店の売り上げではとても新車に買い換えるのは難しかった。
池袋大橋をわたり、春日通りを直進する。正月明けの池袋は、まだ半分眠っているようだった。車道はがらがら。となりのシートに座るモエにきいた。
「なぜ、サトシのひざが壊れたんだ。作業中の事故なのか?」
ユニオンの代表はじっと前方をみつめていた。
「今回は日雇い派遣の最中の事故ではないわ。労働災害ではないの。いや、違うかな。広い意味では労災なのかもしれない」
まわりくどいいいかただった。
「どういう意味なんだよ。おれにはさっぱりわかんない」
「柴山さんは倉庫のピッキング作業のアルバイトの帰り道に、何者かに襲われたの。痛めていたひざを狙われて、大怪我を負わされた」
おれの頭のなかで赤信号が灯った。労働運動はわからないが、そういうトラブルならお手のもの。
女がうなずくとカチューシャのフリルが揺れた。
「わたしたちのユニオンでは、正規の依頼料金をお支払したいと考えています。誰にしても、不当に安い賃金で働くべきではないからです」
なるほどな。だったら、逆にうちの用心棒に給料(食費)値下の団体交渉でもしてもらおうか。
「わかったよ。そっちの頼みって、なんなんだ」
「柴山慧さんという非正規雇用の労働者がいます。あなたもご存知ですね」
いきなりサトシの名がでて、おれはびっくりしてしまった。
「ああ、しってる。一回コーヒーをおごっただけだけどな。あいつは元気にしてるか」
女の眉がかすかにひそめられた。不穏な空気。
「そのこたえの半分はイエスで、半分はノーです。」
どういう意味だろう。
「まだどこかのネットカフェで寝泊まりしてるのかな」
だいたいメイド服が似合う女なんてめったにいないのだが、モエはめずらしい成功例だった。ヴィクトリア朝のバカらしいパロディではなく、どこか清楚に見えるのだ。
「いいえ、わたしたちの仲間が手配して、今は区の福祉施設に宿泊しています」
「そうか、そいつはよかったな。じゃあ、あいつの夢はかなったんだ。そこなら脚を伸ばして眠れるんだろ」
新宿一丁目の歩道で、フレンチメイドスタイルの代表がいった。
「それはちょっとむずかしいでしょうね。今、柴山さんの右ひざはギプスで固定されていますから。あの状態では完全に脚を伸ばして眠るのは、無理だと思います」
おれは依頼を絶対に断るつもりだった。だが、つぎの瞬間には店の奥にいるはなちゃんにむかって叫んでいた。
「ちょっと話をきいてくる。店番変わってくれ」
豊島区の福祉施設は南大塚にあるという。
おれは駐車場からJEEPをだした。いい加減くたびれているけど、うちの店の売り上げではとても新車に買い換えるのは難しかった。
池袋大橋をわたり、春日通りを直進する。正月明けの池袋は、まだ半分眠っているようだった。車道はがらがら。となりのシートに座るモエにきいた。
「なぜ、サトシのひざが壊れたんだ。作業中の事故なのか?」
ユニオンの代表はじっと前方をみつめていた。
「今回は日雇い派遣の最中の事故ではないわ。労働災害ではないの。いや、違うかな。広い意味では労災なのかもしれない」
まわりくどいいいかただった。
「どういう意味なんだよ。おれにはさっぱりわかんない」
「柴山さんは倉庫のピッキング作業のアルバイトの帰り道に、何者かに襲われたの。痛めていたひざを狙われて、大怪我を負わされた」
おれの頭のなかで赤信号が灯った。労働運動はわからないが、そういうトラブルならお手のもの。